東映、東映ビデオによるムービー(映画)×ステージ(演劇)の融合を目指すメディアミックスプロジェクト「東映ムビ×ステ」で展開されてきた『死神遣いの事件帖』シリーズが、2025年8月7日(木)から始まる舞台公演をもってフィナーレを迎える。

【写真】舞台『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』で死神遣いの久坂幻士郎を演じる鈴木拡樹

本シリーズで主人公の久坂幻士郎を演じるのは、舞台『刀剣乱舞』シリーズや劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season月 下弦の月』など、多くの舞台で活躍する鈴木拡樹さん。これまでの“しにつか”シリーズを振り返りながら、役への思いや印象に残っているエピソードなどを語ってくれた。

■ちゃらんぽらんに見える幻士郎「実は“まじめな部分”が彼のベースなのではないかと思っている」

――鈴木さんは“しにつか”シリーズで主人公の久坂幻士郎を演じてこられました。今回の舞台『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』でファイナルを迎えることについてどのように感じていらっしゃいますか?

鈴木拡樹】まず、“ファイナル”と銘打てるところまでこのシリーズを続けられたことがうれしいですし、応援してくださった方々に対して感謝の気持ちでいっぱいです。本作で一区切りになると思うので、チーム全員で全力を尽くしながら挑みたいです。

――本作は、映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』から約半年後の世界が舞台となっています。まだ台本は完成していない(取材時)そうですが、映画のラストで冥界に帰った十蘭と現世に生きる幻士郎の二人が再びそろう姿が見られると思うとワクワクします。

鈴木拡樹】そこはぜひ楽しみにしていただきたいです。映画のラストで“永遠のお別れ”のような雰囲気が二人の間に漂っていましたからね(笑)。

――死神遣いの幻士郎と死神の十蘭が今回共闘するのか、といったところも楽しみです。

鈴木拡樹】共闘シーンもそうですが、本作では幻士郎と十蘭の出会いのシーンも描かれるので、そこも大きな見どころになってくるのではないかなと。十蘭はこれまでのシリーズをとおして性格がかなり人間寄りになってきたというか、成長する過程で人間のことを少しずつ理解できるようになってきたと思うんです。

でも幻士郎と出会ったころはまだ死神寄りの考え方や言動をしているはずなので、その違いを安井(謙太郎)くんがどう変化をつけて演じてくれるのかすごく楽しみです。

――十蘭役の安井さんとはシリーズがファイナルを迎えることについて何かお話はされましたか?

鈴木拡樹】安井くんと食事に行ったときに「ファイナルだと思うと寂しいね」「イベントなどでまた会えたらいいね」といったことは話しました。ずっとバディとしてやってきたので、何かの機会で彼とまたご一緒できたらいいなと思っています。

――十蘭と同じように、幻士郎の過去と現在の変化も本作で見られるのではないかと期待しています。

鈴木拡樹】幻士郎は基本的にちゃらんぽらんで(笑)、あまりブレない性格だと思っているんです。でも、相棒の変化に少なからず幻士郎も影響を受けているはずなので、今回あらためて彼の原点を再確認できると思うと非常に楽しみですね。

――一見ちゃらんぽらんに見える幻士郎ですが、その一方で義理人情に厚く正義感もあって、事件の推理までできてしまうところに魅力を感じます。

鈴木拡樹】実は“まじめな部分”が彼のベースなのではないかと僕は思っているんです。幻士郎の父・衒太夫は当代一の切れ者で、父親にはどうしても敵わないというあきらめにも似た気持ちから少しずつああいう性格になってしまったのではないかと。とてもいい加減な人に見えるけれど、ふとしたときに“真の強さ”や“人に対する優しさ”が漏れ出てしまうのが幻士郎らしさなのかなと思います。

■シリーズを重ねていく中で「幻士郎の父に対するトラウマを実際に感じることができた」

――先ほど仰っていた“父親には敵わない”という気持ちから、ちゃらんぽらんな性格になってしまった幻士郎を表現するうえでご苦労された部分があれば教えていただけますか?

鈴木拡樹】恐らく、ちゃらんぽらんな性格を装うことで幻士郎は自分の身を守っていたと思うんです。映画の1作目『死神遣いの事件帖‐傀儡夜曲‐』のときもそういった部分を表現しようと意識しながら演じましたが、振り返ってみると、シリーズを重ねていく中でじわじわと滲み出てきたような気もします。

過去に衒太夫が登場する舞台もありましたが、そのときに幻士郎の父に対するトラウマを実際に感じることができたので、その経験が大きかったように思います。

――“ちゃらんぽらんを装っていた”と聞くとちょっと切ない気持ちになりますね。

鈴木拡樹】最初は装っていたけれど、だんだんとそれが自分の性格の一部になったのだと思います。最近はちゃらんぽらん度が増し過ぎのような気もしますけれど(笑)。

――確かにそうかもしれません(笑)。鈴木さんにとって幻士郎の一番魅力的だと思う部分はどんなところでしょうか?

