
この記事をまとめると
■雨のサーキット走行会は事故のリスクこそ高まるが練習にはもってこいだ
■雨天時にサーキットを走ろうと思ったら晴天時よりも事前の準備はしっかりやっておきたい
■雨の滑りやすい路面はコントロール能力を磨くいいチャンスとして使える
雨天時のスポーツ走行のススメ
梅雨は明けたといっても、日本は雨が多い国。日本全国の平均年間降水日数は約110日から120日なので、年間の3分の1は雨だと思っていい。
そうなると、サーキット走行会に申し込んでいた日でも、3回に1度は雨に当たることになる。雨が降ると出かけるのがおっくうになるし、道路は渋滞するし、サーキットでも荷物の置き場に困るし、路面が滑ってブレーキングは難しくなるし、アンダーステア、オーバーステアが出やすくなるし、なによりスピンやクラッシュのリスクも高くなる。
「せっかく来たけど、雨なら走行をキャンセルしようかな」と思うかもしれないが、むかしから「雨の日が好きな奴ほど運転が上手くなる」といわれているとおり、雨の日の練習はスキルアップのチャンス。
コース上に川が流れて、ハイドロプレーニング現象が発生するほどの大雨ならば、走行をキャンセルしたほうが賢明だが、小雨程度なら練習したほうがお得。走行台数も減るし、タイヤの摩耗も少なくなるし、クーリング面でも楽になるからだ。
その代わり、晴天時よりも事前の準備はしっかりやること。
まずはタイヤの溝のチェック。本降りなら少なくとも5部山以上の残り溝は必要。空気圧は、高ければ高いほどハイドロプレーニングは起きにくくなるので、指定空気圧以下では走り出さないこと。
フロントガラスには撥水剤をコーティングして、内窓には曇り止めスプレーを。エアコンをONにしたまま走るのもひとつの手だ。ESCなどのスタビリティコントロールはカットしないで走り出すのが基本。
走行時間が来てもすぐにコースインせず、ほかのクルマが走っている様子を見て、どれぐらい滑りやすいのかを確認してから走り出すのがベスト。
滑りやすい路面は腕を磨くいいチャンス
慎重にコンディションを見極めてからピットを出て、タイヤが温まるまで2~3周はウォームアップのつもりで控えめなペースで走って、水たまりがどこにあるのかなど、コースをチェック。ラインどりもドライのときのレコードラインは無視して、水気の少ないところを選んで走るのが大事。カントのついたコーナーのイン側には、水たまりでできていることが多いし、縁石の上も滑りやすいのでできるだけ乗らないようにしたい(乗っていい縁石と乗ってはいけない縁石があるが、基本的には乗らないほうがベター)。
あとはライトオンで被視認性を高め、前後の車間距離もたっぷりとって、無理せず自分のペースで走り続けることが肝心。
ドライビングは基本に忠実に、各操作をゆっくり確実に行うこと。ブレーキとステアリングのオーバーラップは最少にして、ターンインの際は旋回制動気味にならないように気をつける。速度が低いぶん、大きな舵角を入れることが可能な場面もあるので、舵角不足による手アンダーになっていないか探りながら走ってみよう。
アクセルオンにも丁寧さが必要だ。走っていて、ABSの利きが早いなと思ったり、スタビリティ制御の介入が早い(多い)と思ったら、自分の主観と実際のタイヤのグリップ力にギャップがあると思って気をつけよう。
このへんがグリップの限界かな、と思ったときに、ABSやESCが働くのはOKだが、「あれ、もう利き出すの?」と思うようでは、タイヤのグリップ力を過信しすぎ。期待値が高すぎるので、下方修正しておかないと、どんどんリスクが高まることになるので要注意。
また、タイヤによっては、ドライとウエットでのグリップ差が非常に大きいものもあるので、「雨だと、やけに滑る」と感じたら、数周走って早目に撤収するのが得策だ。
そして、万が一スピンをしたら、とにかくクルマが完全停止するまで、ブレーキペダルを床まで全力で踏み続けること。カウンターステアで何とかしようなどとは思わずに、ひたすらフルブレーキで停止するのを待つ。止まりかけたところ(時速1~5km程度)でブレーキをゆるめてしまうのが一番危ない。
これだけ守っていれば、雨の滑りやすい路面は、コントロール能力を磨くいいチャンスとして使えるはず。
ただし、くれぐれも無理はしないこと。

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