
東京23区の新築マンションが1億円超え、特に湾岸タワマンの価格高騰は止まりません。なかでもパークタワー勝どきは、1年で坪単価150万円もの値上がりをみせ、その圧倒的な存在感に目が奪われがちです。しかし、本当に狙うべき「資産」はそこにあるのでしょうか? 本記事では、株式会社KIZUNA FACTORY代表取締役の稲垣慶州氏の著書『住む資産形成 資産価値重視で後悔しないマンションの選び方』(KADOKAWA)より、マンションをめぐる現状と、令和ならではの「購入術」について解説していきます。
マンションは単なる「住まい」ではなく「資産」
マンション価格は高騰しています。東京23区の新築マンションの平均価格は2023年に1億円を超えました。人気エリアの中古マンションの価格上昇も続いています。多くの方がマンションを“資産”として意識するようにもなってきました。
「キャピタルゲイン(売買差益)を目的にしている」とまでは口にしなくても、「どうせなら含み益はあったほうが良い(資産価値が購入価格を上回るようになってほしい)」と考える方は増えています。最近の傾向としては、購入したマンションを5年から10年で売却して住み替えるケースも目立ってきました。最初から買い替えを前提にしているのであれば、資産性が落ちにくい物件を検討するのは当然です。
次のような質問を受けることもあります。
「パークタワー勝どき(ミッド/サウス)は相場よりはるかに高い金額で取引されていると聞きます。やはり資産性は高いのでしょうか?」
こうしたことを聞かれた際には、資産性についてどのように考えているかをまず確認します。
・資産価値が落ちないことを望むのか?
・多額の投資に見合った価値上昇を望んでいるのか?
どちらなのかによって見方が変わってくるからです。
後者のように投資という意味合いが強いのであれば、個人的にはパークタワー勝どきはあまり推奨しません。どうしてかといえば、すでに想定を超えて価格が上昇しているためです。資産価値が維持される可能性は高くても、現在のレベルの値上がりが今後も続いていくとは約束しづらいです。
坪120万円値上がり…勝どきエリアでは中古も資産価値が上昇
そもそもマンション購入は資産性だけを求めるものではないはずですが、パークタワー勝どきに関心をもった方には近隣の中古物件と比較してもらうことを勧めます。
パークタワー勝どきのアドレスは中央区勝どき4丁目です。勝どき5丁目の勝どきザ・タワーや勝どき6丁目のTHE TOKYO TOWERSなどなら、パークタワー勝どきの60~75%程度の価格で購入できます。築年数は経っていても、住環境としては遜色ない、このエリアを代表するタワーマンションです。
現実的な価格の動きは次のようになっています。
■2023年相場
パークタワー勝どき……坪単価750万円程度
勝どきザ・タワー……坪単価480万円程度
THE TOKYO TOWERS……坪単価450万円程度
■2024年相場
パークタワー勝どき……坪単価900万円程度(2023年から+150万円)
勝どきザ・タワー……坪単価600万円程度(2023年から+120万円)
THE TOKYO TOWERS……坪単価500万円程度(2023年から+50万円)
2023年から供給が始まったパークタワー勝どきは1年のうちに坪単価150万円程度値上がりしました。同じ期間のうちに2016年築の勝どきザ・タワーは坪120万円程度値上がりして、2008年築のTHE TOKYO TOWERSは坪50万円程度値上がりしました。
最近は築年数が新しい順に値上がりする傾向が出ていますが、それなりの築年数が経っていても値上がりはします。今年で築17年のTHE TOKYO TOWERSについても新しいマンションを追いかけるように値上がりしていることから読み取れます。値上がりが続いているうちに勝どきザ・タワーやTHE TOKYO TOWERSを購入しておくのは良い選択だと思います。
マンション購入時の新たな考え方
何年か住んだあとに売却することになったとしても、その際の市場価格が取得金額を上回っていれば、キャピタルゲインが生まれます。また、市場価格が残債を下回る可能性は低いです。万が一取得価格を下回っても、マイナス差額はマンションに住んでいたあいだの居住費であり必要経費です。
もし、5年間住んだあとに売却して500万円のキャピタルロスになったとすれば、毎年の居住費は100万円で済んだということです。賃貸で借りるコストより低くなります。
それでもやはり、できればキャピタルゲインを得たいと考える方は多いはずです。せっかくマンションを所有するのであれば、居住満足度を大切にしながら価値の最大化を図っていきたいことでしょう。それが“住む資産形成”です。
令和のマンション購入術「10箇条」
理想的な資産形成を実現するために私が提唱しているのが次の原則です。
■令和のマンション購入術10箇条
1.頭金は入れるな
2.新築ではなく近隣の中古を買え
3.自分が住みたい物件は買うな
4.人口が増えるエリアで買え
5.ブランドマンションを狙え
6.広さより部屋の数が多い物件を買え
7.間取りはワイドスパンを狙え
8.「マンションは管理を買え」は間違い
9.人気駅が高いなら隣駅を狙え
10.成約事例を参考にするな
これまで“常識”常識とされていた不動産購入の考え方とは、ずいぶん変わっているのがわかるのではないでしょうか。
頭金500万円は「投資」に回すことで、利益を“最大化”
ここでは「1.頭金は入れるな」について解説しておきます。
マンションなどを購入して住宅ローンを組む際には、これまで購入価格の1~2割を頭金として入れるのが一般的でした。頭金を入れれば、借入金額=返済総額を抑えられるので、毎月の返済額を減らしたり、借入期間を短くできるという考え方ができるからです。
しかし現在、住宅ローンは空前の低金利となっています。頭金を入れるか入れないかによって生まれる返済総額の違いは小さいとは言えません。一方、「頭金を入れずにそのお金を投資に回したならどうか」と考えても良いわけです。
たとえば7,000万円の物件を金利0.4%の35年ローンで購入したとします。
頭金0円の場合:月々の支払額17万8,633円
→金利合計額は502万5,942円
頭金500万円の場合:月々の支払額16万5,873円
→金利合計額は466万6,947円
頭金を入れることによって減額される月々の支払いは1万2,760円で、抑えられる金利は35万8,995円ということになります(図表のA)。一定のメリットは感じられるかもしれませんが、頭金を入れずに500万円を投資に回していたとすればどうでしょうか?
あくまでシミュレーションとして考えてほしいのですが、それを示したのが[図表]です。
比較的リスクが少なく、ある程度のリターンが期待しやすいインデックスファンドなどの投資信託にまわしたとします。1年間の平均利回りが4%だったと仮定すれば、計算上、500万円は35年後には2,022万8,849円になっています(図表のC)。額の大きさに驚かれる方もいるかもしれませんが、利益分からもさらに利益が生まれる「複利効果」によるものです。利回り4%も現実的な数字です。
一方、頭金500万円を入れることで減額される月々の支払額の1万2,760円を、毎月、積み立て投資に回したとします(図表のB)。平均利回りが同じ4%だとすれば、合計535万9,200円の積み立てが1,169万7,597円になります。やはり複利効果があるので、小さな額ではありません。しかし、頭金を入れずに500万円を運用していた場合と比べれば、削減金利を合わせて考えても800万円以上の差がついています。
家やマンションは“人生最大の買い物”であり、金額も大きなものになります。
「最高の家に住みたい!」と考えるのは自然な感覚ですが、それと同時に資産形成という発想をもっておいても良いはずです。それが賢明な買い方です。
稲垣 慶州 株式会社KIZUNA FACTORY 代表取締役

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