鈴木拡樹】映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』で十蘭との別れ際に「さっさといっちまえよ!帰れよ!」みたいなことを幻士郎は言いますが、心の内ではその真逆の思いを抱えているんですよね。そこに幻士郎の優しさを感じましたし、すてきだなと思いました。あと、“人情に厚い”ところも魅力的だと思います。愚痴を言いながらも結局は人助けをするところが幻士郎らしくて好きですね。

――これまでの本シリーズを振り返ってみて、印象に残っているエピソードを教えていただけますか?

鈴木拡樹】『死神遣いの事件帖‐傀儡夜曲‐』を撮っているときから「このシリーズの一番のアイドルは十蘭ドール(十蘭が憑いている傀儡人形)になりそうだね」とチームのみんなで予想していたんです。そしたらある日、僕のイベントでお客様が十蘭ドールのマスコット人形を「連れてきました」と言って見せてくださって。そのときに作品への愛を感じてうれしい気持ちになったのを覚えています。

――本シリーズを観ると、十蘭ドールのマスコットを持ち歩きたくなる気持ちがわかります!

鈴木拡樹】とってもかわいいドールですしマスコットとして最高ですよね。「魔進戦隊キラメイジャー」という戦隊ヒーロー作品の劇中劇でヒロインが十蘭ドールを持っているシーンがあるのですが、そういうサプライズも楽しいなと思います。

■「“お芝居って楽しいんだな”とあらためて気づかされた」少年社中の舞台

――映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』に出演された生駒里奈さんに別の作品でお話を伺った際に、「少年社中の舞台が自分を変えるきっかけをくれた」と仰っていました。鈴木さんは少年社中(本作の脚本&演出を担当する毛利亘宏の劇団)と何度もお仕事されていますが、映画の現場で生駒さんと少年社中について何かお話はされましたか?

鈴木拡樹】僕も生駒さんとまったく同じで、毛利さんの作品を見て舞台のお仕事に挑戦するようになったので、似たような経験をされた生駒さんとの共演がうれしかったですし、映画の撮影中は少年社中の話で盛り上がることが多々ありました。

――少年社中や毛利さんとのお仕事のおもしろさをどんなところに感じますか?

鈴木拡樹】毛利さんが手掛ける舞台作品は、生の芝居の迫力やメッセージの伝え方が圧倒的で、そこにすごく惹かれました。劇団名に“少年”と入っていますが、まさに子ども心を思い出させてくれるような“解放的な芝居”が見られるのがこの劇団のカラーでもあるのかなと。過去に何度か少年社中の舞台に立たせていただきましたが、そのときに“お芝居って楽しいんだな”とあらためて気づかされましたし、なによりお客様が楽しそうにしているのが伝わってきたことがうれしかったというか。

どんなメッセージを届けるか、ストーリーをどう伝えるかも大事ですが、それよりも観客の皆さんにどう楽しんでいただくかを深く考えるきっかけをいただいたのが少年社中の舞台だったので、僕にとって毛利さんとの出会いは大きかったです。

――今後、毛利さんとはどんな作品でタッグを組んでみたいですか?

鈴木拡樹】昨年、少年社中第42回公演の『テンペスト』でご一緒したのですが、シェイクスピア作品をすごくおもしろくアレンジしていて楽しかったので、またそういった戯曲ものの作品でお声がけいただけたらいいなと。あと、毛利さん書き下ろしの作品もすごく好きなので、毛利さんが自由に書かれた世界観をいち観客として見てみたいですし、出演できたら最高だなと思います。

――最後に、本作を通して挑戦してみたいことがあれば教えていただけますか?

鈴木拡樹】幻士郎は探偵なのですが、映画『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』では推理をするシーンがなかったんです。普段はちゃらんぽらんな幻士郎が探偵としての本領を発揮するのは推理をするシーンですから、もしも舞台で推理をするシーンがあるとしたら、そこは大きな見せ場になるのではないかなと期待しています。

舞台では映像作品とはまた違った緊張感や臨場感を出せると思いますし、新たな挑戦になったらいいですよね。ただ、推理しただけでは問題が解決しないのが“しにつか”のおもしろいところで、おそらく推理パートのあとはバトルを繰り広げる展開になるはず(笑)。そこも含めて楽しみにしていただけたらうれしいです。

取材・文=奥村百恵

◆スタイリスト:中村美保

◆ヘアメイク:AKI

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1_MG_3161_2/撮影=三橋優美子