近年の夏は猛暑続きで、夜も暑さと湿気で寝苦しいと感じる人は少なくないと思います。そんな中、SNS上では「おでこと首裏に冷却シートを貼って寝ると気持ちいい」「氷枕で後頭部を冷やすと寝やすい」「冷却シートを貼って熱帯夜を乗り切る」「熱帯夜のときは冷却シートを首と足に貼って寝ています」という内容の声が上がっています。寝るときに体を冷やすのは問題ないのでしょうか。上級睡眠健康指導士の山本智子さんに聞きました。

「頭寒足熱」がポイントに

Q.夏になかなか眠れない場合、どのような原因が考えられるでしょうか。

山本さん「暑さや湿気など寝室の環境の問題もありますし、もしかしたら寝具の素材が暑い時期に向いているものではないという可能性もありますね。

そもそも、暑くて湿度が高いというのは誰でも不快な状況ですよね。これは日中でも寝ているときでも同じで、脳が今の状況を不快と感じてしまうと、覚醒や興奮状態になる交感神経が優位になってしまうんです。眠るときにはリラックス状態になる副交感神経が優位になった方がよいので、眠りにつきにくくなるデメリットがありますね。

これに加えて、価格が安いウレタンや化学繊維を使っている寝具の中には、通気性や吸湿性が低く、汗や熱をうまく吸収したり放出したりできないものも少なくありません。

人間は深部体温の下降とともに眠りにつく仕組みになっているのですが、その体温の低下が妨げられて、質が良い睡眠が取れないといったことも考えられるでしょう」

Q.暑くて眠れないときに、氷枕や冷却シートを使っても問題はないのでしょうか。

山本さん「『体を冷やすのは、あまりよくない』というイメージがあるかもしれませんが、寝苦しいと感じる場合には積極的にそういったアイテムを使っていただきたいですね。私たちは『頭寒足熱』が良いとお伝えしているのですが、これは文字通り、頭を冷やして足を温めるということなんです。

頭部を冷やすと日中フル回転していた脳を落ち着かせるため、先述の深部体温を下げる働きを助けてくれる効果があるんですね。そうすると、スムーズな寝付きにつながるため、トータルの睡眠の質を向上させることにもつながるのです。もしも直接触れている部分が冷た過ぎると感じたら、タオルなどでくるんで心地よい冷たさに調整すると良いですね」

Q.暑くて眠れないときは、まずどのように対処するのが効果的でしょうか。睡眠の質と暑さ対策を両立する方法について、教えてください。

山本さん「一番の解決策としては、寝ている間もエアコンを使うことですね。まずは寝室の温度と湿度を快適にしないと、寝苦しいのを改善するのが難しいです。一度眠れたとしても、途中で何度も起きてしまうといったことにもつながりやすいため、室温でいうと25~26度、湿度は50~60%程度に保てるように設定すると良いと思います。

『エアコンを一晩中つけっ放しだと電気代が気になる』と思うかもしれませんが、最近の夏の夜ってなかなか気温や湿度が下がらないですよね。昔のように日が落ちたら涼しくなるといったことがほとんどないため、そういう意味でも睡眠の質を高めるためには一晩中エアコンをつけるのが理想です。

寝具の素材でいうと、綿や麻などの天然素材がお勧めです。これらの素材はウレタンなどの化学繊維のものよりも吸湿性や通気性に優れるものが多いため、より快適に過ごしたい場合は検討しておくと良いと思います」

オトナンサー編集部

暑くて眠れない場合、冷却シートで頭部を冷やしても大丈夫?