
50代を迎え、老後の生活や経済状況に漠然とした不安を感じていませんか? 「このままで大丈夫だろうか」と感じつつも、なにから手をつけていいかわからないという人も少なくありません。本稿では、横山光昭氏監修『いちからわかる!お金のきほん 2025年最新制度対応版』(インプレス)より、老後資金作りの具体策についてシミュレーション解説します。
一人暮らしをやめ、50代で実家へ戻った結果
家賃の負担が重く転職で収入を増やす
生涯独身を選択する場合、自分にかかる費用を中心に計画すればいいので、基本的には、家族がいる人の場合より必要なお金は少なくなります。ただし、収入も1人分で、自身の病気や親の介護などのリスクにも備えておく必要があります。
ここでは、46歳・会社員・年収400万円のケースを見ていきます。月10万円の賃貸マンションに暮らしているため、貯蓄が思うようにできていないDさん。
50歳で経理関連のキャリアを活かし、転職します。年収600万円と収入アップに成功したものの激務のため、一人暮らしを断念。郊外の実家に戻り、年金で暮らす母に家事を頼みつつ仕事をこなします。このように、賃貸で暮らしている場合、実家へ戻るという選択肢も、住宅費用の大幅削減になるので、戦略の1つといえます。
家賃がなくなったことで、NISAでの積立額を増額でき、生活費も母の年金と自分の収入を合わせた「2馬力」になるため、母子とも生活に余裕がでます。その結果、500万円だった資産は、60歳の定年時は退職金と合わせて総額は約5,500万円までの増額を実現できます。
67歳からの8年間を年間200万円旅行費に…85歳からは老人ホームへ
60歳定年後は、継続雇用で在宅勤務も併用しながら65歳まで、年収300万円で勤務します。
63歳時点で、母が急病で倒れ入院。退院後は、要介護2の在宅介護となります。介護は、ヘルパーやデイサービスを介護保険で利用し、できるだけ母の年金から賄える範囲で対応します。
65歳までは、NISAなどで運用を続けていたため、65歳時点の資産総額は、約6,700万円超まで増額します。
66歳のとき、母を見送った後は、これまで運用した資産を、元本割れのしない金融資産に預け替えます。65歳以降の収入は自身の公的年金のみで暮らすことになります。
65歳まで積み立てた資産で、世界中を回る旅を計画し、67歳から75歳になるまでは、年間200万円を世界旅行費に費やします。その後も、体が元気なうちは、国内なども含め旅行費に資産をあてます。
その結果、85歳時点の総資産額は、1,700万円に。85歳で自宅を売却して、入居金500万円の老人ホームへ入居します。毎月30万円の施設費を支払って、生涯施設で暮らします。
Dさんのケースのように、50歳前半で、これまでの生活を続けるのではなく、転職や実家へ戻るなどの選択をしたことで、親の介護をしながら働き続けることができ、リタイア後は、自分の夢を実現できました。ただし、65歳以降は、収支はずっとマイナスが続くので、90、100歳まで長生きするリスクに備えて、全額を普通預金に預け替えるのではなく、一部はそのままNISAなどで運用を続けるのも一考です。
50代で貯蓄がほぼない夫婦
住宅ローンや教育費の負担で、手元に資産がないケースは意外と多い
50代・会社員のケースです。この年代は、定年が目前となるので老後の資産形成を中心に考える必要があります。しかし、住宅ローンや教育費の負担で、手元に資産がないケースが多い時期でもあります。Eさん家族のケースで見ていきましょう。

Eさんは、年収600万円の55歳。妻がパートで年収100万円の収入があるので、世帯年収は700万円と平均収入より高め。しかし、貯蓄をする意識が高くなく、子どもの成長とともにやっと意識が芽生え始め資産運用に出遅れています。住宅購入も40歳に3,600万円のローンを30年で組んでいて、返済は70歳まで続きます。
子どもが中学から私立へ進学したため中学・高校の学費が高め。また、中学や大学受験時の塾代にもお金をかけ、教育費がかさんだ結果、子どもが大学を卒業した夫55歳時点での資産合計は200万円まで減ってしまっています。
子どもが就職し、家を出て独立したため、56歳から本格的に老後資金づくりをスタートさせます。夫婦2人の協力が必要なため、妻も56歳からパート勤務を増やし、年収200万円まで収入を上げます。
老後資金の不足は定年後も働き続けることで解決
妻が収入を増やし、子どもが独立し、生活費も減少したことで、運用できる資金も増えます。NISAなどで運用したことから、59歳時点では、約760万円に増額。
60歳の定年時に1,500万円の退職金が入ったので、約1,980万円まで増えます。ただし、ここで、住宅ローンの繰り上げ返済をしてしまうと、手持ち資金がなくなってしまうため、ローンは70歳までコツコツ返済することを選択。
また、なるべく長く夫婦両輪で働き続けるようにして収入の安定を図ります。夫は、雇用継続で65歳まで働き年収300万円を確保。
65歳以降は、年金を受け取りながら月10万円のアルバイトを70歳まで続けます。妻も同様に、年収200万円のパートを65歳まで続けます。65歳以降は、年金を受け取りながら、パート勤務時間を減らし月5万円程度の収入を確保します。また、65歳までは、継続してNISAなどで資産の積み立て運用を続けます。
Eさんのように、定年前に老後資金の確保に不安があり、住宅ローンも残っている場合は、70歳まで長く働いて、安定的な収入を持続させるのが賢明です。Eさんは、70歳まで夫婦両輪で働いたことにより、70歳まで住宅ローンが続いても収支を黒字に保つことができ、69歳時点の総資産合計は、約2,100万円まで増額。
その後は、75歳での住宅リフォーム費用以外は大きな出費をしないように工夫をし、85歳で夫死亡時にも、資産を残すことに成功。50代からでも老後資産作りを成功させることができました。

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