『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが6月の連載を激論!
キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが6月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが6月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第494話 天空の小島の秘密!!の巻(6月2日更新分)
第495話 阿吽のコンビネーション!!の巻(6月16日更新分)
第496話 3代目を司(つかさど)る者として!!の巻(6月23日更新分)
第497話 紛れもない逸材であるために!!の巻(6月31日更新分)
あらすじ
世界同時五大刻(ごたいこく)決戦、レバノンバールベックネプチューンマンパピヨンマン戦がついに決着。一方、ザ・ワンに天空の離れ小島に連れてこられていたバッファローマン。さらに、キン肉マン&グレート組(マッスル・ブラザーズ)VSエクサベーターガストマン組(インダストリアルレボリューションズ)にも動きがあった。

●バッファローマンの修行の行方 

爪切男(以下、 第494話から、ついにバッファローマンが修行に突入しそうですね。

燃え殻(以下、  ザ・ワンが「バッファローマン、お前にも彼らと同じく、ここでこの私の特訓、ストロンゲスト・サーガを受けてもらう」。バッファローマンが「か...かつての将軍さまと同じ場所で、こ...このオレも!?」。

 前回の燃え殻さんの予想どおり、"将軍さま"という名前が出てきた。

 修行を終えたらどんなふうに強くなっているか、楽しみ。

 でも、そこで調和の神(ザ・ワン)は「ザ・マンにとってのゴールドマンシルバーマンが、どれほど大きな存在であるかはお前も想像がつくだろう。私にとってはお前こそがそういう立場であることを、常に忘れず、修行に励め」って言いながら、扇子でバッファローマンの胸を、血が出るほど刺すじゃないですか(本記事あらすじ用コマ参照)。

 (笑)。それ、僕も気になった。刺しすぎ。

 まあ、これからとんでもない修行が待っている、っていうことを匂わせてるのかな。

 でも、バッファローマンの出世の仕方ってすごいよね。出てきた時は悪魔超人悪魔騎士の下だったのが、今は唯一無二の存在になっている。

 キン肉マンが最初は地べたを這っているような超人だったのと一緒で、叩き上げでここまで這い上がった。だから、感情移入しやすいんだよな。ロビンマスクアシュラマンみたいなエリートではないから。

 そうだね。どのへんから扱いが変わっていったんだろう?

 有名なエピソードとしては、『ジャンプ』連載で、バッファローマンミートくんの身体をバラバラにした頃に、当時の担当編集者の......二代目の松井(栄元)さんという方が、「こいつ、実はけっこういいヤツなんじゃないのかなあ?」ってポロッとゆでたまご先生に言ったなんて逸話があるみたいだけれども。

悪魔将軍に襲われたキン肉マンを身を挺して守りに行く。とはいえ、悪魔将軍に寝返ったり、不安定な部分もみせた(JC15巻)
悪魔将軍に襲われたキン肉マンを身を挺して守りに行く。とはいえ、悪魔将軍に寝返ったり、不安定な部分もみせた(JC15巻)

 そうか。今、みんなが闘っている時にひとりだけ別行動で修行に入るなんて役回り、昔ならラーメンマンウォーズマンでしょ。「今はこのポジションがバッファローマンなんだ?」という。

 これからバッファローマン、どんな修行をするんだろう。

 それなんだけどさ、たとえばスニゲーターの特訓みたいに、厳しい練習を延々と続ける、とかじゃなくて、バッファローマン悪魔将軍がシングルマッチをやって、その闘い自体が修行になっている、っていうのはどう?

 ああ! それだと読んでいて楽しい。

 ここでそのシングルマッチが組まれたらいいな。道場マッチみたいなゴリゴリの闘いでもいいから。桜庭和志の道場の練習みたいな。

 そうだ、嶋田先生も柔術、やってますしね。

 悪魔将軍バッファローマンが極めっこをやってくれたら、連載2週分くらいもつよね。

 もうちょっと持つと思いますよ...。でも、漫画の中で誰かが修行して帰ってくると、その時の登場人物たちのピラミッドの配置、難しくなるんですよね。バッファローマンが修行して強くなり戻ってきた、じゃあロビンマスクより上になったのか? とか。

 ああ、そうか。

 だから、ゆでたまご先生はここに来てなお、物語の中のピラミッドの構造を変えようとしている、ということですよね。

 そうだよね。あと、前から僕、修行前後でコスチュームが変わってほしい、って言ってたじゃない? 修行後のコスチュームに、悪魔将軍テイストが入っているかもしれない。

 ああ、いいですね。でも修行後にいい試合をしちゃまずいですよね。瞬殺で相手をぶっ倒して勝たないと。

 勝ちます!

