
日本弁護士連合会(日弁連)は7月30日、記者会見を開き、取調べの全件録音・録画と取り調べの弁護人立会いを強く求めた。
2016年の改正刑事訴訟法により、冤罪防止のため取調べの録音・録画(可視化)が導入された。しかし対象が限定されたため、裁量に任された範囲では実施が進まず、問題が発生していると指摘されている。
日弁連は、7月24日にも声明を発表していた。声明では、2016年の法改正の理念が未だ達成されておらず、「違法・不当な取調べ」が継続する現状に強い懸念を示し、改善を求めている。
●どんな問題が起こっているのか会見で河津博史弁護士は、プレサンス事件、大川原化工機事件などを挙げ、2016年に取り調べの録音録画を義務付ける法改正がなされた後も、「人格権を侵害するような取り調べの事例が明らかになっている」と指摘した。
他方で、録音録画があったことによって、違法ないし不適切な捜査が行われている実態が明らかになった事件もあったことから「すべての事件に拡大する必要がある」とした。
また、次のステップとして、「黙秘権を実質的に保証する観点からの、取り調べへの規制や、弁護人を立ち会わせることができるという権利の保証が必要になる」と指摘した。
●全件録音・録画義務化と弁護人立会いの実現を河津弁護士は、現行法では録音録画の対象事件が限定され、それ以外の録音録画が捜査機関の裁量に委ねられている現状について、「捜査機関の裁量に委ねた結果、警察は現にほとんど(録音・録画を)行っていない」と指摘した。
また「極めて不適切な取調べが行われていることが、秘密録音で明らかになった」ケースもあると挙げつつ、全事件への録音・録画の義務化が不可欠であると強く訴えた。
河津弁護士が例に挙げたのが、2017年に起きた三重県鳥羽警察署事件だ。この事件では、店舗の売上金を奪った疑いをかけられた女性が不当な取り調べを受け、女性が秘密録音をしていたためこの取り調べの不適切さが明らかになった。
●弁護人が取調べに立ち会うことも「全く実現していない」弁護人の取調べ立会いが「全く実現していない」現状も問題視した。
河津弁護士によれば、現行の制度のままでも立会いは実現できるという。
「犯罪捜査規範という警察の規則では、弁護人が立ち会った場合には、立ち会った弁護人の名前を書く規定があり、実は今の日本の法体系は(弁護人の)立会いを想定しているともいえる」
「別に制度を作らなくても実現は可能なんですよね。被疑者から(捜査機関に対し)『弁護人を呼んでください。呼んでくれないなら供述しません』という話があって、被疑者の意思が固い場合には捜査機関が弁護人に立ち会ってくださいと連絡して認めてもらえば良いわけです」
このように現行法で実現可能に思える立会いが実現しない背景を、河津弁護士は、「結局、『立ち会わないなら供述しません』という権利が確立されていないから」として、黙秘権が実質的に保障されていない現状を指摘した。

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