
自らが所有するクルーザーで海に出て朝食、桟橋に併設されたカフェでの優雅な昼下がり……マリーナは、人生を豊かにする“非日常の舞台”でありながら、世界中の富裕層や機関投資家が注目する「投資対象」としても脚光を浴びています。いったいなぜなのか、米国やオーストラリアの一部沿岸部に“世界中の投資マネー”が集まる理由を見ていきましょう。Keyaki Capital株式会社代表取締役CEOの木村大樹氏が解説します。
米国:パンデミックによる需要急増と大手資本の参入
米国では、新型コロナウイルス禍で密を避けるレジャーとしてボート需要が急増し、マリーナ施設(※)へのニーズがかつてなく旺盛になりました。2020~2021年にかけて多くのマリーナが満杯状態となり、全米でマリーナの稼働率は記録的な高水準に達しました。
(※)マリーナ:ヨットや小型船を泊めておく、小さな港や水域(の施設)。
こうした追い風を受け、マリーナ業界には機関投資家や超富裕層の資金が流れ込んでいます。なかでも象徴的なのが、資産運用大手ブラックストーンによる動きです。
2025年2月、同社は米国大手のマリーナ運営会社Safe Harbor Marinasを約56.5億ドルで買収すると発表しました[1]。
[1] Blackstone Infrastructure to Acquire Safe Harbor Marinas – Blackstone Press Release(2025)
マリーナは、単なる資産価値だけでなく、精神的な豊かさをも育む特別な場所です。
たとえば、フロリダやカリフォルニアの沿岸部では、自宅の裏庭からそのまま桟橋へとつながり、ボートで出航すれば、都市の喧騒とは無縁の穏やかな時間が広がります。
クルーザーの上で朝食を楽しみ、マリーナに併設された高級レストランでランチを味わう。そんな、絵にかいたような豊かな日々が、富裕層たちの“日常”なのです。
そしていま、そのような豊かさの舞台となるマリーナが「アセット」という観点で注目されています。世界の機関投資家や超富裕層のポートフォリオに、静かに組み込まれ始めているのです。それはいったいなぜなのでしょうか。
マリーナがもつ「資産」としての優位性
マリーナ投資の機運の高まりは米国だけにとどまりません。南半球・オーストラリアのマリーナにも世界中の資金が流入しています。
オーストラリアは、10人に1人がボート免許を持つ「ボート大国」です。登録船舶数は約90万隻にのぼります。国民の約85%が海岸線から50km以内に住んでいるため、生活の一部として根づいているのです。こうした特徴は米国では見られず、オーストラリア特有のものといえるでしょう。
米国と同様、オーストラリアでもシドニー東部のローズベイやダブルベイなどでは、桟橋に並ぶ数億円級のクルーザーを背景に、マリーナ併設のカフェで談笑する姿が日常的に見られます。

一方、オーストラリアでは環境保護を重視した厳しい沿岸開発規制により、新規のマリーナ建設が極めて困難で、施設数が需要に対して決定的に不足しているという現状があります。この「供給制約」が、既存マリーナの希少価値と収益性をいっそう高める要因となっているというわけです。
実際、こうした構造的な供給不足により、現存するマリーナはいずれも非常に高い稼働率を維持し、需要超過の恩恵を享受しています。
このような背景から、マリーナは投資資産としての優位性を有しているといえるでしょう。
マリーナの収益源は、水上および陸上でのボート停泊料・メンテナンスや燃料販売、小売店の賃貸などの多様なサービスで構成されています。そのため、キャッシュフローが安定しやすいのが強みです。さらに、他の一般的な不動産に比べて利回りが高く、長期的な安定収益が期待できます。
また、環境規制などにより新規マリーナの建設が著しく制限されているため、多くの場合、既存施設の拡張が唯一の成長手段となります。
裏を返せば、こうした供給制約のもとでマリーナを保有し、施設を拡張・高度化することで、旺盛な需要を取り込みながら資産価値の一層の向上を実現できるポテンシャルを秘めているのです。
世界中の投資マネーが群がるマリーナの希少性
マリーナ投資が投資家を惹きつけている背景は、地域によって異なります。米国では旺盛な需要と機関投資家の参入が牽引し、オーストラリアでは厳格な環境規制による供給制約が市場の希少性を高めています。
共通するのは、マリーナが単なる不動産ではなく、人生に豊かさをもたらす特別な空間であり、「ラグジュアリー」と「収益性」が交差する希少なアセットだということです。
海外では超富裕層を中心に、すでにオーストラリアのマリーナへの投資機会に足を踏み入れています。そしていま、その門戸は日本の投資家にも開かれはじめているのです。世界の富裕層が魅了される「豊かな資産」に、あなたも一歩近づいてみてはいかがでしょうか。
木村 大樹
Keyaki Capital株式会社
代表取締役CEO

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