
夏になると「プール熱」(咽頭結膜熱)と呼ばれる感染症が流行します。プール熱は感染力が強いことで知られており、主に小さな子どもがかかりますが、SNS上では「息子と共にプール熱にかかった」「プール熱しんどい」「一家感染」という内容の声が上がっており、大人も感染する可能性があるため、注意が必要です。もし子どもがプール熱に感染した場合、家族はどのように対処すればよいのでしょうか。ことびあクリニック恵比寿院(東京都渋谷区)院長で小児科専門医の金井幸代さんに聞きました。
目が充血するのが特徴
Q.そもそも、プール熱とはどのような病気なのでしょうか。発症の原因や主な症状、かかりやすい人の特徴について、教えてください。
金井さん「プール熱は、アデノウイルスによって引き起こされる感染症で、夏期に流行しやすいのが特徴です。プール熱は俗称で、正式な病名は咽頭結膜熱です。かつては名前の通り、プールの水やタオルの共有で感染することが多かったため、プール熱と呼ばれていますが、実際にはせきやくしゃみ、手指を介した接触感染など、日常生活の中でも感染する可能性があります。
主な症状は、38度以上の高熱や喉の痛み、目やに、結膜炎(目の充血や違和感)で、いずれも3~5日程度続くことがあります。特に免疫力が低い子どもがかかりやすく、患者の半数以上は5歳以下の子どもです。
ただし、年齢に関係なく誰にでも感染の可能性があるため、大人も注意が必要です。症状が出た場合は、早めに医療機関を受診し、適切な対処を受けることが大切です」
Q.プール熱にかかった場合、どのような方法で治療を行うのでしょうか。専用の治療薬はあるのでしょうか。
金井さん「プール熱に関しては、インフルエンザのような特効薬はありません。原因となるアデノウイルスに有効な抗ウイルス薬は現在存在せず、治療は主に『対症療法』となります。症状に応じて解熱剤、喉の炎症を抑える薬、点眼薬などを使って、各症状を和らげることが中心となります。
発熱が続く場合は小まめな水分補給が重要で、食欲が落ちている場合は無理に食事を取らせるより、脱水を防ぐことを優先します。多くは自然に回復しますが、症状が重かったり、長引いたりする場合や乳幼児がぐったりしている場合は、医療機関での再検査が必要です。
また、目の症状が強い場合は、眼科での治療も必要になることがあります。家族や周囲への感染拡大を防ぐためにも、早期に診断を受けて適切なケアを行うことが大切です」
Q.子どもがプール熱にかかった場合、保育園や幼稚園、学校に通わせてはいけないのでしょうか。
金井さん「プール熱は、学校保健安全法上の第二種感染症です。かかった場合は登園停止や出席停止となります。つまり、症状がある間は保育園や幼稚園、学校に通うことはできません。具体的には、発熱や喉の痛み、目やにや目の充血などの主要な症状がすべてなくなった後、さらに2日間は自宅での安静が必要とされています。
回復のタイミングには個人差がありますが、通常は発症から5〜7日程度で登園や登校が再開可能になります。登園、登校時に『登園許可証』や『登校許可証』の提出が求められる場合があるため、事前に園や学校に確認しておくと安心です。症状が改善したかどうかは医師が総合的に判断するため、再診時に相談してください。本人の体調はもちろん、周囲への感染防止の観点からも、適切な時期の復帰を心掛けましょう」
Q.家族がプール熱にかかったらどのように対処すれば良いのでしょうか。大人や小学生以上の子どももプール熱にかかる可能性があるのでしょうか。
金井さん「先述のように、プール熱は5歳以下の子どもに多い病気ですが、大人や小学生以上の子どもでも感染する可能性は十分にあります。特に家庭内では、手すりやタオル、洗面所などを介した接触感染が起こりやすく、兄弟姉妹や保護者にうつることもあります。家族の1人が感染した場合は、まず手洗いやうがいの徹底が基本です。また、発症した人とはタオルや食器を別にし、目やにや鼻水を触った手で他の物に触れないよう注意してください。体調不良が見られた場合には無理をせず、早めに医療機関で診察を受けましょう。
大人の場合、症状が軽かったり風邪と間違えられたりすることもありますが、職場や周囲への感染拡大を防ぐため、必要に応じて休養を取ることが大切です。特に目の充血や発熱がある場合はプール熱の可能性があるため、接触を最小限にとどめ、家庭内でもできる範囲で隔離を行ってください」
Q.プール熱の感染を防ぐには、日頃からどのような対策が求められるのでしょうか。
金井さん「プール熱の感染を防ぐためには、日常生活の中での基本的な衛生管理が最も効果的です。アデノウイルスは飛沫(ひまつ)感染や接触感染、糞口(ふんこう)感染など複数の経路で感染します。アルコール消毒が効きにくいため、流水とせっけんによる手洗い、うがいを習慣化することが何より大切です。特にトイレ後や食事前、目をこすった後などはしっかり手を洗いましょう。
感染者が出た場合は、接触した場所の消毒や換気を徹底し、他の家族への感染拡大を防ぐようにしてください。ウイルスは環境に強く、特に目やにや便に多く含まれるため、家庭内の看病時にも十分な注意が必要です」
オトナンサー編集部

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