
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、炎症やがんがあっても初期症状が出ないケースが多いとされています。SNS上では「肝臓がんは怖い」「父が肝臓がんだった。発見遅くて、進行早い」という内容の声が上がっています。
そもそも、なぜ肝臓がんになるのでしょうか。肝臓がんを引き起こす食生活や対策について、筑波胃腸病院(茨城県つくば市)理事長で消化器外科専門医の鈴木隆二さんに聞きました。
脂肪肝にならないよう要注意
Q.そもそも、なぜ肝臓がんを発症するのでしょうか。発症の原因や主な症状について、教えてください。
鈴木さん「肝臓がんは、肝臓の細胞が異常に増えてしまう病気です。怖いのは『沈黙の臓器』と呼ばれる肝臓が、かなり悪い状態になるまで症状を出さないことです。気付いたときには進行しているケースも少なくありません。
肝臓がんの主な原因は『B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスの長期感染』『大量のアルコール摂取』『肥満に伴う脂肪肝』です。ただし、初期は無症状がほとんどです。だからこそ、日頃からの予防と検診が大切です。ちなみに、次のような症状に気付いたら肝臓がんの疑いがあるため、要注意です」
・食欲が湧かない
・体がだるくて疲れやすい
・体重が急に減った
・皮膚や白目が黄色くなる、いわゆる「黄疸(おうだん)」の症状が出た
Q.肝臓がんの発症リスクを上げる食べ物について、教えてください。例えば、過剰摂取してしまうと肝臓がんになりやすい食べ物はありますか。
鈴木さん「肝臓がんの原因として、ハムやソーセージなどの加工肉の摂取がよく話題になりますが、『加工肉を食べたら肝臓がんになる』という科学的証拠はありません。ただし、加工肉に含まれる亜硝酸塩などの成分が体内に入ると、肝臓の解毒の負担になる可能性があり、過剰摂取は避けたいところです。
医学的に見て、肝臓がんの明確なリスク要因は飲酒です。お酒の飲み過ぎは脂肪肝や肝炎、肝硬変を経て、肝臓がんにつながる可能性があります。
酒の摂取量の目安ですが、ビールに換算すると男性は1日500ミリリットル以内、女性は1日250ミリリットル以内です。できれば『休肝日』を週2日設けましょう。
甘いものや揚げ物など、高脂肪、高糖質の食べ物の過剰摂取が続くと脂肪肝が進行し、最終的に肝臓がんのリスクが高まります。お酒を飲まない人でも脂肪肝になるケースも珍しくありません。健康診断で脂肪肝と指摘された場合、すぐに生活習慣を見直してください」
Q.肝臓がんの発症をできるだけ防ぐには、どのような対策が求められるのでしょうか。
鈴木さん「先述の内容と重なる部分もありますが、次の対策が有効です」
【ワクチン&検査】
・B型肝炎ワクチンの接種
・肝炎ウイルスの検査(特に感染リスクがある人は要チェック)
【お酒は「控えめ」に】
・飲むなら、週に何日か休肝日を作る
【バランスの良い食事】
・野菜や魚、大豆製品の摂取量を増やす
・加工肉や脂っこい食べ物は控えめにする
【運動&体重管理】
週に1回程度のウオーキングから始めても問題ない。脂肪肝の予防につながる
【定期検診】
血液検査や超音波検査(エコー検査)で、肝臓の状態をチェックする
オトナンサー編集部

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