ストレートに言い切ろう。

『ホロの花札』は、「ホロライブ」を全く知らない人でも体験するべきだ。

VTuberグループ「ホロライブ」のメンバー、通称「ホロメン」たちが集う花札アドベンチャーゲームと称される本作は、第一印象こそファンをターゲットにしたゲームのように見える。

筆者もプレイ前はそのような先入観を持っていた。
しかし実際に体験したところ、まさに「かるた」のごとくその先入観はひっくり返された。

この作品、デジタルだからこその「新しい花札」を遊べる意欲作だったのだ!

本作をもっとも「新しい花札」たらしめているのは、「ホロあわせ」なるオリジナルルールだ。

遊び方自体は、花札の最も有名な遊び方とされる「こいこい」と一緒……なのだが本作独自の「ホロ役」「タレントスキル」「場の得点」という3つの要素を“ちょい足し”することで、新たな駆け引きの楽しさを実現している。

「ホロ役」は、その最たる一例である。

役を完成させると組み合わせに応じた特殊効果が発生する……のだが、それが「相手の手札を丸見えにする」「相手の手札を1枚、役が作れないように封じる」「2回連続行動(ターン)を発動させる」といった、現実の花札ならイカサマ同然なもののオンパレード。

あり得ない技と戦術がテンポよく乱れ舞う、異色の花札バトルを楽しめるのだ。

だからこそ、「ホロライブ」をほとんど知らない方でも体験してほしいそして、花札を遊んだ経験のある方でも「ホロあわせ」目的で遊んでみる価値がある

さらに本作は、優秀なアシスト機能とチュートリアルも備えているため、花札を全然遊んだことのない方にもオススメできる。

ちなみに、本作はNintendo Switch、PlayStation 5、PlayStation 4、PC(Steam/Stove)向けに発売されるタイトルである。そのうちNintendo Switch版であれば、特装版に限り、花札の老舗たる任天堂が特別に制作したオリジナル花札もついてくるぞ。

“ちょい足し”の効果により、花札に新たな可能性を切り開いたこのゲーム……見逃すなかれ!

文/シェループ
編集/anymo

『ホロの花札』公式サイトはこちらSteam『ホロの花札』はこちらMy Nintendo Store『ホロの花札』はこちら

予測不能で痛快な逆転劇(時々悲劇)を生む作りが異彩を放つ「ホロあわせ」

本作屈指のポイントである「ホロあわせ」は、花札の定番ルール「こいこい」をベースにしている

そもそも「花札」とは、日本のかるたの1種で「花かるた」とも呼ばれるものだ。全部で48枚ある札には1月から12月までの折々の花や草木が各月4枚ずつ描かれており、各絵柄ごとに点数がついている。

「こいこい」は花札における定番の遊び方で、相手より早く役を作って得点を稼ぎ、複数ラウンドの総合点で競うゲームだ。

通常の「こいこい」も収録。ほかに「おいちょかぶ」「花あわせ」もある。

手札から札を出してそれと同じ月の札を場札から取り、山札からも1枚引いて同じ月があれば取札にする。

これを交互に繰り返して役を完成させ、「あがる」(ラウンド終了)か「こいこい」(さらなる高得点を目指し、リスクを負った状態で続行)かを選択する駆け引きが醍醐味となっている。

より詳しいルールについては、花札の老舗たる任天堂の公式WEBサイトに解説ページがあるので、そちらを参照いただきたい。

「ホロあわせ」はこの「こいこい」に、「場の得点」「ホロ役」「タレントスキル」という3つの独自要素を“ちょい足し”した遊びだ。

「場の得点」は、場に出た札に応じて積み上がっていく得点で、「あがる」を宣言したプレイヤーだけが獲得できる。ちなみに「こいこい」をすれば、この得点にも倍率がかかり、より多くの得点を得られる。

「ホロ役」はホロメンの組み合わせに応じて発生する役。通常の役と違って得点は獲得できないが、成立させると組み合わせに応じた特殊効果が発動する。

相手の手札を公開する(丸見えにする)場札の1枚を獲得不能にする連続行動する(自分のターンを2回発生させる)といった、現実の花札なら“イカサマ以上のナニカ”でしかない一手を相手や自分に決めることができるのだ。

「タレントスキル」は「こいこい」を宣言した時に限って発動するキャラクター固有のスキル。紹介が遅れたが、本作には「白上フブキ」、「百鬼あやめ」、「大神ミオ」、「さくらみこ」(敬称略)のホロメン4名が主要キャラクターとして登場し、対戦に応じて選択できる。

この時に選んだキャラクターごとに固有のスキルが設定されていて、「こいこい」を宣言した時にその恩恵にあずかれるのだ。

ちなみに「アドベンチャー」と「お弁当」の2つのモード(いずれも後述)限定で「癒月ちょこ」「鷹嶺ルイ」の2人も登場する。

これらの独自要素を「こいこい」に“ちょい足し”したのが「ホロあわせ」なわけだが、結果として予測不能な展開と痛快な逆転劇(時に血反吐確実の悲劇)を生み出す新しい遊びが誕生した。

