スタッド・ランスは2024−25シーズンのリーグ・アンで16位と低迷し、昇降格プレーオフでメスに敗れ、まさかのリーグ・ドゥ降格となった。5月30日の降格決定以降、伊東純也、中村敬斗、関根大輝の日本代表トリオの去就が注目されているが、今のところは全員が残留している状態だ。

 ただ、普通に考えれば、欧州で目覚ましい実績を残してきた伊東が2部でプレーするとは考えにくい。2019年1月の欧州挑戦以降、5シーズンを過ごしたベルギー1部・ヘンクでは18−19シーズンのリーグ制覇、UEFAチャンピオンズリーグ参戦を経験。2022年夏に赴いたスタッド・ランスでも、23−24シーズンはアシストランキング2位という傑出した成績を残している。32歳という年齢が一つネックと言われるが、一部報道ではさまざまなクラブから興味を示されている様子だ。古巣ヘンク復帰の可能性も一部現地メディアで報じられている。

「もし2部でやるとなったらやるしかない。いろいろなものを加味して、どうするか決めていきたいと思います」と本人は7月30日の古巣・柏レイソルとの親善試合後にコメント。まだ去就問題の結論が出ていないという。

 どういう身の振り方を選ぶにしろ、今の伊東が最優先に考えなければいけないのが、足首負傷の回復とコンディションを上げることだ。4月28日のモンペリエ戦で負傷し、そこからプレーオフ、フランスカップ決勝をだましだましの状態で消化することになった。6月の日本代表活動は免除となり、十分に休みを取れたはずだったが、7月末になっても痛みが引かないというのだ。今回の柏戦も後半45分間プレーしたが、痛みの影響なのか、彼本来の爆発的な加速や個の打開力が影を潜め、ミスも多かった。

「今日は思ったより痛かったですね。(27日のモンテディオ)山形戦の時は心肺がきつかった。2カ月くらい練習をしてなくて、そのまま試合だったんで。でも、今回はやっているうちに痛くなってしまった」と伊東は顔を曇らせた。後半29分にスタッド・ランスが得たPKのシーンも、エースである彼が蹴るかと思われたが、回避することになった。「あそこまで行くのも面倒くさかったんで(苦笑)。別に蹴りたくもなかった。関根が『蹴りなよ』って言ったんですけど、もう行く気もなかったですね」と伊東は語っており、ケガの状態は想像以上に良くない模様だ。

 仮に移籍が日本ツアー後に決まったとしても、すぐに公式戦に出られる保証はない。主要リーグは8月中旬に開幕し、その時点までにフル稼働できる状態に引き上げられるかどうかは不透明だ。9月以降は日本代表活動もあり、UEFAの大会に参戦する可能性もある。もともとの伊東は超過密日程を強いられたとしても、強靭なメンタリティとタフな運動量で乗り切れる選手だったが、果たしてそのレベルにいつ戻れるのか。そこは大いに気になる点である。

「たぶん、次のワールドカップが最後になると思うので、選ばれるようにコンディションを上げていかないといけない。昨年は目に見える結果を出せなかったんで、結果も出さないと。プレー自体は別に普通だったと思いますけど、そういうところを出していきたいですね」と本人もより数字にこだわる構えだ。確かにフランスに赴いてからの3シーズンは6点、3点、4点と得点数がやや物足りないところもある。アシストでは上位を占めてきたが「ここ一番でゴールを奪えるアタッカー」として異彩を放つことができれば、30代のベテラン選手という見方をされることはなくなるだろう。

 この日の試合では、かつての盟友・瀬川祐輔が決勝弾を叩き出した。瀬川は伊東の一つ下の31歳。6月に川崎フロンターレから復帰し、リカルド・ロドリゲス監督のもとで新たな1トップ像を作ろうと奮闘している真っ最中だ。「(瀬川は)ラッキーで点決めてた(笑)。いいクロスの入りで、“らしさ”があったんじゃないかなと思います」と伊東は独特の言い回しで称賛していたが、自分も得点という形でアピールできるようにならなければいけない。それが集大成となる1年後の大舞台に近づくための必須条件である。

 2022年カタール大会では右サイドハーフ、ウイングバック、シャドー、トップと多彩な役割で起用され、フィールドプレーヤーで最も出場時間が長かった。しかし、目に見える結果はスペイン戦の堂安律の同点弾アシストだけ。「彼ならもっとできる」という印象が拭えなかった。だからこそ、次は伊東が攻撃陣をけん引しなければならない。W杯優勝という壮大な目標に向かっていくためにも、彼の力は必要負不可欠だ。ここからの去就、ケガの状態含め、伊東純也の今後の動向を慎重に見守っていくべきだろう。

取材・文=元川悦子

[写真]=柳澤健太