「いつか人生が静かに終わりを迎える時、この水中の景色が観たい」

(関連:【画像】心の奥に永遠に残しておきたい…『原神』フォンテーヌの水中の景色

 それが初めてフォンテーヌの海に潜った時の、心からの感想だった。静寂と光が包むあの場所は、心の奥に永遠に残しておきたい風景だ。

 好きな声優が出演しているという理由でプレイを始めた『原神』。そこに広がっていたのは、あまりにも広大で、美しく丁寧に描きこまれたテイワットの景色と物語だった。最も好きなキャラクター・ナヴィアが活躍するフォンテーヌにたどり着くには、プレイから1年ほど掛かった。なぜなら、道中の景色が魅力的で探索に夢中になってしまったからだ。そして、その先に待っていたフォンテーヌは、それ以上の景色を見せてくれた。本稿では、筆者が魅了されたテイワットの「景色」、それを彩る「音楽」や「人々との思い出」について迫っていく。

■「人生が終焉を迎える時に目にしたい」と初めて思えたフォンテーヌ水中の景色

 最初に、筆者を特にとりこにさせたフォンテーヌの水中について触れたい。ナヴィアに会うため順を追ってフォンテーヌにたどり着くことを楽しみにしていた。だが、どうしてもストーリーを体験するより先に水中へ行ってみたかったのだ。なぜなら、動画で見たフォンテーヌの水中の景色があまりにも美しかったからだ。水と絡み合った美しい建物や景色に目を奪われながらも、一目散に水中へ飛び込んだ。

 潜水した瞬間が今でも忘れられない。ゴボゴボと音を立て、潜り込む。水中でキャラクターは一切言葉を発さない。そのため、より一層水中での体験が際立った。水中には海藻のようなものが所々に生え、たくさんの生き物が生活をしている。スクリーンショットを撮ると一目瞭然だが、たった一画面の密度の濃さに驚く。

 メタな発言にはなるが、どうしても触れておきたいことがある。それは、フォンテーヌの水中は処理落ちしないことだ。高スペックのスマートフォンでプレイしていたとはいえ、これだけのグラフィック密度を保ちながら処理落ちが発生しなかったことも、より水中での感動を引き立てた。

 数多くのゲームをプレイしてきたが、水中というシチュエーションは処理落ちの原因となることが特に多い。そのため、こんなにもスムーズに水中を泳ぎ回れることに感激して仕方がなかった。また、海中から出ると画面に水が付き、キャラクターからもボタボタと水滴が滴るところも没入感を増してくれた。

 あまりにも美しい水中の描写、そこで感じる生き物、植物たちの息吹を感じ、「いつか人生が静かに終わりを迎える時、この海中の景色が観たい」と思わせてくれたのだった。

■バリエーション豊かな“音”が与えてくれる景色の意味

 フォンテーヌの水中を泳いでいると、どこからともなく美しい歌声や旋律が聞こえてくる。

 本作の素晴らしい点のひとつとして、エリアがほんの少し違うだけで異なった音楽が流れることが挙げられる。その音楽のバリエーションの豊かさから、常に新鮮な気持ちになり探索が非常に捗る。決して飽きないのだ。

 しかもどの曲も耳当たりがよく、耳に残る。曲を聴くだけで、景色、そこで起こった出来事や仲間との思い出が鮮明に目に浮かんでくる。それほど本作の景色と音楽は、密接に結びついているといっても過言ではない。

 昨年、公式コンサートに初めて足を運んだ。会場内の大きなスクリーンでは演奏曲に合わせ映像が流れる。そのとき、キャラクターたちとの思い出が走馬灯のように脳内を駆け巡った。スクリーンに大きく映し出される数々の映像に、旅人(※1)たちは行った国、出会った人々との思い出に浸っているようだった。

 テイワットの景色は、ただの「背景」ではない。音楽や人々の思い出が重なり合い、ただいるだけで、眺めているだけで、旅の記憶がはっきりとよみがえるのだ。

■出会った人々との記憶が鮮明によみがえるテイワットの景色

 本作の魔神任務(メインストーリー)は、フルボイス、長い時間を掛けてじっくり展開される。そのため、ストーリーが展開した場所で景色を眺めたり、歩いたりしていると、そのとき、その場所で会ったキャラクターや彼らとの会話が鮮明に思い出せる。

 ここで2024年夏に期間限定で実装されていたマップエリア「シムランカ」を紹介したい。この景色は、フォンテーヌの水中に次ぐ衝撃を受けたものだった。

 折り紙の動物やおもちゃの住人が生活しており、旅人たちが来訪するストーリーが展開された。童話のようなファンタジー感あふれる場所で、いるだけで不思議な気分になれた。流れていた音楽も夢に誘うような旋律で、まさに夢体験だった。

 ピンクと紫からなる特徴的なグラデーションの空、月、そして絶え間なく流れる星たち。夏になると、この光景とここで出会った折り紙の動物とおもちゃたちを思い出す。一緒に冒険をしたナヴィア、綺良々(きらら)、ニィロウ、放浪者、そしてチビドゥリンもだ。彼女らと送った短くて儚い夏の思い出を、美しい背景とともに収めた写真からいつも思い出す。

 テイワットを駆け抜けていると、地に足をつけ世界中を旅している気分になれる。モンド、璃月(りーゆえ)、稲妻、スメールフォンテーヌ、そしてナタ。どの国も、個性が全く被ることがなく、それぞれの魅力がある。

 すべてを忘れ、景色と音楽を楽しむ。何かに迷ったとき、何かにつまずいたときは、テイワットの美しい景色を眺めながら、ゆっくりと各国を巡ってみるのはいかがだろうか。

※1 旅人:『原神』における主人公の通称。転じて本作のプレイヤーやファンのこと。

(文=ことぶきめぐみ

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