特に「ホロ役」は、前述した効果の一例からも察せるように、発動のタイミングによっては状況が豪快にひっくり返る

筆者の対戦中の一幕を紹介しよう。

2ラウンド続けて敗北し、点差も決定的になっている。そんな中で連続行動の効果がある「ホロ役」が完成!そのまま通常の「役」を作り上げて「こいこい」を決め、さらに大量の得点が得られる大きな「役」が出来上がる一手を決めて「あがり」を宣言。

ここに倍率のかかった「場の得点」もくわえて、相手をはるかに上回る得点を“がっぽり”獲得して、そのまま大勝利!

誇張抜きに、脳汁ドバドバの体験が味わえる。

逆に自分がこれを決められる可能性も付きまとうため、仮に現実になった時は血反吐が出るレベルで打ちのめされたりも。このような予測不能な展開が生まれやすい構造になっており、非常にスリリングで、悲喜こもごもな体験を得られる遊びに仕上げられているのだ。

一連の要素がデジタルゲームの強みを活かしているのも特筆に値するだろう。

一部の特殊効果は、現実にもやり様によっては不可能と言えなくもない。しかし、得点計算やターン経過などの条件を踏まえた手間を考えれば、迅速に処理してくれるデジタルゲームに、遊びやすさと快適性の面で軍配が上がる。

まさにこの環境だからこそ活きる花札の遊びとして確立されていて、やればやるほど唸らされるのである。

イカサマ同然の戦術を使える点に着目すれば、2024年に大ヒットしたトランプのポーカーを題材にしたインディーゲーム『Balatro(バラトロ)』が脳裏を過ぎるかもしれない。まさにその花札版といってもいい感じだ。

そこにいくつかの要素を“ちょい足し”したことで、定番とされてきた花札の遊びに新たな価値をプラスしている。

逆に言えば、「こいこい」よりも役が多いなりに覚える要素が多い難点もあるのだが、それを乗り越えるだけの面白さと見所が「ホロあわせ」にはある。この面白さは、「ホロライブ」のことを全く知らない人でも体験する価値が大いにある。

スピーディでテンポがよく、手応えもしっかりと表現する演出と良好な操作性が生み出す“気持ちよさ”

遊んでいてやたらと“気持ちいい”作りになっているのも、「ホロあわせ」と並ぶ本作のセールスポイントである。

「厳かで伝統的なイメージのある花札で“気持ちいい”とはなんぞ?」だが、本作はアニメーションからエフェクトといった演出全般が非常にスピーディでテンポがよく、遊んでいてストレスを感じることがほとんどない。

特に役(※ホロ役も含む)を完成させた時には、ヒットストップ【※】と痛快な効果音、派手なエフェクトを用いて確かな手応えと快感をプレイヤーに対して提供。「勝利の一手を決めた!」という気分に浸らせてくれる。

※ヒットストップ:アクションゲームなどで攻撃がヒットした時、一瞬だけゲームの時間が止まったり、スローモーションになったりする演出のこと。

どんな役を完成させたかの情報表示も迅速で、対戦が過度に中断することもない。加えて操作感も非常によく、カーソルはキビキビと動き、選んだ札を決定した時のレスポンスも一切の間を挟むことなくスピーディ。

これらの工夫もあって、見た目以上に快適で気持ちよさすら感じさせる手触りを実現させているのだ。特に操作性の良さと、役を作り上げた時の演出(特にヒットストップ)の派手さと痛快さはすごい。

絵的に伝統的なムードが漂いがちな一面を持った花札を、より華やかなものへと昇華させている。

対戦中に流れる和テイスト全開の音楽が「こいこい」を決めた時には状況にマッチした楽曲に切り替わる仕掛けも盛り込まれていたりと、その「分かっている」作りには唸ってしまうはずだ。

気持ちよさに関しては、花札を全然遊んだことがない人などへのフォローにも言える。具体的にはチュートリアルを兼ねたゲームモード「アドベンチャー」の収録と、札ごとの情報を表示するアシスト機能、そして役完成時の点滅表示だ。

とりわけ光っているのが役の点滅表示で、取り札でなんらかの役が出来上がりそうな時に色付きの点滅で狙い時を教えてくれるのだ。通常の役は黄色、ホロ役の場合は青(水色)という具合に分けて設定しているのもポイント。

札が黄色く点滅していれば「出来役」が完成するサイン(青く点滅している時は「ホロ役」が完成するサイン)

