
この記事をまとめると
■シアターレイアウトや水平対向エンジンがもたらす低重心による走行性能が魅力
■後継として「クロスオーバー7」が登場したが2018年に販売終了となった
数少ないスバルのミニバン
スバルといえば、新型フォレスターをはじめ、レイバック、クロストレックといったクロスオーバーSUVモデルがメイン車種になっているが、かつて3列シート7人乗り・リヤヒンジ式ドアの乗用ミニバンを製造していたことを覚えているだろうか。
その1台が、2007年の東京モーターショーで「エクシーガ・コンセプト」としてお披露目され、2008年に登場、販売を開始した、「7シーターパノラマツーリング」をコンセプトにしたエクシーガ。2004年にオペル・ザフィーラのOEM車となるミニバンのトラヴィックが終売して以来、約4年ぶりのスバルの多人数乗用車であった。また、2015年にはその後継車として、そのクロスオーバー色を強めたエクシーガ・クロスオーバー7が登場した。
プラットフォームは、当時のレガシィのSIシャシーを用いるため、多くの部分をレガシィと共用。すなわち7シーターミニバンにして、スポーティ性能もぬかりなしのツーリングワゴン寄りのキャラクターということになる。ファミリー向けに開発されたとはいえ、実際に第29回日本カー・オブ・ザ・イヤー2008-2009で「MOST FUN」賞を受賞したほど走りが楽しいミニバンだったのである。その象徴といえるのが特別仕様のSTIチューニングモデルの2.0GT tuned by STIで、300台限定でラインアップされていた。
エクステリアデザインは、前から見ると「レガシィ?」と思ってしまいそうなもの。ボディサイズは、全長4740×全幅1775×全高1660mm。ホイールベースは2750mm。駆動方式は2WDとターボモデルのみ4WDが用意されていた。
水平対向4気筒のパワーユニットはEJ20型の2リッターNAとターボ、さらに2.5リッターのEJ25型などを揃え、ミッションは4速AT、リニアトロニックCVT、ターボ用には5速ATが組み合わされた。
当時、スバル純正のペットアクセサリーが充実していたこともあって、筆者は何度となくエクシーガに乗り、愛犬を連れて那須高原までのロングドライブをした経験もあるが、パッケージ面で優れていたのが、シアターレイアウトによって、1-2列、2-3列へとフロア、シート位置が高くなり、3列目席でも前方見通し性は良好。リヤヒンジ式ドアからの乗降性はともかく、3列目席でも窮屈感はほぼなかったと記憶している。
具体的なシートレイアウトは、1列目に対して2列目は70mmも高く、2列目に対して3列目もまた70mm高い設定なのである。多くのミニバンがそれぞれ40~50mm高のシアターレイアウトだから、いかに眺めがいいか、前方見通し性がいいかがわかるというものだ。
2018年のクロスオーバー7生産終了まで進化を続けた
ここで2012年7月に改良された2.5リッターモデル(4速AT→CVT、アイサイト装備)に試乗したときの試乗メモを引っ張り出してみよう。
姿勢が低めな運転席に着座すると、レガシィツーリングワゴンやインプレッサと変わらない運転感覚が得られ、走りはじめても水平対向エンジンの恩恵ある低重心感覚が身の上。2.5リッター水平対向エンジンは出足から濃厚なトルクを発揮し、その回転上昇感、スムースさが素晴らしいのひとこと。
CVTの効果で巡行時のエンジン回転数はごく低く抑えられ(100km/h=1750回転)クルージングはごく静か。フロントストラット、リヤダブルウイッシュボーンのサスペンションの採用によってはしなやかで姿勢変化の少ない、それこそワゴン感覚そのものの重厚かつ滑らかな乗り心地と大人っぽい上質なドライビングフィールが味わえる。
じつは、前席のヒップポイント地上高とアイポイントは、あの低全高が売りのオデッセイより低いのだ。それでいて、視界に関してはミニバンらしい爽快感があるのが、パッケージングの妙だといえる。
実用性もなかなかで、3列目席を格納すれば、シアターレイアウトゆえやや角度はつくものの、レガシィツーリングワゴンのようなワゴンライクなラゲッジルーム空間、使い勝手が可能。まさにグランドツアラーとしての資質に満ちている。
2リッターモデルについては、2009年9月にミッションが4速ATからCVTに変更されて以降、NAモデルの走行性能が一段とスムースかつ静かな質感の高い走りを披露。動力性能は必要十分以上で、しなやかな乗り心地が好印象だ。
一方、ガソリンがハイオク仕様となるターボモデルともなれば、まるでインプレッサのS-GTを走らせているようなスポーティテイストが味わえる。
STIモデルも登場しているが、お薦めは75%減税&CVTの2.0i-S(当時の価格283.5万円)。2009年からは「ぶつからないミニバン?」というキャッチフレーズで、アイサイトver.2の装着車も用意されることになってロングツーリングの安心感はさらに高まった。
と、大絶賛している筆者であった。
2015年には2013年の東京モーターショーに参考出品された「クロスオーバー7コンセプト」の市販車、ミニバンからクロスオーバーモデルに変身したエクシーガのビッグマイチェンモデルといえるクロスオーバー7の市販車を発売。中身はエクシーガそのものだが、最低地上高を170mmまで高め、クロスオーバーモデルらしい全幅1800mmのエクステリアを備えることになったのだ。
2018年3月の販売終了の1年前の2017年3月には最後の一部改良が行われ、同時に特別仕様車のX-BREAKが発表されている。
エクシーガそのものの後継モデルは存在しないが、スバルのクロスオーバーモデルとしてアウトバックにそのキャラクターが受け継がれることになった。

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