音楽レーベルを抱えるエイベックスが、配信全盛の時代に合うように企画したポータブルDVDプレイヤーが登場しました。現在、「GREEN」でクラウドファンディングを実施中の「BRTNAP」です。なぜ今さらDVDなのか──実際に使ってみて、その理由に納得しました。

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 YouTubeやNetflixAmazon Prime Videoといった配信サービスが当たり前になった現在、映像コンテンツを"円盤"で楽しむという体験は急速に減りつつあります。家にDVDプレイヤーがない、という人も珍しくない時代です。

 しかし、大好きなアーティストの映像作品や、思い出深いDVDコレクションが見られなくなるのは悲しいこと。そこで「本当は観たいのに観る環境がない」という人たちに向け、エイベックスのDVD制作エンジニアが開発したのがBRTNAPでした。

●DVDジャケットサイズに込められた"なじみ"への配慮

 BRTNAPの最大の特長は、そのフォームファクターにあります。5インチディスプレイを搭載したポータブルDVDプレイヤーと聞くと、よくある二つ折りタイプの“クラムシェル型”を想像するかもしれません。しかしBRTNAPは、DVDソフトのジャケットとほぼ同じサイズの縦長タイプ。重量は約500gと軽くなっています。

 DVDジャケットサイズという“なじみのある大きさ”という点は見過ごせません。DVDコレクションと同じサイズということは、DVDを保管している場所に、このポータブルDVDプレイヤーも一緒に収納できるということ。棚やケースでの収納性を考慮した、実用的なデザイン選択といえます。

 BRTNAPは、DVDとCDの再生に対応し、スピーカーや有線ヘッドフォン端子を搭載。Bluetoothによるワイヤレスイヤフォン接続も可能です。

 HDMI出力で大画面テレビとの接続も可能で、USB Type-Cによる充電/給電にも対応しました。倍速再生、音声のみのモニターオフ機能、10秒送り/10秒戻りといった動画を見る際の細かな機能性を加えています。

 すべての操作は物理ボタンで行えるため、画面を見なくても直感的に操作できます。この確実な操作感は、移動中や暗い場所での使用においてアドバンテージになるでしょう。

 実際にワイヤレスイヤフォンXiaomi Buds 5」と接続して音声を確認したところ、その音質にちょっと驚かされました。DVDの音声は一般的に48kHz/16bit。考えてみれば当然ですが、配信サービスの圧縮された音質になれた耳には新鮮だったのです。

 Bluetooth接続では、一度ペアリングさえしてしまえば、ワイヤレスイヤフォンを取り出すだけで、再生中でも自動的にスピーカーからイヤフォンに切り替わります。さらに、イヤフォンを外せば再生も自動的に停止。再び装着すると再生が再開されるという、現代のワイヤレスイヤフォンならではの機能にもしっかり対応していました。

 視聴スタイルを瞬時に変更できるのは快適ですし、音楽のDVDなどをモニターオフ機能で楽しむ際にも便利です。

●5インチディスプレイは小さい?

 最近のタブレットやスマートフォンに慣れたユーザーにとって、5インチディスプレイは一見小さく感じるかもしれません。しかし、机の上に置いて視聴したり、寝転がって手持ちで視聴する分にはとくに不満を感じません。むしろ軽いことがありがたいシーンのほうが多いと思います。

ターゲットユーザーと価格設定

 BRTNAPが想定するユーザー層は明確です。DVDコレクションを多数保有している人、推しアーティストの映像作品が配信サービスにない人、そして物理メディアの音質・画質にこだわりを持つ人といった層がメインターゲットクラウドファンディングでの約3万円という価格設定は、このニッチな需要に対して適正な範囲といえると思います。

 BRTNAPは、一見、時代に逆行した製品に見えます。しかし、スタイリッシュなデザインや持ち運びの容易さ、そしてBluetooth周りの機能などは完全にイマドキの仕様。エイベックスという音楽・映像コンテンツを熟知した企業が、その知見を生かして作った令和のDVDプレイヤーなのだと思います。

 実際にディスクを挿入すると、キューーーンという音とともにローディングが始まる体験は、もはや懐かしささえ感じます。しかし、この物理的な“儀式”で、使い慣れた配信サービスにはなかった特別感がありました。物理メディアを“回す”ことの意味を、現代に再定義した製品といえるのではないでしょうか。

 「GREEN」で実施中のクラウドファンディングは8月末まで。「SHIBUYA TSUTAYA」など数店舗で実機も展示しています。

DVDジャケットサイズに設計された「BRTNAP」