
◆わずか1年で地元の人気者に
こちらの動画に出演したのは、リヤカーおにぎり屋『that’s rice』を営む東果穂さん(27)。この動画をきっかけに、地元のニュース番組や新聞社など多くのメディアに取り上げられることになり、一気に地元で話題の人となった。
今年1月、日刊SPA!でも取材をおこない、リヤカーおにぎり屋を始めたきっかけや、一気に知名度を上げたことの心境などを伺った。この時点でもかなり話題になっていた東さんだが、ここからさらに飛躍していったのだ。
さまざまなメディア出演だけでなく、女性起業家として山口県の高校での講演会、ふりかけ「ゆかり」でお馴染みの三島食品とのコラボ、そしてUNIQLOとのコラボなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している。
そんな彼女を襲ったのが世間でも話題になった「米の高騰問題」。おにぎり屋を営む彼女にとって、その影響は計り知れなかったようだ。
◆米が高騰する緊急事態…
リヤカーでの移動販売は人々の心をつかんだが、米の値上がりにより、続けたくても続けられない苦しい現実が迫っていたのである。改めて東さんに話を伺った。
「契約している農家さんからお米を買っているんですが、お米の価格が今、始めた当初の3倍ぐらいに上がってしまいました。1人で作る量も1日200個くらいが限界なので、これでは『すべて売れても採算が合わない』と言っても過言ではない状況になってしまったんです。このままでは続けられないと判断し、リヤカー販売の営業を8月3日で終了することにしました」
SNSで話題を集め、リヤカー販売が軌道に乗ってきたこのタイミングで訪れた緊急事態。米だけでなく、鮭や海苔の価格も上がり、経営が難しくなったようだ。
◆「ピンチをチャンスに変える」思い切った行動に
残念ながらリヤカー販売は終了することを決めた東さんだが、彼女の挑戦はまだ始まったばかり。次のステップに向けて、このピンチをチャンスに変えるべく、思い切った行動に出た。
「広島でそのまま営業を終わらせるよりも価値のあることをしようと思い、残っているお米を使って5月から全国ツアーをおこなうことにしました。県外にもSNSを通じてずっと応援してくださった方もいらっしゃるので、私から会いに行く『感謝の旅』をしようと思ったんです。正直、宿泊や移動費などを考えると赤字ですけど、今だからこそできる価値のある旅に絶対になると信じて、思い切って旅を開始しました」
全国各地にキッチンの貸し出しを呼びかけると、次々と手が上がり、満を持して全国ツアーがスタート。5月の福岡を皮切りに、愛媛、大阪、東京、宮城、愛知と6つの都市で各2〜3日間の販売をおこなった。
「いろんな地域でSNSで見てくださった方々が来てくださり、行列ができることもあったんです! その列を見て、『なんか見たことがある!』と言って購入した方が、美味しかったから2日目も来てくれたりもして、とてもありがたいなと思いました。なかには『広島行くよりは近いから』と、かなり遠方からきてくださる方もいらっしゃいまして、本当に感謝感謝の旅となりましたね……。これも米の高騰という逆境があったからこそ思いついた企画だったので、ポジティブに切り替えることは大切だなと改めて勉強になりました」
◆リヤカー販売終了後は店舗を開業へ
全国6都市を巡り、「さらに皆さんへの感謝の気持ちが強くなりました」と話す東さん。そして8月1日(金)からの3日間、地元広島の「東千田町公園」で、最後のリヤカー販売をおこなう。リヤカーおにぎり屋としてバズった東さんは、その後どういった未来を描いているのだろうか。
「リヤカー販売は終わりますが、おにぎりは続けたいです! 次は店舗での『おにぎり屋さん』を考えていまして、お味噌汁や生ものなど、リヤカーではできなかったメニューも用意しようと思っています。お米の高騰は9月で落ち着くという見立てもあるので、それまでは次に向けた準備をして、できれば冬までにはオープンしたいですね。オシャレな内装をイメージしていまして、今までにないようなおにぎり屋さんにしたいなと思っています」
◆一番の恩返しは「ザッツライスが大きくなること」
最後に東さんは「1番の恩返しはザッツライスというビジネスが大きくなることだと思っているので、今回のことを勉強したことを胸に、もっとストイックに頑張りたいです」と話した。
最近ではYouTubeのライブ配信を通じて海外のファンも急増している東さん。突然訪れた逆境をしなやかに乗り越え、自分らしく道を切り拓いていく東さんの姿に、地元広島の人だけでなく、多くの人が勇気をもらっている。リヤカー販売を卒業し、次なるステージへと進む彼女の挑戦から、今後も目が離せない。
取材・文/セールス森田
【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント

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