
販売終了から24年の時を経て復活
6代目となる新型『ホンダ・プレリュード』は、前作の販売終了から実に24年の時を経て復活しました。
【画像】ついにティザー開始!新型ホンダ・プレリュードのプロトタイプ詳細 全61枚
個人的には、やはり低くシャープなデザインで人気だった2、3代目の印象が強く、まだ子供でしたがカッコいいCMも良かったです。当時『デートカー』とも呼ばれていましたが、私より上の世代の方はより思い入れのあるクルマではないでしょうか。
新型プレリュードの開発コンセプトは『UNLIMITED GLIDE どこまでも行きたくなる気持ちよさ×非日常のときめき』です。今回、開発責任者やデザイナーの方からプレゼンを受ける機会を得て、『スペシャルティカー』というプレリュードの価値を再確認しました。
全体のプレゼンを聞いて、まず開発コンセプトがエクステリア、インテリア、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)のディテールに至るまで一気通貫していることに感銘を受けました。
コンセプトのイメージ写真にグライダーを使っていたのですが、そのイメージが内外装で一貫しています。長期に渡る自動車開発の現場では、市場動向の変化などでコンセプトが開発途中で決まることもよくあります。プレリュードも例外では無かった様ですが、そのコンセプトの強いメッセージ性のおかげで統一感あるデザインに仕上がっていました。
自動車開発の難しいことのひとつに、『各部品が異なった時間軸で動く』ことが挙げられます。例えばシート表皮などは、新規開発するにはかなり初期に決まってないと間に合わなかったり、逆にバンパーなどの樹脂部品は比較的余裕があったり。ですので1台のクルマとしてまとまって見えるのは、実は難しい事なんです。
期待以上にスタンスの良いエクステリア
エクステリアデザインのテーマは『GLIDING CROSS STANCE』ということで、プレゼンパネルにはグライダーの絵を載せていました。
今回実車をしっかり見ることが出来たのですが、思いのほかスタンス(踏ん張り感)がしっかり表現された基本立体だなと感じました。プラン(上面)から見て前後のボリュームをクロスさせることでタイヤへの意識が強調されています。このようなダイナミックな立体構成は、ホンダでは珍しいのではないでしょうか。
本田技研工業
特にリアまわりは、絞り込まれたキャビンと大胆に張り出したフェンダーで、そのスタンスの良さが最も出ています。またスポーツカーのような筋肉質な表現ではなく、立体の繋ぎをスムーズにした『スペシャルティカー』としてのクリーンなイメージも好印象でした。
サイドビューを見ると、ルーフのピークをかなり前方に寄せた特徴的なシルエットになっています。ここは定石通りにするならばピークをもっと後方に移し、フロントガラス上端あたりを抑えることで、よりキャビンの小ささを表現できるのですが、ここはデザインモチーフと視界、バランスなどを総合的に考慮して決めたと担当デザイナーが語ってくれました。
クルマのルーフラインというのは、ほんの少しの違いで印象が大きく変わる部位ですが、この工夫のおかけでより伸びやかな印象が出ています。
フロントまわりは、ここも伸びやかな印象になるようにバンパーコーナー部を目立たせないデザインをしています。オーバーハングの長いFFレイアウトのクルマの場合、通常ならコーナー部に開口やフォグランプなどのアイキャッチや造形の切り替えなどを持ってきてクルマをワイドに見せるのが一般的ですが、ここもグライダーというモチーフを初志貫徹する意識を感じました。
ただ、ビューによっては腰高感を感じるので、例えばよりアグレッシブなデザインのグレード(タイプR?)を見てみたくなりましたね。
開放感と包まれ感が同居されたインテリア
インテリアデザインのテーマは『GLIDING COCKPIT』ということで、こちらもグライダーを意識したデザインになっています。
座ってみるとグライダーのキャノビー感と言いますか、視界の良さが感じられました。物理的な良さというよりも、整理されたデザインのおかげでストレスのないドライビングが出来そうな印象です。
担当デザイナーに伺ったところ、視界の追求でAピラー付け根のフロントガラスセラミック(外周の黒色部)の角Rまでこだわったそうです。このあたりは様々な制約で自由度が少ないと想像出来ますが、ここにものづくりの『こだわり』が感じられました。
また、室内から見てドアトリムの流れがフロントフェンダーまでシームレスに繋がっている印象もあり、これらのおかげで整理された空間になっているのだと感じます。
インパネはトレンドである横基調のデザインなのですが、実は中身が他車種と共用ということで、レイアウトの自由度はなかったそうです。それでもスペシャルティカーに相応しい質感になるように各部の構成、断面からステッチに至るまで拘っているのが伝わりました。
特にインパネの中段やセンターコンソール、ドアアームレストに表皮を巻いているので包まれ感があり、開放感と同時に安心感もある空間に仕上がっています。
現在、世界の自動車市場はご承知の通りSUVが一番の人気であり、クーペは縮小しています。そのような市場の中で、敢えてプレリュードを復活させるのはチャレンジングなことですが、近年はコモディティー的な商品が多いホンダにとって、上手くいけば最高の広告塔になりうるクルマだと思いました。

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