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初代XKは、ジャガー伝統の大型クーペ

こんにちは。クルマを主体としたイラストレーター兼ライターの遠藤イヅルです。年に数回だけやってくる『第5水曜日』に、今見直したいヤングタイマー世代のクルマについて記す当連載。第4回は、『初代ジャガーXK』をお送りします。

【画像】予算300万円で成功者になれる?初代ジャガーXK 全3枚

2025年を迎えたと思っていたら、あっという間に本年3回目の第5水曜日を迎える7月に突入してしまいましたね。早いなあ……。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

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初代ジャガーXKは、長いノーズと流れるようなボディが魅力的だ。    ジャガーランドローバー

それはさておき今回取り上げるのは、1996年から2006年まで生産されたジャガーXKの初代、いわゆるX100と呼ばれるモデルです。戦後まもない1948年に登場したXKシリーズ、Eタイプ(XK-E)、そしてXJS(登場時はXJ-S)と、ジャガーは伝統的に大型クーペを用意してきましたが、XKもまさにそのひとつ。

1989年以降フォード傘下に入ったジャガーにとっても、1975年から作られ続けてきたXJSのリニューアルという重要な役目も負っていました。それは、車名にかつての名車XKがリバイブされたことからもわかります。

全長4.76m、全幅1.83m、全高1.27mという長く、広く、低いプロポーション、そしてロングノーズに長めのリアオーバーハングというサイドビューは、いかにもジャガー・クーペという佇まい。Eタイプのイメージが強く反映されているデザインだと思います。

ボディバリエーションも伝統を継ぎ、クーペとコンバーチブルを設定。クーペのキャビンはとくに流麗で、大型クーペ特有の伸びやかさを湛えていました。広くはないものの実用に足るリアシートを持つ2+2モデルだったのは、前任のXJS譲りです。

優れた内外装デザインとパフォーマンスでヒット作に

一方エンジンに関しては、XJSから大きな変化がありました。最終型のXJSでは4L直6と6L(!)V12を載せていたのですが、XKでは、同時期のXJ(X308)にも搭載された、新開発の『AJ-V8』と呼ばれる4LのV8のみにチェンジ294psをマークしました。

1999年になると、スーパーチャージャーで武装を行った『XKR』を追加。最高出力は自然吸気のノーマルエンジンから81psアップの375psまで強化されていました。

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マイチェンで外観デザインを変え後期モデルとなった2004年式XKR。    ジャガーランドローバー

2002年には排気量を4.2Lに拡大。XK8は304ps、XKRは406psに増強されています。2004年になって外観に大きなアップデートを行い、2006年に2代目XKに後を譲って生産を終了しました。

と、ここまでざっくりと初代XKの歴史を振り返ってきました。初代XKは優れた内外装デザインとパフォーマンスによって世界的に人気を博しヒット作に。日本でもよく見かけた記憶があります。

1996年当時の発売価格は、最廉価でも888万円という高額車。1999年のXKRコンバーチブルは1255万円、2005年頃の最終限定モデルであるXKR4.2-Sコンバーチブルでは、1590万円に達しました。

それにしても、確かに絶対的な価格は高価なものの、1996年時点のXK8クーペが888万円だったのって、現代の価値からするととてもリーズナブルな気がします。

そんな初代XKも生産終了からほぼ20年。発売開始からおおむね30年という時期になりましたが、昨今のクルマの常で極端にレトロに見えることもなく、現代の路上でほかのクルマと同じように使えるのはいうまでもありません。XKも、クルマに詳しくなければ20〜30年前のクルマには見えないはずです。

XKで成功者になれる?

この連載は決してバイヤーズガイドではない(執筆者本人はそう思っている)のですが、とはいえ『今見直すといいよね』という趣旨上、『では買うとどうなの』ということにも多少は触れねばナリマセン(汗)。

そこで有名中古車検索サイトを調べたところ、2025年7月末現在における初代XKの掲載台数はクーペが10台、コンバーチブルが11台で、前期後期、XK8とXKRがいい感じに同程度ミックスされていました。

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ウォールナットで埋め尽くされ、贅を尽くしたXKのインテリア。    ジャガーランドローバー

そしてこの手の大排気量モデルというのは、中古車市場では思った以上に値崩れを起こしているものです。

ということで、やはり驚かされたのはその価格。中古車ゆえ程度から生じる価格差があるのはもちろんなのですが、XKクーペならミニマム150万円〜上限380万円ほどで、平均価格はなんと215万円でした。新車時の価格や圧倒的に高級な内装、ジャガーの大型クーペという性格を考えたら、かなりのバーゲンプライスに感じます。

優雅な存在感を放つXKを見て、300万円しないなんて、多くの人はまず信じないでしょう。ご両親にナイショでXKを買って、実家にサラっと帰ったら、親御さんに「ウチの子は成功したんだなあ」って喜んでもらえること間違いなしです。それも親孝行のひとつだったり?

それなりの覚悟と財力が必要だが、幸せになれるクルマ

XKは安い! と書いてきたものの、では買った後はどうなのか……というと、実はそう甘くないのが高額車やヤングタイマー・ジャガーの世界。決して手放しで乗れない、というのは現実的な話です。

エアコン、オートマチック、パワステという古いクルマあるあるなウィークポイントは当然のこと、ABSなどXK特有のトラブルも出てくることでしょう。あれこれマイナートラブルも続くでしょう。また中古車の場合、XKが本来持っていたあのしなやかな乗り味や乗り心地がどこまで残っているかもわかりません。年間の修理代は安くないはずです。

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後期モデルのXKR。流麗なルーフの造形に惚れ惚れする。    ジャガーランドローバー

とはいえ、とはいえなのです。前述のようにまずイニシャルコストが安い。それなのに、降りて振り返ればそこにはジャガーの、しかも美しすぎるビッグクーペが佇んでいるのです。アイボリーレザーとウォールナットの洪水のような車内に身を潜らせれば、「ああ、いい買い物をした」と思えるのではないでしょうか。

乗り続ける覚悟と、当面の修理代を少しプールできたら、とても幸せな日々が送れそう。ジャガーXKはそんな夢を与えてくれるクルマかもしれません。

さて、次の第5水曜日は10月29日。まだ先だなって思っていたら、きっとすぐに来てしまうのでしょうね。次回のテーマは何にしましょう。決めておかなくちゃ!


予算300万円で成功者になれる?初代ジャガーXKで幸せになりたい【第5水曜日の男、遠藤イヅルの令和的ヤングタイマー列伝:第4回】