
暮らしの中で、服装のマナーを気にするシーンはいくつかありますが、中でも迷いがちなのが「結婚式」です。いわゆる“お呼ばれ”をしたときの服装については、従来の考え方や風潮から変化がみられるものも少なからずありますが、中にはそうした変化も影響してか、賛否が分かれている服装もあるようです。
例えば、「ゲストが赤いドレスを着ること」や「黒いストッキングを着用すること」「オープントゥのパンプスを履くこと」などについて、「別に好きな色着ればよくない?」「ゲストが赤みたいな派手な色のドレス着ちゃダメでしょ」「黒ストッキングは不吉な感じがする」「靴なんて気にしたことなかった」など、さまざまな声があるようです。
そこで、結婚式に“お呼ばれ”した際の服装・身だしなみの中でも、特に賛否が分かれているものについて、ヒロコマナーグループ代表で、企業価値を高める人財育成コンサルティングをはじめ、皇室のマナー解説やNHK大河ドラマ「龍馬伝」、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、同シリーズ最新作「密漁海岸」のマナー指導などでも活躍するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに、「見解と正解」をお聞きしました。
赤いドレスは「問題ない」
Q.結婚式に“お呼ばれ”した際の服装・身だしなみに関して、考え方や風潮の変化などが影響し、賛否が分かれている現状についてどう思われますか。
西出さん「時代に応じて、お呼ばれ時の身だしなみに関して考え方や変化があり、賛否が分かれていることは、それだけ皆さんが、お呼ばれの席に対して真剣に考えていらっしゃる証と言え、素晴らしいことと思います」
Q.ネット上などで特に賛否が分かれている次の服装・身だしなみについて、マナー的観点からどう見ますか。
【ゲストが赤いドレスを着る】
マナーの観点から「問題ない」と言えます。赤いドレスが結婚式のゲストとしてふさわしくないという意見は、「花嫁よりも目立ってはいけない」という配慮からの理由です。それは大変素晴らしい気持ちですが、「赤いドレス自体がNG」という理由は特にありません。
ポイントは、同じ赤でも、さまざまな赤色があるという点です。明るい目立つ赤もあれば、トーンダウンされた赤もあります。赤を着たい場合は、「新婦よりも目立たないように」とする配慮から明るい朱色系の赤ではなく、ワインレッド系の落ち着いた赤を着用すると、気になる「目立つ」や「派手さ」は軽減されるのではないでしょうか。
【ゲストが黒いストッキングを着用する】
こちらは、控える方が無難と考えます。着用すること自体NGとは言いませんが、ドレスとのバランスを考えたとき、一般的には、黒いストッキングを着用する場合、ドレスも黒になる場合が多いと思われます。ドレスとストッキングが黒となれば、喪をイメージする人も少なくありません。
結婚式という場は、さまざまな年齢層の人が参列します。自身がどのような立場で参列しているのかを考えたときに、お招きくださった方のことにも思いを寄せ、配慮するならば、控えるという選択はあっていいと考えます。
【ゲストが、つま先の開いた「オープントゥ」タイプのパンプスを履く】
こちらも、可能であれば控える方がよいといえます。理由は先述のお話と同様に、結婚式、結婚披露宴には、さまざまな年齢層の方が参列することが多いからです。
元来、オープントゥがNGといわれている理由は、靴の格の観点からです。結婚式の服装は、礼装で参列するのが一般的なマナーといわれています。その場合、靴もその礼装に合わせた靴を履くのがマナーとされます。服装が礼装であれば、靴も格上の、つま先もかかとも覆われたパンプスがマッチするといえます。オープントゥやサンダル、ミュールなどは、靴の格からすると、段階的にカジュアルとなるからです。
問題ないでしょう。チャンキーヒールは、通常よりも太さのあるヒールですから、安定感があります。結婚披露宴でよく見かける光景は、普段履き慣れないヒールを履くことで、猫背になり歩きにくい状態になっている人が多いことです。その点、チャンキーヒールであれば、安定しているので、歩きやすさもプラスされます。
チャンキーヒールはカジュアルな服装にも合わせることもできるため、カジュアルな印象を持つ人もいらっしゃるかもしれませんが、結婚式でこれを履くことがマナー違反などの印象になることはないでしょう。
時代を問わず「絶対に忘れてはいけないこと」は…
Q.結婚式にお呼ばれした際、服装や身だしなみに悩むことも少なくありません。ゲストとして、何よりも意識した方がよいことは何でしょうか。
西出さん「時代を問わず絶対に忘れてはいけないことは、何よりも、新郎新婦に対するお祝いの気持ちです。その気持ちを服装や身だしなみで表現します。
今まで『NG』と言われてきた内容も、現代ではあまり気にしなくてもよいという風潮もあります。例えば、コサージュやポケットチーフをワンポイントにしたスーツに、おしゃれな高額のスニーカーという組み合わせもありますね。
本来のマナーの観点から言えば、『これはNG、これは失礼』などと決めつけることではなく、大切なことは、『今までは何がNGと言われていたのか、その理由は何か』を知った上で、現代というこの時代において、自分はどういう選択をし、どのような服装、身だしなみにするかを決めることだと思います。それが分からないから悩むということであれば、今までNGと言われてきた服装は控えることが楽ともいえますね。
一般的には、新婦の色と言われる『白』や、殺生をイメージさせる柄や素材などは控えると、悩まずに安心です。黒いドレスは、アクセサリーで華やかさを出し、ストッキングを黒にしなければ、私はアリと考えます。また、『新郎新婦が気にしなければ、基本的には何でもOK』と言いたくもなりますが、その親戚や会社の方など、直接存じ上げない人も参列なさっている可能性がありますから、そういう方々への配慮を考えることがマナーの心として大切なことだといえますね。
お祝いの席ですから、皆さんが心地よく新郎新婦を祝う環境をつくるにも、身だしなみは自分の目線よりも、『相手からどう見られるか』という視点が大切な要素になります」
オトナンサー編集部

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