演劇界のセクハラをなくすための活動に取り組んでいた舞台俳優の知乃さんは、支援を依頼した馬奈木厳太郎弁護士から体を触られたり、性的関係を強要されたりして精神的苦痛を受けたとして、一昨年1100万円の賠償を求める訴えを起こした。その裁判は、弁護士が謝罪して解決金を支払うことで28日までに和解が成立した。

これは弁護士が依頼者に対してセクハラを行った極めて悪質な事例だが、弁護士が事務所の従業員にセクハラ行為を行うケースもある。こちらは内部の問題として明るみになりにくい。TBS「報道特集」が実態を報じた。

みなみさん(仮名)は15年前から弁護士事務所に勤務してきたが、A弁護士からパワハラとセクハラを受けた。何度も「40歳前後の女性は一番性欲が強くなるんだけど…」などと言われたという。

みなみさんは事務所の別の弁護士に相談したものの状況は改善されず、その後うつ病と診断された。3年前、みなみさんはA弁護士に対し損害賠償を求め提訴した。裁判ではA弁護士自らが尋問を行う異例の事態になった。今年3月、横浜地裁はA弁護士のパワハラとセクハラをうつ病の原因と認定、961万円の損害賠償を認めた。しかし、A弁護士は控訴し裁判は今も続いている。

大分では新人の女性弁護士が事務所代表のK弁護士から性加害を受け自殺した。2年以上繰り返し被害を受けたとされる。

大分地裁と福岡高裁は、自殺の原因は性加害にあると認定し、約1億2800万円の賠償命令を出した。大分弁護士会では法律事務所に対し、セクハラ研修の義務化を決定した。

犯罪を追及する立場の検察官がセクハラを行い、事件化した例もある。

大阪地方検察庁で働く女性検事が被害にあったのは2018年9月。当時、大阪地検トップの検事正だった北川健太郎被告は、酒に酔った女性検事が抵抗できない状態だったことに乗じて、長時間にわたり性加害を行ったとされる。

女性はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、北川被告を刑事告訴した。北川被告は準強制性交罪に問われ、昨年逮捕・起訴された。裁判は現在も続いている。

弁護士も検察官も法律のプロであり、セクハラ事件での“戦い方”を熟知しているだけに厄介だ。北川被告は女性検事に対し、「大スキャンダルとして大阪地検は組織として立ちゆかなくなる」と口止めを図っていた。そして、信じがたいのは、検察組織の閉鎖性だ。被害を受けた女性検事が復職した際には、女性をおとしめる内容の情報が、検察内部で出回っていたという。

検察組織に自浄作用が働かないのであれば、政治的な強制力でこれを正していくしかないのではないか。そして、繰り返し徹底的にマスメディアが報道して明るみに出していくしかない。

TBS公式ホームページより