
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回は(2025年7月19日~7月25日)、ITエンジニアの転職と年収増加の実態、外国籍ITエンジニアの採用に対する企業意識の変化、多数のSaaSをまとめて管理する「SaaS管理」製品市場の急拡大、5Gアクセスの浸透など世界全体のモバイルトレンド、“AIで守る”セキュリティの一方で懸念される“AIを守る”の今後、についてのデータを紹介します。
同社のITエンジニア向け転職サービス「転職ドラフト」の実績分析より。転職したITエンジニアの92.8%が年収増加を実現し、平均増加額は160万円。年代別(20代、30代、40代)の平均増加額では「20代」が166万円と最大。2020~2022年は30代が20代を上回っていたが「2023年を境に逆転した」という。企業のDX化が加速する一方、IT人材不足が続いており、最新技術への適応力やポテンシャルが高く評価される傾向にあるという。
⇒ 職種別の平均年収アップ額を見ると、「機械学習エンジニア」(185万円)が突出しています。2023年の順位は7位(131.5万円)でしたが、企業がAI戦略を進めるうえで中核を担う役割となり「価値が急騰している」と分析しています。
国内企業の採用担当者500名を対象に実施した「海外ITエンジニア活用に関する実態調査」より。外国籍ITエンジニアの採用について、58.8%が「必要」と回答。さらに大企業(従業員1000人以上)では73.7%が「必要」と答えた。「優秀な人材採用において国籍にとらわれずに採用すべき」との考えには63.0%が同意しており、これは2015年の調査比で9.1ポイントの増加。現在、IT人材を採用している/採用する予定のある325社のうち、63.4%は「すでに外国籍ITエンジニアを採用」しており、「採用検討中」(18.5%)と合わせて81.9%が採用に前向きという結果に。さらに、大企業層に絞ると66.2%が採用済みであり、合計で89.5%が前向きな姿勢を持つことが分かった。
⇒ 日本国内におけるIT人材不足の解決策として「外国籍のITエンジニア採用」が現実的な選択肢になっています。IT人材不足もすぐに解消される見込みがなく、今後はさらに注目が集まりそうです。
企業が利用する多数のSaaSを1つのシステムで統合管理する「SaaS管理」製品/サービス市場の調査。幅広い業務でSaaS利用が拡大する中で、「無駄なコストの発生」「セキュリティリスクの高まり」「管理の煩雑さ増大」といった課題が顕在化し、その対応策として急速にニーズが高まっているという。高いシェアを持つベンダーが市場の成長を牽引する一方で、新規参入のベンダーも増加傾向にあり、2024~2029年度の年平均成長率(CAGR)は27.8%と引き続き高い伸びを予想。2029年度には90億円規模に達する見込みだという。
⇒ あらゆる業務にSaaSが普及したことを裏付ける調査結果だと言えます。なお、無駄なコストを削減する機能としては「アカウント利用状況の把握」「アカウント発行/解除の一元化」「コスト分析」「契約管理」などが、またセキュリティリスクを抑制する機能としては「シャドーIT(未許可SaaS利用)の検出による情報漏洩リスクの低減」などがあります。
毎年2回発表されている「エリクソンモビリティレポート 2025年6月版」より。全世界の5G加入者数は、2025年末までに29億人を突破し、全モバイル契約の約3分の1に到達する見込み。5G契約はその後も伸び、2030年末には63億件と予想される。また、固定無線アクセス(FWA)サービスを提供する事業者のうち、速度ベースの料金オプションを提供するのは51%で、前年同期の40%から増加した。モバイルデータトラフィックは前年同期比19%増加したが、2024年末時点でそのトラフィックの35%を5Gネットワークが処理しており、2030年末にはこれが80%を超える予想。
⇒ 世界的な5Gの本格商用化フェーズ到来と言えます。FWA分野での速度ベース料金モデルの浸透は興味深い動きであり、従来の「つながる(接続性の重視)」から「品質で差別化する」サービスへのシフトが起きているのでしょう。5G FWAにより、ケーブルや光ファイバーサービス同様の多様な加入者パッケージの提供が可能となり、従来世代のFWAと比較して収益化機会が拡大するとのこと。
世界21か国のさまざまな業種/規模の企業を対象に、AI利用とセキュリティリスクについて聞いた。すでに81%の企業が「サイバーセキュリティ戦略の一環としてAIツールを利用」しており、「導入を積極的に検討中」も16%を占める。国別の割合ではパキスタン、スウェーデン、台湾がトップ3。セキュリティ対策の重要プロセス(IT資産管理、リスク優先順位付け、異常検知)で、52%の組織がAIを活用している。一方で、94%の企業が「今後3~5年のうちにAIがアタックサーフェスに悪影響を及ぼす」と懸念していることも分かった。「既存セキュリティ戦略の再考、再構築が必要」と答えた企業も半数を超えている。
⇒ 「AI導入を進めた結果、アタックサーフェスも拡大した」というのは、今後大いに起こりそうなシナリオです。5月に開催された同社主催のハッキングコンテストでも、AIフレームワークなどに多数の脆弱性が見つかったそうです。

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