
東急の有料座席指定サービス「Qシート(Q SEAT)」が、新たに東横線の上り(渋谷行き)でも始まりました。どの程度利用されているのか、営業開始の2日目に実際に乗車してみました。
東急の「Qシート」とは?
東急電鉄が、2025年7月22日から東横線の上りで有料座席指定サービス「Qシート(Q SEAT)」の営業を開始しました。新たに設定された上りの渋谷行きがどのように利用されているのか、実際に乗車してみました。
Qシートは、東急の有料座席指定サービスです。料金を払うと着席できるサービスを平日の帰宅ラッシュ時間帯に提供しています。料金は500円です。2018年12月に大井町線の下り(大井町発)で始まり、2023年8月には東横線の下り(渋谷発)にもサービスが広まりました。
列車指定券はインターネットのほか、一部の東急線の駅改札窓口で販売されていますが、2024年12月17日から車内などでも購入できるようになりました。
Qシートは大井町線・東横線を走る一部の急行列車の、特定の車両に設定されています。大井町線は3号車、東横線は5号車です。東横線では当初、4・5号車の2両でしたが、2024年5月から5号車だけに減りました。
車両は、大井町線がオレンジ色、東横線が赤色で車体全体がラッピングされています。座席は、進行方向を向いたクロスシートと、車両の端に窓を背にしたロングシートがあります。クロスシートの座席は、乗客自身の手で向きを変えられます。このほか車内では、フリーWi-Fiや、一部の座席を除いて電源コンセントやカップホルダーを備えています。
クロスシートの座席は「ロング/クロス転換座席」と呼ばれ、ロングシートの状態とクロスシートの状態に切り替えて使用できます。Qシートのサービス時のみクロスシートに設定され、それ以外ではロングシートとして一般の列車と同じように使用されています。
慌ただしい折り返し作業の東横線上り「Qシート」
筆者(柴田東吾:鉄道趣味ライター)は、営業開始2日目(7月23日)の東横線上りQシートに乗車しました。上りのQシートは6本設定されていますが、乗車したのは3本目の元町・中華街19時21分発「192号」です。
この列車は渋谷18時35分発「183号」の折り返しとして設定されています。渋谷発下りのQシートは、横浜高速鉄道みなとみらい線の横浜→元町・中華街間がフリー乗降区間として設定され、列車指定券なし(無料)で利用できます。
Qシートの車両は片側4か所ある扉のうちの3か所を幕で仕切り、渋谷方の1か所のみで乗降する方式を採用していますが、フリー乗降区間では仕切りを外し、すべての扉で乗降できるようにしています。
このため元町・中華街での折り返しでは、座席の向きを変える作業のほか、乗降する扉を1か所とするために仕切りを設置する作業も行われています。元町・中華街や渋谷での折り返し時間は3~4分程度。作業が終わってすぐに発車となるため、慌ただしいのが実態です。
元町・中華街から「192号」に乗車した人は、筆者を入れて2人だけでした。
Qシート以外の一般車両は、元町・中華街を発車した時点では空席が目立っていますが、2つ先の馬車道で席が埋まり、さらに1駅先のみなとみらいでは立ち客で混雑するようになります。しかし、Qシートの車両はガラガラのまま。横浜からは3人が乗車してQシートの乗客は5人になりました。
この先、終点の渋谷までQシートの乗客は増えず、途中の自由が丘と学芸大学で1人ずつ降り、渋谷まで利用した乗客は3人だけでした。筆者を除くと、乗客はサラリーマンの身なりをした人ばかりで、渋谷発の下りQシートとともに、勤め帰りと思しき利用が目立っていました。
筆者が乗った上り「192号」は渋谷に到着した後、折り返しQシートを設定した下り「201号」になります。乗客が降りた後は座席の回転などが行われ、Qシート車両へ十数人の乗客を乗せて再び元町・中華街に向かって発車していきました。
夜のみなとみらい線・東横線は、上り渋谷方面に向かう列車でも混雑が目立ち、途中の横浜から着席できる機会は稀です。Qシートが設定されたことで、有料ながら横浜から着席する機会ができましたが、500円を払って多くの乗客に利用されるまでには時間がかかりそうです。

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