
この記事をまとめると
■海外ではキャブオーバーバンや小型トラックのBEV化が積極的に進められている
■日系トラックメーカーもトラックやキャブオーバーのEVをリリースしている
■バスやタクシーや宅配向け商用車がBEVとなると街なかはかなり静かになる
海外では商用車のEV化が積極的に進められている
諸外国を仕事でフラフラしていると、先進国よりも新興国のほうが、路線バスやタクシー車両、そして物流におけるラストワンマイル(最終届け先への荷物の配送)とも呼ばれる配送で使う車両、つまり日本でライトバンなどのキャブオーバーバンや小型トラックのBEV(バッテリー電気自動車))化がより積極的に進められているように見える。
新興国がBEV導入に熱心なのは、原油輸入量の抑制や気候変動対策というよりも大気汚染対策といった、目の前に横たわっている問題を解決したいという気もちのほうが大きいようである。
日本では、路線バスや宅配車両ではBEVの導入が、試験的なものも含めて進められている。国内ではすでにHEV(ハイブリッド車)が普及しているが、単純なICE(内燃機関)であっても、日本メーカーのエンジンは高効率で環境性能や燃費性能が高いのだが、、そのなかBEVを導入するとき、その企業は脱炭素化といった地球環境負荷低減などを声高に叫び、そしてマスコミもその部分に注目しがちになってしまう。
しかし、導入コストこそかかるものの、世界情勢に翻弄されやすく高値安定傾向が続いている化石燃料から電気で走るBEVへ変換することは、燃料費負担の軽減、メンテナンスコストの大幅負担減につながるため、企業が導入する現実的なメリットは大きい。さらには、宅配の場合は住宅街にも頻繁に配送車両が入っていくことにもなるが、ディーゼル車も目立つ化石燃料の宅配車両の場合、「せっかく寝かしつけた子どもが目を覚まして困る」などの騒音問題があり、その解決という側面でも、いまBEV宅配車両の積極導入が進んでいるのである。
郵便局の赤い軽バンでは、都内ではBEVとなる軽規格バン「ミニキャブEV」をよく目にするが、筆者の住む東京隣接県ではまだまだICEの軽バンばかりとなっている。
そのなか、筆者の居住地域でも大手宅配業者が欧州系のBEVトラックを使っていたので、「とうとうこの辺りまで普及してきたか」と考えてしまった。
ほとんどの商用車がEVになれば街は静かになる
日系トラックメーカーでも、すでにICE宅配トラックとして活躍している、いすゞエルフや日野デュトロ、三菱キャンターにはBEV仕様がラインアップされ活躍している。とくにいすゞではエルフのなかでも、普通免許で運転できる「エルフミオ」にもBEVがラインアップされ、すでに配送業務で活躍している。
ただし、ハイエースクラス、もしくはそれ以下のライトバンとなると、日系メーカーでは前出のミニキャブEVぐらいしか存在せず、おもに中華系車両がすでに走り出している。
BEV普及の背景にICE車の騒音問題もあると前述したが、2025年4月に中国上海を訪れると、タクシーはかなりの割合でBEVとなり、小型商用車はほぼBEVとなり、路線バスもBEVもしくはPHEV(ほとんどモーター走行していた)となっていた。乗用車も確かに目に見えてBEVが多いが、思っていたよりはICE車も目立っていた。
すべての車両を電動化しなくても、バスやタクシー、そしてラストワンマイルとも呼べる宅配向け商用車がほとんどBEVとなると、街なかはかなり静かになることは間違いないと上海で強く感じた。
乗用車はともかくとして、はたらくクルマの電動化は世界的にもさらに進んで行くことは間違いなく、そこの部分では日本メーカーもかなり健闘しているように見えるが、ライトバンと呼ばれるクラスが手薄に見えるところが気になっている。街なかを走るプロボックスは意外なほどHEVが多い(導入時の価格差は導入後の燃料費節約で十分効果が得られると判断する企業が多いようだ)。モデルチェンジや改良が進みBEVとまでいかなくとも、HEVさえ増えれば外資商用BEVに対しては勝算があるのではないかとも考えている。

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