沖縄県北部に新たなテーマパーク「ジャングリア沖縄」が開業しました。大自然や恐竜をテーマにしたこの施設には、初日から多くの観光客が訪れ、にぎわいを見せたと報じられています。

一方で注目を集めているのが、「国内客」と「海外客」で異なる入場料金を設定している点です。1Dayパスの料金は、国内在住者が大人6930円、訪日外国人は8800円。国内の施設としては異例の「二重価格」制度となっています。

海外では、カンボジアアンコールワットフランスルーブル美術館など、多くの観光地で外国人向けに高めの入場料を設定する「二重価格」が存在します。

こうした制度は、観光収入を確保したり、トイレやごみ処理などの公共インフラ維持費にあてる目的があるとされます。

国内でも、インバウンド需要を背景に、飲食店で外国人向け価格を設定するケースが散見されます。また、兵庫県姫路市は、世界遺産姫路城」の入場料について、2026年3月から市民と市民以外で分ける「二重価格」の導入を予定しています。

こうした中、ジャングリア沖縄の「二重価格」をめぐっては、SNSで「差別では」といった懸念の声が上がる一方で、「経済効果があるからどんどんやるべき」といった肯定的な意見も見られます。

外国人観光客に対して国内客と異なる価格を設定することは、法的に問題ないのでしょうか。金田万作弁護士に聞きました。

●差別として違法になる可能性は低い

──国内客と海外客で異なるチケット価格を設定することは、法的な問題はありませんか。不当な差別や、国籍による取り扱いとみなされるおそれは?

事業者には「営業の自由」が認められており、料金の設定も原則としてその自由です。ただし、実質的な人種差別に該当するなど、社会的に許容される限度を超える不合理な差別的扱いは許されません。

なお、「公の施設」については、地方自治法で、正当な理由なく住民の利用を拒んだり、不当な差別的扱いをしたりすることが禁じられています。公共性が高い施設では、この考えが適用される場合があります。

しかし、ジャングリア沖縄は、民間施設であり、公共性が高い施設とはいえません。そのため、外国人という属性のみを理由に異なる価格設定をおこなっても、その価格差が合理的であれば、「不合理な差別」とは評価されず、違法となる可能性は低いと考えます。

●景品表示法との関係は?

──このような「二重価格」は、景品表示法や消費者契約法の観点から問題になることは?

景品表示法では、実際には外国人向け価格での販売がほとんど行われていないのに、外国人向けの価格(比較対照価格)を設定し、日本人向け価格の安さを強調して、一般消費者に誤認を与える場合は「二重価格表示」として不当表示に該当するおそれがあります。

しかし、ジャングリア沖縄では、外国人向け価格での販売は普通におこなわれているでしょうし、日本人向け価格の宣伝が過剰になっているわけでもないため、この点で問題になる可能性は低いでしょう。

消費者契約法との関係でも、今回のケースが問題となることは考えにくいと思います。

●「二重価格」 設定には説明責任も

──今後、国内の観光地でも「二重価格」の導入が増える可能性があります。事業者が導入する際に注意すべき点は?

料金に差を設ける以上、不合理な差別とならないように、その目的や理由について、事業者は一定の説明責任を負うことになります。 法律上、「二重価格」の表示方法や根拠の明示について厳格なルールはありませんが、日本人・外国人双方に「不合理な差別」と受け取られないよう、利用者の理解を得ることが重要です。

【取材協力弁護士】
金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士
第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。投資被害やクレジット・リース関連など複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセ情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成している。
事務所名:笠井・金田法律事務所
事務所URL:http://kasai-law.com

ジャングリア沖縄、海外客は入場料高め「二重価格」は差別?賛否も…法的問題は?