役の組み合わせを覚えきれていなくても、「光っていればチャンス」と、ある程度直感で判断できるようにしているのも、花札をあまり遊んだことのないプレイヤーに易しい。

しかも、そんな戦い方も「アドベンチャー」の序盤で許している。まずは直感でもなんとかなる難易度で遊び方や仕組み、雰囲気をつかんでもらって徐々にプレイヤーに理解を深めてもらうスタンスが取られているのである。

役にしても対戦中に逐次、その一覧を表示可能。くわえて、自分の番(ターン)は数分以内に完了させないとダメな時間制限もないので、好みのペースで慣れていけるのも嬉しいところだ。

さすがに高度な戦い方をしたいなら各種要素などをしっかり理解する必要が出てくるが、入口のハードルは低い。何よりアドベンチャー」ではストーリーに沿って各種遊び方を学んでいけるので、終わりに差し掛かる頃には大体のことを理解しているだろう。

そこからほかのモード、中でも本作のエンドコンテンツに等しい存在で、オンラインに対応した「みんなでプレイ」へと足を踏み入れることで、次第に花札の沼へとハマってしまう……かもしれない。

ちなみに「アドベンチャー」はチュートリアルを兼ねているとは言え、結構ボリュームがある。終盤には思わず脳ミソがフル回転してしまう手ごわい戦いも用意されているので、花札の経験者でも確かな歯ごたえが得られるだろう。

ただ、それなりに運も強く絡んでくることは念頭に入れておいていただきたい。特に収録ルールのひとつ「おいちょかぶ」は、その辺が強く現れる展開になりやすいため、心の余裕をもって取り組むのがベストだ。

Nintendo Switchの特装版にだけ付く実物の花札は任天堂製!老舗の職人技が光る完成度に唸る!

ここまでのスクリーンショットにも映っている通りだが、対戦で使われる花札は本作オリジナルデザインの花札となっている。

札の中には、本編には主要キャラクターとして登場しないホロメンも多数描かれているほか、それぞれの個性と特徴が活かされたデザインになっている。各ホロメンのファンならば、その組み合わせに思わずニヤリとしてしまうこと請け合いだ

このオリジナル花札はNintendo Switch版の特装版に限り、本物が特典として付いてくる。しかも、デザインはジェムドロップが手がけ、任天堂直々の手によって作られた特別製である。

今回の先行プレイで体験したのはPC(Steam)版だったのだが、特別に制作のジェムドロップさんから実物をお借りすることができたので、その一部をご紹介しよう。

「さすが老舗……!」と唸る品質の花札に仕上げられている。

大事なことなので繰り返すが、この特典はNintendo Switchの特装版限定である。

他機種版は言うまでもなく、Nintendo Switchの通常版には同梱されない。喉から手が出るほど欲しい気持ちがあるなら、迷わずNintendo Switchの特装版をぜひ。

なお、本編に既存デザインの花札の絵柄へと切り替えられる機能も完備されている。

さらに、本作のマルチプレイはクロスプラットフォームにも完全対応しているため、機種の異なるプレイヤー同士でも対戦が可能。マッチング周りもランダムのほか、ルームを作成しての対戦まで網羅されている。

このほか、オンラインマルチプレイで出会ったプレイヤーへ、名刺代わりとして独自に作った「お弁当」を渡すという機能も。この「お弁当」に入れる具材はメニューにある「ショップ」から購入可能。

特定の人の心をジリジリさせる(かもしれない)カロリー表記に完全対応しております。

かなりの種類が用意されており、バリエーションに富んだお弁当を作れるので、何かしら創作意欲が刺激されたなら気が済むまで取り組んでみるのも一興だ。場合によっては花札そっちのけでやってしまうかもしれない(本末転倒もいいところだが)。

「アドベンチャー」におけるホロメン同士の掛け合いにも、分かる人ならニヤリとしてしまったり、「容赦ねぇ……」となってしまう一幕もあったりして見所多し。

主要キャラクターが4人のみとなっているものの、追加のメンバーもDLCで展開されていくとのことなので、発売後の発表に注目である。

一見するとファン向けのゲーム。蓋を開けてみたら、その枠に収まらない魅力と見所が詰まった意欲作。それも、遊んでいて非常に気持ちいいという、色んな意味で意表を突かれるゲームになっている本作。

先行プレイ前にファンゲームとしての先入観を持っていた筆者も、本当に「してやられた!」のひと言に尽きた。

それぐらい唯一無二の魅力があり、デジタルゲームならでは強みも活きた意欲作になっているので、ホロライブ(ホロメン)ファンに限らず、花札をまったく遊んだことがない、ちょっと挑戦してみたいという人もぜひお試しいただきたい。もちろん、カードゲーム好きにもイチオシである。

なお、本記事執筆時点でPC(Steam)版に限り、無料の体験版も配信されている。一部制限がかけられているが、最大のセールスポイントたる「ホロあわせ」がどんなものか、一端を知りたい場合はぜひ、こちらでお試しあれ。

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