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ローマ後継となるFRの2+2クーペ

フェラーリジャパン7月29日、東京のウォーターズ竹芝にて『フェラーリ・アマルフィ』の日本初お披露目イベントを開催した。アマルフィは、ローマの後継となるFRの2+2クーペ。車名は南イタリアにあるアマルフィ海岸に由来する。

【画像】車名は南イタリアの海岸に由来!フェラーリ・アマルフィ日本初お披露目 全93枚

スタイリングは『ローマのエレガントなプロポーションをインスピレーション』という表現をされ、確かにイメージはそのままだが、実はテールレンズ以外は全て刷新されている。『ミニマルなアプローチ』で、その世界観を深めた。

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7月29日、東都内で『フェラーリ・アマルフィ』が日本初お披露目された。    上野和秀

インテリアも同様にリデザインインターフェイスを刷新しているが、注目はステアリングホイールの物理的ボタン復活だ(ちなみにプレスリリースでもはっきり『物理的ボタン』と書かれている)。タッチ式だったスターターボタンが、馴染みのある赤いタイプに回帰した。センターのモニターが縦型から横型になったのもニュースだろう。

ボディサイズは全長4660mm、全幅1974mm、全高1301mm、ホイールベース2670mmと、全長が4mm伸びた以外はローマと同数値。乾燥重量は1470kgと2kgだけ軽量となった。

エンジンはF154型V型8気筒ツインターボで、ボア86.5mm、ストローク82mm、排気量3855ccも同数値。最大トルクは760Nm/3000~5750rpmと変化はないが、最高出力は20ps増となる、640ps/7500rpmとなった。ちなみに発生回転数も5750~7500rpmから7500rpmに変更されている。

ということで、シャシーとエンジンはローマと同様ながら、ローマのイメージを受け継いでブラッシュアップを図ったビッグマイナーチェンジモデルというのが、アマルフィの説明としては正しそうだ。

アマルフィに至るまでの流れ

ここで、アマルフィに至るまでの流れを振り返っておきたい。

2008年に電動ハードトップを持つV8のFRモデル、『カリフォルニア』をデビューさせたフェラーリ。その後、2012年にマイナーチェンジ版『カリフォルニア30』、2014年にビッグマイチェン版『カリフォルニアT』が登場。

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アマルフィの車名にちなみ、発表会は都内ながら海沿いでの開催。    フェラーリジャパン

2017年にはこれまたビッグマイチェン版と言える『ポルトフィーノ』が登場し、2020年にはさらに『ポルトフィーノM』へと進化。『ローマ』はその合間である2019年に登場し、2023年には『ローマスパイダー』も追加されている。

ということで約17年このシリーズを作ってきた流れを見ると、アマルフィの登場は自然な流れと言える。既に電動ハードトップを持つモデルは終了し、クーペとスパイダーへと枝分かれしたため、現在続いているローマスパイダーの生産終了が近くなれば、『アマルフィスパイダー』も当然登場すると予想できる。

なお、ビッグマイチェン版と聞くとネガティブに捉えるかもしれないが、毎回かなりの進化で、初めて乗る度に驚いてきたことだけは付け加えておきたい。

フェラーリらしい技術的改良点

ローマビッグマイチェン版とはいえ、細かいところではフェラーリらしい技術的改良が散見される。

目立つところでは、リアのアクティブスポイラー採用だろう。ロードラック(LD)、ミディアムダウンフォース(MD)、ハイダウンフォース(HD)の3パターンがあるが、制御は全て自動。HDでは250km/hで110kgダウンフォースが増加する。

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エンジンはF154型V型8気筒インターボの最新バージョン。    上野和秀

エンジンでは、専用のキャリブレーションで2基あるターボチャージャーの回転速度を個別に制御できるようになり、最高回転数が17万1000rpmとなった。これによりスロットルレスポンスが向上しているが、これは各シリンダーバンクに専用の圧力センサーを導入したことにも起因するという。296GTB以降使用している新しいエンジン制御ユニットも導入された。

また、1.3kg軽量となるカムシャフトを採用し、再設計したエンジンブロックには非構造素材を切削する精密機械加工を施して約1kg軽量となった。フェラーリのエンジンでは初となる低粘度オイル採用で、低温時の抵抗が約30%低減している。

スロットルレスポンス向上は他の様々な部分でも図られ、トランスミッションもさらなる最適化で、変速の滑らかさと速度が高まっているという。

サイレンサーレイアウトも新しくなり、『最も厳しい騒音規制にも準拠』するよう改良。排気シシテムは熱慣性の低減で始動時間が短縮された。サウンドも新しい比例制御式バイパスバルブでエキゾーストノートを管理するとしている。

注目はブレーキバイワイヤの採用

大きなところでは、ブレーキバイワイヤ採用が注目だろう。296GTB以降採用されている6Dセンサーのデータで制御するABS Evoとの組み合わせが、どんな挙動を示すのか注目だ。

タイヤはブリヂストン・ポテンザ・スポーツとピレリPゼロの2種類が標準となる。

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ンターフェイスが一新された室内。センターモニターが横型に。    上野和秀

プレスリリースで快適装備のアピールが多いのも特徴的で、ブルメスターのオーディオシステムがオプションで登場。14個のスピーカーと1200Wのパワーで『ベンチマークとなる音質を実現』としている。

アップル・カープレイとアンドロイド・オートも標準となり、ワイヤレス充電機能も装備。『マイ・フェラーリコネクトシステム』は、専用アプリで遠隔でも車両の状況が確認できる。

また、これまたオプションで10個のエアチャンバーを内蔵するマッサージ機能付きシートが選択可能に。これには座面とバックレストのベンチレーション機能も備わる。

日本市場にかかる期待は大きい

実車の印象はローマとかなり近いものだったが、それをボディパーツをテールレンズ以外全て入れ替えて作りあげるのは、意外と難しかったのではないかと感じている。ある意味、イタリアンデザインの面目躍如だ。

一方でフロントグリルがシンプルになるなどミニマルさを目指したのはわかるが、個人的にはフロントにシャープさがなくなった印象で、ここまでコンセプトやイメージを維持したことが顧客にどう判断されるか気になるところ。

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気になる車両価格は3418万円。ローマから約550万円のアップとなる。    上野和秀

このクラスはカリフォルニア以来、初めてフェラーリを選ぶエントリーモデルとして、新たな顧客を獲得してきた。しかし、昨今のスーパーカー業界はハイエンドは好調だが、中間あるいはエントリー系はライバルが多く、電動化との狭間の中で、アマルフィにも厳しい戦いが待ち受けている気がしてならない。

それには中国市場の低迷、トランプ関税による北米市場の暗雲も無関係ではないだろう。これまで世界で2番目の市場とされてきた日本にかかる期待は自ずと大きくなるが、それは各ブランド同様で、そんな簡単な話でない。

気になる車両価格は3418万円となった。これはローマから約550万円のアップとなり、為替の変化などを考えると致し方ないのかもしれないが、インパクトは大きい。なお、欧州では2026年初頭からデリバリー予定とのこと。

果たしてアマルフィが、この日の発表会場のように『ホット』な存在になるか。動向を見守ることにしたい。


フェラーリ・アマルフィが日本初お披露目!ローマと全てが違う外装が包み込むものとは【元専門誌編集長の視点】