マセラティがミッレミリアで示した“革新と伝統”!1950年代の「A6 GCS/53」も完走

伝統と革新が交差した舞台

2025年6月21日イタリアを舞台に開催された伝統のクラシックカーレース「1000ミリア(1000=ミッレ:以下ミッレミリア)」がフィナーレを迎えました。マセラティはこの特別な舞台で、過去の名車と現代のモデルを並走させました。トライデントロゴ誕生100周年を祝う記念企画でもあり、ブランドの技術と情熱をあらためて世界に示す貴重な5日間となりました。

1950年代の名車「A6 GCS/53」が完走

2025年のミッレミリアは、6月17日に北イタリアのブレシアを出発し、5日間をかけてローマ経由で再び同地へ戻る約1900kmのルートで実施された。マセラティの出走車両のなかでも、とりわけ注目を集めたのが「A6 GCS/53」である。

このモデルは、1953年から1957年までに5度、実際にミッレミリア・スピードレースに出場。1953年大会では、エミリオ・ジレッティのドライブによりスポーツ2Lクラスで優勝し、総合6位という快挙を成し遂げた歴史を持つ。

今回のレースでは、標高差の激しいラティコーザ峠やフータ峠、モンテ・ティターノなど、難関区間を含む過酷なコース設定だったが、「A6 GCS/53」は持ち前の高いシャシー剛性と優れたステアリング性能を活かして走破。70年以上前の名車が、総合49位という見事な成績でフィニッシュを果たした。

マセラティがミッレミリアに参加

A6 GCS/53に搭載されるエンジンは、名匠ジョアキーノ・コロンボの設計による2L直列6気筒ユニット。ショートストローレイアウトの“スーパークアドロ”型で、ギア駆動のDOHC、ツインイグニッションを採用するなど、1950年代としては非常に先進的な機構を誇る。

高回転型で信頼性にも優れるこのエンジンは、時代を越えても色褪せることがない設計思想の証左であり、今回の完走によってその実力が再確認された。

3台の特別仕様車がトライデント100周年を彩る

今回のミッレミリアには、クラシックモデルだけでなく、マセラティは3台の特別仕様の現行モデルも参加した。いずれもブランドロゴ「トライデント」の誕生100周年を記念したカスタムカラーをまとい、それぞれが異なる時代の伝説的マシンをオマージュしている。

■グレカーレ・トロフェオ

ボディにはローズゴールドを採用。1931年の「Tipo 26 C」にインスパイアされたデザインで、彫刻的に表現されたシンプルなトライデントロゴが印象的だ。この車両の元となるTipo 26 Cは、マセラティとして初めてミッレミリアに出場し、クラス優勝を果たした実績を持つ。

■グランカブリオ

緑翡翠をイメージした「ヴェルデ・ジャダ」のカラーリングで登場。1936年製の「Tipo 4CS」がモチーフで、鋭いラインを用いた現代的デザインと1930年代のエンジニアリングスピリットを融合させている。

■グラントゥーリズモ・トロフェオ

深みのある「ブルー・エモツィオーネ」を纏い、A6 GCS/53の美学を再現。1953年および1955年にクラス優勝、総合2位を記録した伝説をもとに、戦後の成熟したスタイルを現代に継承する。

マセラティがミッレミリアに参加

【AMWノミカタ】

ミッレミリアは、1927年から57年にかけて実施された往年の耐久ロードレースであり、現在も当時のモデルが参加条件とされる格式高いイベントである。近年は車両の年代条件が厳しくなり、実際に走れる個体そのものが少なくなっている。

それだけに、今回のマセラティによる出走は、ブランドの継続的な支援と、歴史に対する真摯な姿勢を物語る。A6 GCS/53の完走、さらにはグレカーレ、グランカブリオ、グラントゥーリズモの特別仕様車が果たした“伝統の継承”は、マセラティの核にある「情熱」「洗練」「パフォーマンス」、そして「イタリアのクラフトマンシップ」を、次の100年へと繋ぐメッセージに他ならない。

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マセラティA6 GCS/53