パナソニックホールディングスが発表した2025年度第1四半期(2025年4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比10.6%減の1兆8966億円、営業利益は3.8%増の869億円、調整後営業利益は8.5%増の915億円、税引前利益は13.1%減の909億円、当期純利益は1.2%増の714億円となった。

パナソニックホールディングス 執行役員 グループCFOの和仁古 明氏は、「すべてのセグメントにおいて増収増益になったものの、オートモーティブの非連結化により、全体としては減収になった。オートモーティブを除くと、売上高は前年同期比2%の増収になる」と総括した。

第1四半期における米国関税の影響は、58億円のマイナスとなり、「エナジーの車載電池の部材やセル、蓄電システムが影響。コネクトではアビオニクスの機内エンターテイメントシステムが影響している」という。

セグメント別業績をみると、くらし事業は、売上高は前年同期比2%減の8461億円、調整後営業利益は115億円増の338億円。くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比4%減の1946億円、調整後営業利益は43億円増の130億円。空質空調社の売上高は前年同期比4%減の2530億円、調整後営業利益は72億円増の136億円。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比8%減の965億円、調整後営業利益は14億円減の38億円エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比5%増の2417億円、調整後営業利益は14億円増の119億円となった。

「家電や空質空調、国内電材が堅調に推移したが、コールドチェーンソリューションズ社は、前年の特需の反動もあり、減収減益となった」という。

家電については、日本が前年並みの実績となったものの、洗濯機が好調であったほか、調理家電の体質強化も進んだという。中国では補助金効果もあり増販。空質空調は欧州A2Wが増販となったほか、国内のエアコン事業は猛暑の影響もあり、前年同期比20%増以上の実績。電材は国内中心に増販になっているという。

コネクトの売上高は前年同期比4%増の3035億円、調整後営業利益は12億円増の62億円。「ICTや中国のEV需要を捉えたプロセスオートメーションのほか、モバイルソリューションズや現場ソリューション、BlueYonderが増販。だが、「BlueYonderでは、セキュリティ対策などの戦略投資の増加もあり、為替影響を除いて65億円の減益になっている」という。2025年度は、BlueYonderによるSCMの実行系、計画系のSaaSを、相次ぎ発表することになるという。

インダストリーの売上高は前年同期比3%増の2835億円、調整後営業利益は10億円増の187億円。生成Aiサーバーなどの情報通信関連製品の需要拡大が貢献した。

エナジーの売上高は前年同期比3%増の2193億円、調整後営業利益が101億円増の318億円となった。

車載電池は、北米工場での販売量は拡大しているが、原材料価格の低下に伴う価格改定などもあり、減収になった。産業・民生は、生成AI市場の拡大に伴いデータセンター向け蓄電システムが好調を維持しているという。

「車載電池は、長期的には、一定のEV化が継続する見立てに変わりはないが、米国関税政策や、EVの購入者に対する補助金であるIRA 30Dの廃止などにより、短期的にはEV市況の減速が見込まれる。また、産業・民生は、生成AI関連の投資が活況であり、データセンター向け蓄電システムの需要は期初想定以上に拡大している」とした。

2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比7.8%減の7兆8000億円、営業利益は同13.2%減の3700億円、調整後営業利益は同7.0%増の5000億円、税引前利益は同15.7%減の4100億円、当期純利益は15.3%減の3100億円と、減収減益の計画としている。

「第2四半期以降の米国関税影響は、直近でも大きな動きが継続している。流動的な状況の精査に時間を要するため、今回の見通しには織り込んでいない」とした。

米国関税影響については、期初時点では、年間売上高の1%以内の影響と試算していたが、「期初の想定よりは影響は小さい。関税率の影響だけでなく、価格政策をはじめとして各事業において、どう対策するのかといったところまで捉えた上で、影響を説明できる段階でお知らせしたい」とした。

また、期初公表時点では、プロジェクター事業の非連結化を織り込んでいたが、オリックスと結んでいた戦略的資本提携における契約合意が解除となったことから、その影響として、パナソニックコネクトの通期見通しにおいて、売上高で650億円増、営業利益で500億円減の修正を行った。

計画では、オリックスが80%、パナソニックコネクトが20%を出資して、プロジェクター事業を行う新会社を設立する予定だった。

「この半年の間に、市場の景況感が急速に悪化し、2024年度上期時点で想定した業績よりも厳しい状況にならざるを得なかった。また、プロジェクターは、北米でも展開している事業であり、そのため関税影響が逆風となった。交渉を長引かせて、中途半端な状況のまま議論を続けるよりも、どこかで決断し、現場が前を向いて進めるようにすることを優先した。破談になったことは、苦渋の決断だった」と述べた。
○人員削減1万人、構造改革の進捗は?

