
NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』で、やなせたかしをモデルにした柳井喬(演・北村匠海)の母親・登美子を演じて好評の松嶋菜々子(51)。北村との母息子役は実は2度目で、変わらぬ美麗さに視聴者たちは毎回魅了され続けている。
松嶋は1973年10月13日生まれ、神奈川県横浜市出身。16歳でファッション雑誌「ViVi」の読者モデルにスカウトされ、猛反対した両親を説得して芸能事務所入りを決めた。第17代旭化成せんいキャンペーンモデルにも抜擢され、19歳で「ViVi」の専属モデルに。同年、加山雄三主演のドラマ『社長になった若大将』(92年)で女優デビューするなど、順調にキャリアをスタートした。
「私はあなた達のメス豚よ!」「ああ、当たってる!」と熱演最初のブレイクは意外な形で、22歳の時に『とんねるずのみなさんのおかげです。』(95年)内のミニコント・ドラマ『近未来警察072』にレギュラー出演したことだった。今では考えられないが、「私はあなた達のメス豚よ!」「ああ、当たってる!」などの卑猥なセリフを連発し、「きれいなお姉さんがこんなことを……」というギャップが話題になった。
このアイディアはとんねるずから出されたもので、見るからにモデル美女の松嶋がAVばりのセリフを吐く様子を、石橋貴明と木梨憲武がVTRで笑いながら観るひと幕もあった。このことが原因で後年、松嶋ととんねるずの不仲説がまことしやかに語られ「共演NG」とのうわさが流れたこともある。
現在の清純派路線への転機となったのは、22歳で主演したNHK朝の連続テレビ小説『ひまわり』(96年)。バブル崩壊で大手食品会社を退職後、弁護士を志すヒロインを演じ、一躍全国区となった。
このドラマで共演した上川隆也は当時「共演者キラー」と呼ばれており、松嶋とも半同棲のうわさが立ったが、決定的なスクープには至らなかった。
24歳で松下電工(現・パナソニック)のイメージキャラクターとして水野真紀に続く「きれいなおねえさん」の2代目に抜擢され、同年には好感度ナンバーワン女優に選ばれた。
出会った当初、反町隆史は稲森いずみと交際していたが…仕事の上でも恋愛の面でも最大の転機になったのが、大ヒットドラマ『GTO』への出演だ。作品の中で恋仲になる主演の反町隆史と交際をスタートし、同い年の2人はともに27歳の時に入籍し、ふたり揃って報告記者会見も開いた。
じつは反町は『GTO』出演時は稲森いずみとの交際が報道されており、稲森の実家に遊びに行くほど深い関係だったという。ところがドラマで共演した松嶋に完全ひと目惚れして猛烈アタックを開始した。しかし松嶋は稲森との関係を知っていたため答えを保留し、反町が1年かけて稲森と別れた後に再度アプローチしたのを受け入れたという経緯がある。
芸能界における成功ぶりや美麗なビジュアルに目を奪われがちだが、この筋を通す律儀さは一貫している。
会見で松嶋は反町との結婚を決意した理由をこう答えている。
「うそをつかない……つけないではなくて(笑)、うそのない、本当にすべてにまっすぐなところです。(プロポーズの言葉は)覚えていますが、それは内緒にします。(将来を共にしてもいいと決めたのは)付き合い始めて、すぐです」
16歳で自分に声をかけてくれたスカウトマンや、事務所でついてくれたマネージャーなど、松嶋は相手のキャリアや年齢、性別を問わず素直にアドバイスに従う感性の持ち主だった。反町を選んだ感性が間違っていなかったことを証明するかのように、夫婦揃って不倫などのスキャンダルもいっさいなく、芸能界きってのおしどり夫婦と呼ばれている。
結婚後も仕事は順調で、28歳でNHK大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語』(02年)に唐沢寿明とW主演し、この時は織田信長役だった反町と夫婦初共演も果たしている。2000年の『やまとなでしこで』最高視聴率34.2%を記録し、「高視聴率女優」の名をほしいままにした。
30歳で長女、34歳で次女を出産するがどちらもわずかな産休期間ですぐに仕事復帰し、38歳での本格復帰作『家政婦のミタ』(11年)はGTOと同じ脚本家・遊川和彦とのコンビで日本テレビのドラマ史上初の視聴率40%(最終回)を獲得。ブランクどころか軽々とキャリアハイを更新し続けている。
キャリア最大のトラブル「ドーベルマン事件」も乗り越え…キャリアの中で唯一とも言えるトラブルは松嶋が37歳のときに起きている。当時6歳の長女が散歩に連れていた愛犬のドーベルマンが、同じマンションの住人に噛みつくという事件が発生。駆けつけた松嶋らが対処したが被害者は負傷し、後に一家が転居している。
マスコミに「ドーベルマン事件」と書き立てられながらも松嶋と反町は謝罪や慰謝料の支払いなどにも真摯に対応し、事態は終息を見ている。
プライベートでは嵐の松本潤と縁が深く、『花より男子』(05年)を皮切りに、『ラッキーセブン』(12年)、『となりのチカラ』(22年)、そして大河ドラマ『どうする家康』(23年)の4作で共演。
「実の姉」「母親」と肉親ポジションも2度あり、プライベートでも姉弟のような関係性だという。
『ラッキーセブン』の現場では、共演した大泉洋が現場への差し入れとして「北海道のスープカレー」を何度も用意していたが、現場スタッフの「別の物も食べたい」という声を聞きつけた松嶋がとんねるずに相談→とんねるずから大泉に伝わって「大間のマグロ」に変わったというエピソードがある。
大泉はこれを笑い話として「差し入れ総額が100万円以上になった」と何度も紹介している。『とんねるずのみなさんのおかげです。』以降、共演NG説が囁かれることもあったが、松嶋ととんねるずの関係性が続いていることも明らかになった。
50歳で迎えた2023年11月22日の「いい夫婦の日」に、反町とともに資生堂「SHISEIDO MEN」のアンバサダーとしてCMに夫婦初共演した時は「理想の夫婦」と大きな話題になり、今年7月27日から流れる新CM「SHISEIDO MEN 新アルティミューン」でも再共演することが発表されている。
松嶋は反町について「これまでいろいろな経験をしてきた積み重ねが、自信となって、それが自然と魅力として表れているように感じます」とコメント。『あんぱん』での自由奔放な登美子役の印象が強いだけに、そのギャップもファンの心をつかまえている。
順調すぎるキャリアを歩んできた松嶋がどんな次のステップを見せてくれるのか、まだまだ目が離せない。
(岩佐 陽一)

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