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 世界で一番大きな両生類といえば、中国の黄河や長江、珠江水系に棲む「チュウゴクオオサンショウウオ」だと言われている。

 近年まで、チュウゴクオオサンショウウオは1種しかいないと考えられていたが、実はなんと5種の隠蔽種(本来は別種だが、外見などから同種と判断されていた種)で構成されていたことが判明した。

 そのうちの一種、「スライゴオオサンショウウオ(学名:Andrias sligoi)」は、現在世界中でたった2匹しか生息していない。

 そしてその2匹ともが、なんと日本で飼育されていることがわかったのだ。

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純粋種が絶滅の危機にあるチュウゴクオオサンショウウオ

 チュウゴクオオサンショウウオは、現在でも中国で食用として流通していいて、滋養強壮や月経不順に効くとして人気だそうだ。

 だがこれまで「チュウゴクサンショウウオ」と一括りにされていたものが、実は5つの異なった種の総称だったことが判明した時点で、事態は複雑になってしまった。

 中国の養殖場では、おそらく異なる地域で捕獲されたチュウゴクオオサンショウウオを繁殖させてきたと思われる。

 そうやって繁殖させたオオサンショウウオを、業者が保護活動の一環のつもりで、「良かれと思って」川に放流していたらしい。

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 その結果、養殖場から放流された個体が野生で繁殖し、在来種の遺伝子を汚染する事態が発生している。

 たとえ同じ種だとしても、生息地が変われば遺伝的に異なるケースがある。

 中国のオオサンショウウオは、たとえ野生に生息している個体でも、人為的な遺伝子汚染のリスクにさらされているのだ。

 そんな中、スライゴオオサンショウウオも、遺伝子的に純粋な個体は失われた可能性が高いとされていた。

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日本で純粋なスライゴオオサンショウウオを発見

 ところが2024年になって、日本の水族館や動物園で飼育されていたチュウゴクオオサンショウウオが、実はスライゴオオサンショウウオだったことが判明したのだ。

 現在、世界で確認されている「遺伝的に純粋な」スライゴオオサンショウウオの生きた個体は2匹しかいない。その2匹ともが、日本で飼育されているという。

 実は戦前から戦後にかけて、日本でも在来のオオサンショウウオを食用とする地方があった。だが1952年に特別天然記念物に指定されると、捕獲して食べることができなくなった。

 そこで代わりに中国から数百匹のチュウゴクオオサンショウウオが食用として輸入された。そしてそのうちの何匹かは、逃げ出したり放流されたりして、日本の河川で在来種と交配を重ねることに。

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 そんな中、京都大学動物系統分類学の西川完途教授は、チュウゴクオオサンショウウオが日本固有のオオサンショウウオと交雑していることに気づき、研究を始めたのだという。

 その過程でオオサンショウウオたちの遺伝子を調査した結果、なんと東京・池袋のサンシャイン水族館[https://sunshinecity.jp/aquarium/]と、広島市の安佐動物公園[http://www.asazoo.jp/]で飼育されていた個体が、純粋なスライゴオオサンショウウオであることが判明したのだ。

 下の写真では「A」サンシャイン水族館で飼育されている個体で、Bが安佐動物公園で飼育されている個体。

 Cはかつて、岡山県の民家で飼われていた個体だが、この研究が発表される前に死亡してしまったそうだ。

image credit: Nature Scientific Reports, Kanto Nishikawa et al.[https://www.nature.com/articles/s41598-024-52907-6] CC BY 4.0[https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/]

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日本で進むチュウゴクオオサンショウウオとの交雑

 チュウゴクオオサンショウウオ特定外来生物に指定されているが、在来のオオサンショウウオと見た目で区別するのはほぼ不可能で、遺伝子で判定するしかないという。

 そのため現在もオオサンショウウオ遺伝子汚染は静かに進んでいると見られている。特に京都の鴨川水系に生息するオオサンショウウオは、9割以上がチュウゴクオオサンショウウオとの交配種になってしまっている。

 だがチュウゴクオオサンショウウオ自体も野生では絶滅に瀕しており、種の保存法の国際希少野生動植物種に指定されている。

 そのため外来種だからといって簡単に駆除するわけにもいかず、各自治体では取り扱いに苦慮しているようだ。

 そしてスライゴオオサンショウウオ以外にも、中国では野生下での目撃が途絶えてしまった種が、日本で発見されているそうだ。

 日本に輸入されたチュウゴクオオサンショウウオは、中国で養殖が始まる以前に採取された個体のため、遺伝的に純粋である可能性が高いという。

 だが今回「発見」されたスライゴオオサンショウウオは2匹とも雄であることが判明しており、これ以上の繁殖は難しい状態だと見られている。

 サンシャイン水族館のスライゴオオサンショウウオは、2025年11月24日まで特別展「真夜中のいきもの展」の中で展示されているという。

 サンシャイン水族館では、8月18日オオサンショウウオサイエンスセミナーを開催するほか、9月9日の「オオサンショウウオの日」には、解説付きの給餌などのイベントを予定してるそうなので、興味のある人は同水族館のHP[https://sunshinecity.jp/aquarium/event_performance/event/entry-33952.html]をチェックしておこう。

References: Discovery of ex situ individuals of Andrias sligoi, an extremely endangered species and one of the largest amphibians worldwide[https://www.nature.com/articles/s41598-024-52907-6]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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