一方、パナソニックグループが、2025年5月に発表した1万人の人員削減の進捗についても触れた。

「国内では、事業会社ごとの事情にあわせながら進めており、組合にも説明し、従業員にもプランについての説明を開始したところである。第3四半期以降に従業員の意思を確認することになる。また、海外については、各地域や海外法人の事情にあわせて、それぞれのタイミングで実施しているが、国内に先行する形で着々と進行している状況にある」と報告した。

パナソニックグループでは、2026年4月1日付で、新たなグループ体制に移行することを公表していたが、新事業会社の名称および社長人事を発表。質問に答える形で、新たな組織の狙いなどについて説明した。

現在のパナソニック株式会社は、発展的に解消する一方、同社のもとで社内分社化していたくらしアプライアンス社は、中国・北東アジア社とともに、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションを継承会社として吸収し、同社の商号をパナソニック株式会社に変更。社長には、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーションの豊嶋明社長 CEOが、社長に就くことになる。

2025年2月に、パナソニック株式会社の発展的解消が発表された時点では、パナソニックの社名が無くなることが危惧されていたが、家電事業においては、従来通り、その社名が使用されることになる。

和仁古グループCFOは、「市場に対してコンシューマ製品を浸透させていく上で、パナソニックの名称を使用することが適していると判断したことに加えて、事業の移行に伴うコストも合理化できる」と説明した。また、社長に就く豊嶋氏については、「テレビなどの厳しい事業を率いてきた実績がある。家電を率いていく上で推進しなくてはならない改革を推進してきた。今後の家電を作り上げるスマートライフ事業の立ち上げプロジェクトでも、熱意を持ち、リードしてきた経験がある。新たな会社をトップとして率いてもらうのに最適と判断した」と述べた。

そのほか、空質空調社とコールドチェーンソリューションズ社が統合した新会社の名称が、パナソニック HVAC & CC株式会社となり、社長には空質空調社とコールドチェーンソリューションズ社の社長を務めている片山栄一氏が就任する。また、エレクトリックワークス社は、パナソニック エレクトリックワークス株式会社となり、エレクトリックワークス社の大瀧清氏がそのまま社長に就任する。

パナソニックコネクトでも、樋口泰行プレジデント・CEOが、2026年3月31日に退任し、シニア・エグゼクティブ ・アドバイザーに就任する一方、執行役員 シニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントのケン・セイン氏が、2026年4月1日付で、プレジデント・CEO に就任する人事を発表している。パナソニック コネクトとして初めての外国籍プレジデントとなる。セイン氏は、アビオニクス事業を担当しており、リーダーとして約6年に渡り、事業を牽引、成長させてきた経験を持つ。

和仁古グループCFOは、「一定の期間を持って、トップは交代するという背景から、樋口氏が、次にバトンを渡す時期に来ていると、会社側で判断した。樋口氏は2017年からパナソニックコネクト(前パナソニック コネクティッドソリューションズ)を率い、カルチャー改革やポートフォリオ改革、ビジネスモデル改革を通じて、パナソニックグループの経営を現代型にモダナイズし、社内にも大きなインパクトを及ぼしてきた。9年間の貢献には大変感謝している」とする一方、セイン氏については、「カンパニーの経営に参加し、アビオニクスを牽引してきた。同事業がコロナで苦戦をするなか、プロダクトのラインアップを切り替えて、ハードウェアとソフトウェアの融合によって、一段高いレベルの収益性を実現するための改革に取り組んできた。アビオニクスの経験やノウハウをカンバニー全体に生かしてもらい、経営の変革を期待したい」と語った。

パナソニックグループの業績は、成長力という点では厳しい状況が続いているが、その一方で、大規模な人員削減が着実に進み、2026年4月以降の新体制の姿も少しずつ明確になってきた。

パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEOは、1万人の人員削減を、「パナソニックグループが、10年後、20年後も、お客様や社会へのお役立ちを果たし続けるため」と狙いを示し、「痛みを伴う改革は、できるかぎり2025年度にやり切る」と言い切る。痛みを伴う改革は、いよいよこれから本番を迎える。
大河原克行)

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