
7月20日に投開票がおこなわれた参議院選挙では、「日本人ファースト」を掲げた参政党が議席を大きく伸ばしました。一方で、その排外的ともいえる主張には批判の声も相次いでいます。
SNS上では、参政党の街頭演説に対し、日本国旗に「バツ印」をつけて抗議する様子が投稿され、注目を集めました。
こうした抗議活動の一環として、国旗に落書きをしたり傷をつけたりする行為は、法的に問題ないのでしょうか。猪野亨弁護士に聞きました。
●日の丸国旗にバツ「違法ではない」──抗議活動の一環として、日本国旗にバツ印をつけたり、破いたりするのは違法でしょうか。
参政党の候補者が演説する場で、日の丸を掲げる支持者に対するアンチテーゼとして使われたと考えられます。
日の丸にバツ印をつける行為は、抗議の意味を示すものであり、自身が所有する国旗に対してバツを記したり、焼いたりしても、それ自体が犯罪となることはありません。
これは、憲法21条が保障する「表現の自由」の一形態として認められているものです。
●外国の国旗は「損壊罪」に…──外国の国旗を傷つける行為はどうですか。
外国の国旗については、刑法92条の「外国国章損壊罪」により、毀損行為が処罰の対象となります。これは、国旗を損壊することで、外交関係が悪化するおそれがあるためです。
ただし、たとえばイスラエルによるガザへの軍事行動に抗議するため、イスラエル大使館前でイスラエル国旗を毀損した場合、ただちに処罰の対象とすることには疑問があります。
批判の手段として適切かどうかは別として、外国国章損壊罪が無制限に適用されることは、「表現の自由」とのバランスを欠き、憲法違反の疑いがあると考えます。
●「国旗損壊罪」は憲法上の問題も──SNS上では、2021年に自民党が提出を検討した「国旗損壊罪」の創設を求める声もあります。
国旗毀損罪の創設については、「表現の自由」の観点から重大な問題があり、私は憲法違反だと考えます。
とはいえ、現在のように与党が過半数を割っている状況では、十分な議論を経ないまま法案が成立してしまう懸念もあります。
近年、「日本人ファースト」に象徴される愛国的傾向と排外的動きは、表裏一体となって顕在化しています。今後、国旗損壊罪の議論が再燃する可能性もあり、私たちは「表現の自由」のあり方を注視していく必要があります。
【取材協力弁護士】
猪野 亨(いの・とおる)弁護士
札幌弁護士会所属。離婚や親権、面会交流などの家庭の問題、DVやストーカー被害、高齢者や障害者、生活困窮者の相談など、主に民事や家事事件を扱う。
事務所名:いの法律事務所
事務所URL:http://inotoru.blog.fc2.com/

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