
その姿を見た人のほとんどはクマと間違える。「奥さん、裏庭にクマがいますよ!」と声を掛けられることもしょっちゅう。
確かにぱっと見るとクマに見えるかもしれないが、クマではない。ニューファンドランドという犬種のオスで名前はナポレオンだ。
アメリカの都市部で暮らすアレさんが飼っているナポレオンは、その見た目に反してとても心優しく、家族を支えてくれている。
妊娠中で感情の浮き沈みが激しくなっていたアレさんを、励まし続けてくれたのもナポレオンだ。
関連記事:大型犬の猫化?ニューファンドランド犬が鶏小屋に無理やり入り込む
命の恩人になったナポレオン
ナポレオンは、生後9週でアレさんの家族となって以来、常に彼女のそばに寄り添っている。特にアレさんが妊娠中は常に優しさと気配りで支えてくれた。
妊娠初期にはめまいに悩まされたアレさんだったが、ナポレオンは彼女が倒れないよう、自分の体でささえながらそばにいてくれた。
アレさんにとって本当に辛かったのは、妊娠にともなって突如現れたうつの症状だった。
周囲の人たちは赤ちゃんの誕生を楽しみにしていたが、アレさんは心から喜べず、孤独を感じていたという。だがナポレオンだけは、アレさんの感情を読み取り、その悲しみを全て受け止めた。
関連記事:「人間、私をなでるがいい」ドッグパークに行く目的が明らかに他の犬とは違うニューファンドランド犬

ある日、気分が沈んでいたアレさんは、家の近くにある崖沿いの道をナポレオンと歩いていた。
ふと飛び降りてしまおうという思いに駆られ、崖のふちへ近づいていった。するとナポレオンは、アレさんの腕を引っ張り、いつものベンチへと導いてくれた。
「彼は私を引っ張ってベンチまで連れて行き、私の膝の上に頭を乗せたんです。私は彼を撫でながら、ただただ泣きました」とアレさんは当時を振り返る。
その瞬間、アレさんはナポレオンの存在が自分の命を救ったのだと実感したという。
関連記事:自分がまだ小さいと思っている超大型犬、犬の学校で小型犬に抱き着きつぶしそうになり出禁に

今では子どもの守護者に
現在、アレさんの息子は3歳になり、ナポレオンは家族の一員として息子の成長を見守っている。夜中に赤ちゃんが泣くと、ナポレオンはすぐに反応して駆け寄り、「僕の赤ちゃんに何かあったの?」と心配そうな様子を見せたという。
アレさんにとって、ナポレオンは人生の支えであり、親友であり、家族を守る頼もしい存在だ。
「彼は本当に天使なんです。ニューファンドランドの姿をした天使。それって最高の形ですよね」と、アレさんは微笑む。
関連記事:イタリアの海の安全を守るライフセーバー犬、ヘリから勇敢に水に飛び込み人命救助

ニューファンドランド犬とは
ナポレオンのようなニューファンドランド犬は、カナダ東部のニューファンドランド島が原産の超大型犬で、かつては漁師の作業を助けるために育てられた歴史を持つ。
体重は60kgを超えることもあり、毛並みが黒く分厚いため、遠目にはクマのように見えることもある。
性格は非常に穏やかで辛抱強く、人に対してとても友好的だ。
関連記事:病気との闘いを支えてくれるセラピー犬。9匹のニューファンドランドを育てる女性(アメリカ)
攻撃性はほとんどなく、番犬には向かないが、その存在感だけで不審者を寄せつけない力がある。
また、感受性が高く、飼い主の気持ちを敏感に感じ取ることができる。
子どもにも優しく接するため、家庭犬としても人気が高い。水難救助犬としての能力もあり、水かきのついた足と強靭な体を活かして人命救助に活躍する個体もいる。
平均寿命は8〜10年とされており、大型犬特有の心臓病や股関節の疾患などには注意が必要だ。
しかし、適切な環境で愛情をもって飼育すれば、家族に深い安心感と癒やしを与えてくれる存在となる。
特に人との触れ合いや仕事に生きがいを感じるタイプのため、孤独にさせず、一緒に過ごす時間を大切にすることが長寿と幸福の秘訣となる。
近所の人にとっては恐ろしいクマのように見える存在だが、家族にとってはまさに天使でありやさしい巨人なのだ。

コメント