 それか、プロレスでよくある二連戦か。一戦目は瞬殺で勝って、「コイツじゃ相手にならなかった、次、来い」っていう。

 ああ、いいね。

 もしくは「3人まとめて来い!」とかね。

 そんなのアントニオ猪木以外やってないよ(笑)。でもここにきて、そういう圧倒的なポジションに、バッファローマンが選ばれている、というのがおもしろい。

嶋田先生、すごい華やかで複雑になった今のプロレスもちゃんと追っていながら、ご自身は柔術をやっているという状況だよね。広い振り幅の格闘技の知識を持っている中で、長州力とか佐々木健介みたいな、すごい直線的なファイトスタイルのバッファローマンを、フックアップしているのが不思議で。たとえばこの前のウォーズマン、負けちゃったけど......。

 柔術の技とか使ってましたよね。

 そう。コマンド・サンボ(*)的な闘い方もしていた。先生の今の格闘技の好みを託すことができる、がゆえのウォーズマン、というのはわかりやすかったけど。
旧ソ連の軍隊や警察の戦闘術(サンボ)に、より実践的な打撃や投げ技、絞め技、関節技を加え、相手を戦闘不能にすることを目的としたもの

 バッファローマン、修行によってファイトスタイルがガラッと変わる可能性もありますね。海外遠征から帰ってきたら、コスチュームも闘い方もド派手になっていた天山広吉みたいに。

 ああ、カナダで身につけたっていう(関節技の)アナコンダバイス、やってたね。

 まあ、ガラッと変わらなかったとしても、新技ひとつぐらいは増えるでしょうね。

 そうだろうね。バッファローマンスープレックス的な技とか、そんなに持ってないもんね。

 バッファローBOMBと、バッファロー雪岩落としだけですよね。ハリケーン・ミキサーみたいに体当たりするか、投げ飛ばすか、蹴るか、突き刺すか、ばっかりで。そのバッファローマンが、この修行で、どんな新技を身につけるのか。

 いや、これはもう、修行で悪魔将軍と闘って、地獄の断頭台を体得するのでは?

 ああ、なるほど!

 修行で悪魔将軍と闘ったことによって、悪魔将軍必殺技(フェイバリット)である地獄の断頭台を、バッファローマンが身につける。

 それだと、修行に行くキャラがなぜバッファローマンだったのか、その必然性がわかる。

 バッファローマンの地獄の断頭台、観たいよね。現実のプロレスでも、NOAHで清宮海斗が武藤敬司シャイニングウィザードを受け継いでるけど。

 あれはまだファンに浸透してないですけどね。

 だから本来、技を受け継ぐって難しいじゃない? それを『キン肉マン』の世界の中で、達成してほしい。

 地獄の断頭台は、確かに受け継がれるべき技だと思います。

 こんなふうに「技を受け継ぐ」っていう展開、これまでの『キン肉マン』にはなかったし。

 うん......この燃え殻さんの読み、当たってる気がするなあ(笑)。いい線突いてる気がする。

●『キン肉マンⅡ世』との交わり

 で、キン肉マンキン肉マングレート(マッスル・ブラザーズ)の試合が、このあとの中心になっていくね。

 なんだかんだ言いながら、キン肉マンは自分の試合になると活き活きしますね。

 でも、キン肉マン&グレート(マッスル・ブラザーズ)の相手のエクサベーターガストマンインダストリアルレボリューションズ)、時間超人たちの中でも、噛ませ犬感がすごいよね。

 今のところは、ですけどね。そもそも、どんな作品でも、片手がショベルになっているようなキャラは、たいてい負けるしなあ。

 そう! 『攻殻機動隊』にも、片手がハサミのヤツいたじゃない?(笑)。ひどい目に遭ってたもん。だからショベル扇風機は破壊されます!

 はははは。

 あと、第496話でキン肉マンが、グレートの投げ技を見て言ったじゃない? 「あれだけは先代グレートのコピーではない。おそらく彼本来の動きなのだろう。だが初見のはずのその動きが妙に私の心を打つのだ」と。

 それはやっぱり『キン肉マンII世』の流れを汲んでの発言でしょうね。

 そうだよね。嶋田先生のXを見ていると、時々『II世』について触れているじゃない? だから先生は、今の『キン肉マン』の中で、『II世』の決着もつけたい、と思っている気がして。あの時もっとこうしたかった、ああしたかったって思っていたことも、今のこの『キン肉マン』で昇華させたいんじゃないかな。

 確かに今の三代目キン肉マングレートをおもしろく読みたいなら、『II世』を読んでおいたほうがいいですね。未読の人は、今こそが『II世』を読むチャンス。

 そもそも時間超人も、初めて出てきたのは『II世』で、それが今の『キン肉マン』に続いているわけだし。

 ここで全部ケリをつけようとしている。

 だと思うな。個人的には、この"正伝"の中で『闘将!!拉麺男(たたかえラーメンマン)』の決着もつけてほしい。

 はははは!

 今ならできるはず!

燃え殻MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス
など多数の著作がある。最新著は『この味もまたいつか恋しくなる』(主婦と生活社。群像Webでは「湯布院紀行」の漫画連載もスタート。また、『GetNavi web』にてコラム「もの語りをはじめよう」を連載中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新著は、『愛がボロボロ』(中央公論社

取材・文/兵庫慎司  撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご集英社

3代目キン肉マングレートの活躍を語る場所はコチラ

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