
東京都新宿区歌舞伎町の大久保公園周辺で、売春の客待ちをしたとして、20代の女性4人が7月22日、売春防止法違反の疑いで警視庁に逮捕された。
警視庁によると、4人は今年5月から6月にかけて、歌舞伎町の路上で、公衆の目に触れるような方法で売春目的の客待ちをした疑いが持たれている。
報道によると、4人は私服警察官の取締りを避けるため、外国人などを狙っていたという。いずれも容疑を認めており、「ホストで遊ぶ金を稼ぐためだった」などと供述したそうだ。
●「デジタルタトゥーのおそれ」も一方、4人が実名・顔写真付きで報じられたことをめぐって、SNSでは「やりすぎ」批判や疑問の声も上がっている。
歌舞伎町で女性支援の活動をしているNPO「レスキュー・ハブ」の坂本新さんは、弁護士ドットコムニュースの取材に「路上売春の根絶に向けた警察の本気度が理解できますが、反面、これがデジタルタトゥーとなり、本人たちの社会復帰が困難となることが懸念とはなります」と話す。
●売春そのものは「処罰対象」ではないそもそも売春は犯罪なのか。今回の逮捕の背景について冨本和男弁護士に聞いた。
──そもそも売春行為は犯罪にあたるのでしょうか?
売春行為自体は処罰の対象とはなっていません。売春とは「報酬を受け、または受ける約束で、不特定多数の相手方と性交すること」をいいます(売春防止法2条)。
売春防止法は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み、売春を助長する行為等を処罰することによって、売春の防止を図ることを目的とする法律です。
同法3条は「何人も、売春をし、またはその相手方となってはならない」と定め、売春行為を禁止していますが、違反した場合の罰則までは設けられていないのです。
──大久保公園周辺では、いわゆる「立ちんぼ」が問題になっていますが、どうして今回4人が摘発されたのでしょうか。報道では、「ホテルで金を盗まれた」とする外国人からの通報もあったようです。
売春防止法は、売春行為そのものに罰則はありませんが、それを助長する行為については処罰となります。
たとえば、売春をする目的で、次のような行為をした場合、6カ月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金が科される可能性があります(同法5条)。
(1)公衆の目に触れるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること
(2)売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、またはつきまとうこと
(3)公衆の目に触れるような方法で客待ちをし、または広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘因すること
今回の事件は、3号に該当すると警察が判断したため、逮捕に至ったのだと思われます。金銭を盗まれたという被害通報があったことも、捜査の端緒になった可能性があります。
──一部では「実名・顔出し報道はやりすぎではないか」という声もあります。
今後同じような事件を抑止するという観点から、啓発目的として必要とされたのではないかと考えます。
また、報道では、容疑者の1人が「外国人は警察でないから捕まらない」と供述したとのことです。摘発を避けるため外国人を狙い、繰り返し同様の行為をおこなっていたとされ「悪質性」が高いと判断されたのかもしれません。
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp

コメント