
猛暑日が続く中、“涼”を求めようと、身の毛もよだつ恐怖体験が人気だ。神奈川県横浜市の「三和交通」では、タクシーでめぐる心霊スポットツアーが開催されている。誓約書を書き、大量のお札が貼られた車内へ。“心霊ドライバー”が各地をめぐり、「赤い服を着た女性が見える」などとガイドする。
【映像】心霊スポットツアー中に“謎の笑い声”がする瞬間(実際の映像)
このツアーは、さまざまな場所に行けるとあって、今年は約2000件の応募があったそうだ。しかしその一方で、4月にはネット上で“心霊スポット”と紹介されていた大阪の廃旅館で火災が発生するなど、不法侵入が問題になるケースもある。『ABEMA Prime』では、専門家とともに、コンプラ全盛期の“令和のホラーコンテンツ”について考えた。
■心霊スポット閉鎖活動に取り組むYouTuber

元心霊系YouTuberのHさんは、「心霊スポット閉鎖活動」に取り組んでいる。2018年に心霊系YouTuberとして活動開始し、YouTube内の企画で群馬県の神社を訪問した。しかし、Hさんが訪問した後に多くの人が神社を訪れ、器物破損などの迷惑行為が相次いでしまう。「YouTubeで公開した自分たちにも責任がある」として、宮司の許しを得てバリケードや防犯カメラを設置。神社の監視活動を約1年行った。
「荒らされているのを目の当たりにして、人が来るのを抑制する活動をした。心霊YouTuberとして、たくさんの人に見てもらった影響が大きい」と当時を振り返り、撮影については「ちょっと言いにくいが、許可は取っていなかった」と反省する。
被害に気づいて、まずは謝罪した。「私たちの活動で、人が増えたことも考えられるため、私たちで『ここは心霊スポットではない』と閉鎖する活動をさせてほしいと、神社にお願いをした」。
迷惑行為については、「そういうことが楽しいと思ってしまうのだろう。心霊スポットに行くのは夜が多く、開放的になって、ハメを外すのではないか」と考察する。
“閉鎖活動”の成果は、どうだったのか。「他の心霊系YouTuberも、同じ神社に行った動画を挙げていたが、その人たちも非公開にしてくれた。少しでも貢献できたのかなと思っている」。
■心霊スポットに不法侵入で問われる罪は?

ホラーコンテンツにも時代による変化があるようだ。怪談・オカルト研究家の吉田悠軌氏は、「グロテスクや怖すぎることに対する表現規制はないが、『心霊現象が実在する』『幽霊はいる』といったノリは減った。不思議な体験談は紹介するが、『お化けは科学的に証明できる』といった内容には、誰も興味がなくなった」と解説する。
かつての“心霊主義”に触れつつ、「『科学的に証明できる』として、霊能者を登場させた。テレビ的にはそうした見せ方しかなかったが、今はホラーや怪談は多様化している」と話す。
心霊スポットに不法侵入した場合、問われる罪としては何があるのか。建物に無断侵入すると、「住居侵入罪」「建造物侵入罪」で、3年以下の懲役または10万円以下の罰金となる。建物内部の物を破壊した場合には「器物損壊罪」にあたり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料だ。放置されている物品の持ち出しは「窃盗罪」となり、10年以下の懲役または50万円以下の罰金になる。
とはいえ、“心霊系”には一定の人気がある。「心霊スポットに突撃するYouTuberは、段々と減ってきている。昔はYouTubeに限らず、さまざまなライブ配信ツールで行われていたが、迷惑がかかって問題になった」。
■「やらせでもエンタメと思っていたが、今そんなテレビを作ったら絶対にダメ」

コンプラ意識の高まりにより、科学的根拠がない、固有名詞が出せないなどの理由で地上波番組から心霊特集が激減した。以前より「やらせ」「捏造」の批判が寄せられやすくなったことや、怖すぎてクレームが来る場合もある。そうした背景から、フィクションを強調したモキュメンタリーホラーの流行につながっている。
カンニング竹山は、「バラエティー番組でも、昔のような内容は怒られる時代だ。霊能者が出てきて、『そこにお化けがいる』『頭が痛い』と言えば、『証拠出せよ』『やらせだろ』と言われる。心霊がやらせとは言わないが、エンタメとして見てくれない時代になった」と語る。
吉田氏は「霊能者が『そこにお化けがいる』と言うのは、さすがにもうテレビでは難しい。心霊現象が科学的に証明できるという言い方はできない」と予想する。
竹山はかつて、「とあるテレビ番組で、若い女の子と深夜の肝試しロケをした」という。「“廃病院”という場所へ行ったが、そこは2カ月前にドラマを撮ったスタジオだった。制作は女の子にキャーキャーと言わせたいから、メスが飛んでくるが、操作用の糸は見えないように俺が隠す。そして最後は霊能者が“除霊”する。やらせでもエンタメと思って作られていたが、今そんなテレビを作ったら絶対にダメだ」。
(『ABEMA Prime』より)

コメント