
7月30日にロシア・カムチャツカ半島付近で発生した地震の影響で31日正午現在も北海道から沖縄にかけて津波注意報が継続している。そんな中、テレビやネットのニュースでにわかに注目を集めたのが、商船三井が運航するフェリー「さんふらわあ」だ。朝には乗客下船のニュースも流れたが、長い夜を一体どう過ごしたのか?
注目を集めたきっかけは、30日に大洗へ入港予定だった「さんふらわあ さっぽろ」船内に流れたアナウンスだった。ベテラン船長が、海外からの津波は注意報が解除されて入港できるまでかなりの時間がかかるとして、乗客に「覚悟してください」と伝えたという。
内容は不穏ながらも船長の経験に裏付けられた説得力のある言葉は、乗客のXユーザーに紹介されて注目の的に。X上では、さんふらわあのスタッフや乗客を応援する投稿が相次いだ。すると今度はフェリーや船旅の魅力を語る人なども出てきて「さんふらわあ」は一時トレンド入りした。
一方で、入港できないさんふらわあが洋上でどうしているかAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)を使って調べる人たちもいた。AISは、船の識別符号やGPSによる位置情報、速力などの情報をVHF帯の電波で自動送受信し、船舶同士の衝突防止などに役立てるシステム。2002年以降、国際的に大型船舶などへの搭載が義務づけられている。
現在では、AIS情報を基に船舶の位置や情報を知らせるWebサイトやスマホアプリなどもあり、一般ユーザーでも利用できる。これらを使ったXの投稿によると、大洗港沖にいたさんふらわあ さっぽろは、洋上に大きな円を描くように航行していたようだ。
「まもなく2周目突入。船員さん頼んだぞ」「グルグルしてる」。そんな実況は夜になっても続いた。「大洗沖にて定常円旋回3周目に突入」「さんふらわあさっぽろ、大洗沖で5周も」「さんふらわあばかり取り上げられますが、シルバーフェリーや太平洋フェリーも待機中です」……。
船内では、無料の食事も振る舞われ、普段と変わらないサービスも。きめ細かい対応もあってか、少なくともX上では、船員やAC(アテンダントクルー)に対する感謝や応援の声はあっても、文句を言ったりする人はみられない。それは他のフェリーや客船でも同様のようだ。
31日午前9時ごろ、さんふらわあ さっぽろは台風9号の接近なども考慮して入港が認められ、ようやく乗客を降ろすことができた。冒頭の船長の言葉を紹介したXユーザーの一人は「下船がむしろ寂しくなってきました」と投稿。それを見た他のユーザーから「1泊の値段で2泊できたのはうらやましい」といった声も上がっていた。

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