
オルツは7月30日、東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てを実施し、同日受理されたと発表した。これを受け、東京証券取引所は同社の株式を2025年8月31日付で上場廃止にすることを決定、整理銘柄に指定した。負債総額は2025年6月30日現在で約24億円にのぼる。
公称2万8000超の有料アカウント、実働は2300未満か
同社は2014年に設立され、AI議事録自動作成ツール「AI GIJIROKU」などで知られるAIベンチャーだ。しかし、同社が7月29日に公表した第三者委員会の調査報告書により、売上の大半が架空計上であった衝撃的な実態が明らかになった。報告書によると、2024年12月期の有価証券報告書で2万8699件と記載されていた有料アカウント数は、2025年7月時点の調査で、実質的な有料会員はわずか5170件、さらにそのうち直近でアクセス記録があったのは2236件だったことが判明した。エンタープライズプランの約1万4000アカウントは有料か無料か特定不能とされているが、報告書は「その大多数は無料会員であることが推察される」と指摘している。
不正の手口は「本件SPスキーム」と名付けられた悪質な循環取引だった。オルツが広告宣伝費や研究開発費の名目で外部業者に資金を支出し、その資金が複数の企業を経由して「スーパーパートナー(SP)」と呼ばれる特定の販売パートナーに渡る。そしてSPは、その受け取った資金を原資としてオルツから「AI GIJIROKU」のライセンスを架空に購入し、売上代金を支払うという流れだ。SPは実質的にライセンス購入の対価を何ら負担していなかった。
この架空スキームにより、2021年6月から2024年12月にかけて売上高は累計で約119億円、広告宣伝費は約115億円、研究開発費は約13億円が過大に計上された。特に2022年12月期と2023年12月期には、それぞれの売上高の91.3%、91.0%が架空だったと指摘されており、事業の実態がほぼなかったことがうかがえる。
報告書は、米倉千貴代表取締役社長や日置友輔取締役CFOら経営幹部が、このスキームの形成・実行に主導的に関与したと認定。売上の拡大と上場を強く志向するあまり、監査法人や主幹事証券会社、東京証券取引所の上場審査などにおいて、事実と異なる説明や改ざんした資料の提出を繰り返していたことも明らかになった。
東京証券取引所は、新規上場申請時に虚偽の情報を記載して上場承認を得ていたことは「宣誓事項に対する重大な違反」にあたるとして、上場廃止という厳しい措置を決定した。オルツは今後、裁判所および監督委員の監督の下で事業を継続しながら、スポンサーを探索し事業の再建を図るとしている。

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