車両価格が高騰するなか、支払額を抑えるために「残クレ(残価設定型ローン)」でクルマを購入する人が増えています。しかし、「残クレ」には“向いているクルマ”と“そうでないクルマ”があると、YouTubeのチャンネル登録者数145万人超、月に1台のペースでクルマを購入するワンソクTube氏はいいます。同氏の著書『損しない「クルマの買い方」大全』(KADOKAWA)より、「残クレ」のしくみとメリット・デメリットをみていきましょう。

月々の支払額を抑えられる…普及が進む「残クレ」のメリット

残クレとは、クルマを購入する際に設定されるローンの一種で、契約終了時のクルマの「残価」(将来の査定価格)をあらかじめ設定し、その残価分を差し引いた金額でローンを組む仕組みです。この残クレでは、月々の支払額を低く抑えられるため、一般的な自動車ローンよりも負担が軽くなります。

ディーラーで契約できる残クレでは、契約期間は一般的に3年・5年が多いです。契約終了時には、以下の3つの選択肢があります。

1.買い取り:残価分を支払ってクルマを自分のものにする

2.返却:クルマを返却して契約を終了する

3.期間延長ローン:残りの残価分を期間延長して再びローンを組んで分割払いする

残クレにもメリットとデメリットがありますが、まずメリットとしては、残価を設定するため、通常のローンよりも月々の支払額を抑えられるというのが最大のメリットになります。

一方、デメリットとしては、所有権がローン会社や販売店にあるので、走行距離や車両の状態に制限があり、傷や走行距離によっては返却時の査定で追加費用が発生する場合があること、契約満了時にクルマを買い取る場合にトータルの支払額が通常のディーラーローンよりも高くなることがある点などが挙げられます。

なので、私個人の意見としては、「月々の支払額を抑えて、短期で乗り換えしたい人」には残クレがオススメです。

“長く乗り潰す”派には不向きだが…「お金で時間を買う」ことで、QOL向上

一方、長く乗り潰す人には支払総額が高くなるのであまりオススメはしません。もちろん、月々の支払額を下げることができるので、先ほど解説した手元流動性を確保しつつクルマを保有する手段としてはアリです。「お金を貯めてから買う」と数年を浪費するよりは、残クレで先にクルマを手に入れてしまうほうをオススメしたいです。

クルマは単なる移動の手段だけではなく、移動以外の価値がたくさんあります。クルマがあることでQOL(生活の質)が向上するので、残クレで買えるのであれば先に手に入れてしまったほうが人生の得だと思います。

目先の利息を気にしてお金が貯まるまでの時間を浪費するよりは、人生の時間を利息というお金で買って、クルマや人生経験を先取りしてしまったほうが得だと思いませんか? それに「お金で時間を買っている」って、なんかカッコいいじゃないですか(笑)。

残クレ否定派の人がよく言う言葉に「もし事故ってしまったら借金だけが残る」というのがありますが、現金が一気になくなってしまうより、分割で返済できたほうがずっとリスクオフできていると思います。

また、残クレでも早期完済はもちろんできるので、満期までの利息を払いたくないなら、残債を精算してしまえばいいだけです。住宅ローンと同様に、手数料はかかりますが繰り上げ返済した分の利息は減るので、総支払額を抑えることもできます。

同じ「残クレ」でも、販売会社によって金額は変わる

ひと言で「残クレ」と言っても、実は販売店によっても内容に大きな違いがあり、クルマの残価に対しても金利がかかる場合と、かからない場合があります。

残クレの金利が「借入総額全体にかかるタイプ」だと、残価にも金利が上乗せされます。このタイプでは、車両本体のローン残額と設定された残価の合計に対して金利が計算されるため、月々の支払額がやや高くなる傾向があります

一方、販売店や金融機関によっては、残価を最終一括払いとして扱い、その残価には金利がかからない設定にすることがあります。この場合、ローン契約時に残価を除いた車両本体の金額に対してのみ金利が発生し、残価分は無利息で最終的に支払うカタチとなります。

同じクルマを買う場合でも、販売会社が異なると残クレの仕組みや金利も異なり、ローンの分割手数料がかなり変わってくるので注意が必要です。

ちなみに、ここで言う販売会社とは、各店舗(ディーラー)のことではなく、その店舗をまとめる販売会社のことです。

トヨタであれば、トヨタモビリティ〇〇の△△店とあるように、「トヨタモビリティ〇〇」に当たる部分が販売会社に当たります。「トヨタ〇〇」とか、「ネッツ〇〇」とか、「トヨペット〇〇」とか、いろいろ販売会社がありますよね。その販売会社によっても、残クレやローンの金利や内容が異なるということです。

例えば、値引きは「トヨタモビリティ〇〇」のほうが大きかったけど、残クレの金利や分割手数料は「トヨタモビリティ□□」のほうが安かったから、支払総額では「トヨタモビリティ□□」のほうが少なかった、みたいなことがあり得るということです。なので、相見積もりを取る際には、値引き額だけではなく、残クレの分割手数料まで含めた総支払額で比較したほうがいいです。

「残クレ」を“あえて使わないほうがいい”場合も

私があえて残クレを使わずにクルマを買う場合というのは、この条件が悪いときです。

残クレの金利は安いところで0%や0.9%などから、高いところでは5%台のところまでかなり幅が広いです。

また、車両の残価に買取保証がある残クレと、保証はできないけど残価をとりあえず設定している残クレとがあります。買取保証がない残クレの場合、満期になった際に査定をして残価設定額よりも査定額が安かった場合には、その差額も支払う必要があります。

私の場合は、輸入車などリセールが期待できないクルマを買う際、買取保証タイプの残クレで、なおかつ金利も低ければ、積極的に残クレで購入しています。

特に輸入車ではMINIやBMWなどでは買取保証タイプの残クレが多いです。また、輸入車では国産車よりも金利も低いことが多く、キャンペーン中では0.9%などかなり低い場合があります。そうでなくても2.9%くらいの金利設定が多いです。

一方、国産メーカーでは、金利が5%以上で、車両残価にまで金利がかかっているものもあるので、そういう場合には残クレは使わず、現金一括で購入するようにしています。

ワンソクTube クルマ買うチューバー/ブログ管理人

(※写真はイメージです/PIXTA)