お笑いコンビ「FUJIWARA」の原西孝幸さんがテレビ番組内で語った「お受験トラブル」がSNSで大きな反響を呼んでいます。

西さんが出演したのは、7月6日放送の「上沼・高田のクギズケ!」(読売テレビ)。妻から聞いた「だいぶ前の話」として、ママ友同士の衝撃のエピソードを紹介しました。

エピソードはこうです。ある幼稚園に子どもを通わせる親しいママ友2人が、それぞれ小学校受験をしたところ、一方の子が難関校に合格。しかし翌日、学校に確認すると、なぜか「入学辞退扱い」になっていたといいます。

学校側によると、合格発表の翌日には、受験番号と名前を名乗る人物から辞退の連絡があり、それを受理したとのこと。子どもの受験番号を知っていたのは、もう1人のママ友だけだったため、「難関校合格への嫉妬から、なりすまし電話をかけたのでは」と番組内で指摘されました。

この話を受けて、SNSでは「絶対に他人に受験番号を知らせてはいけない」「学校側が受験番号と名前だけで確認するのは問題では」などの声が上がっています。

もしこのような「なりすまし辞退」が実際に起きた場合、法的にはどのような問題があるのでしょうか。本人の意思に反して入学が取り消された場合、電話をかけた人物や学校に対して、損害賠償を求めることはできるのでしょうか。学校の問題にくわしい柴崎菊恵弁護士に聞きました。

●「なりすまし辞退」は偽計業務妨害罪の可能性

──勝手に辞退の電話をかけた場合、刑事責任は問われますか。

今回の原西さんのエピソードのように、合格者の保護者になりすまして学校へ入学辞退を連絡した場合、偽計業務妨害罪(刑法233条)に問われる可能性があります。

また、辞退の手続きに学校が書面の提出を求めている場合、それを偽造して提出すれば、私文書偽造・同行使罪(刑法159条1項・3項、161条1項)に問われる可能性もあります。

●損害賠償は請求できる?

──子どもや保護者が被った損害に対し、損害賠償請求はできますか。

なりすまし」の人物が特定できれば、民法709条に基づき、損害賠償を請求することはできます。ただ、精神的・経済的損害をどのように評価するかは状況によります。

●学校側にも法的責任問われる可能性

──保護者が辞退していないにもかかわらず、学校が入学を取り消した場合、法的責任は問われますか。

入学の取消しにあたって本人確認をしたとはいえない場合、学校にも法的責任が生じる可能性があります。

たとえば、電話で受験番号だけでなく、他の個人情報(生年月日、電話番号、住所など)も確認したか、入学辞退届などの書面を提出してもらったか、などが判断要素になると思います。

特に入学金の支払い後に辞退連絡があれば、学校にはより慎重な対応が求められるでしょう。

●「なりすまし」防止のために学校にできること

──学校側にはどのような対策が求められますか。

近年では、合格者の受験番号を発表せず、パスワード付きで個別に合否を確認させる方式を採用する学校も増えています。

電話で辞退連絡があった場合には、氏名と受験番号だけでなく、生年月日などの個人情報の確認を求めたり、入学証明書の返却や所定の辞退届を義務付ける学校もあります。

子どもの将来に関わることですので、学校側も「なりすまし対策」を適切に考えていかなければならないと思います。

そして、子どもや保護者は、受験番号を他人に知られないようにすることが何よりも大事です。

【取材協力弁護士】
柴崎 菊恵(しばさき・きくえ)弁護士
検事任官後、東京地方検察庁、千葉地方検察庁での執務を経て、2005年に弁護士登録(第一東京弁護士会)。顧問弁護士として学校法務、労働事件等を取り扱うほか、交通事故、刑事事件等も多数取り扱っている。

事務所名:ベルフラワー法律事務所
事務所URL:https://bellflower-law.jp/

難関校に合格したのに…ママ友が勝手に「辞退」の電話した? なりすまし行為はどんな罪に問われるのか