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 北極圏の真冬に、雨が降り、積雪が消え、凍った地面が大規模に融けるという異常な現象が起きている。

 これは、イギリス、フランス、イタリアの国際研究チームが、2025年2月にノルウェー領スヴァールバル諸島での調査で確認したものだ。

 そこでの出来事は、北極の冬で起きている急激な気候変動がもはや「例外」ではなく、「新たな常態」となりつつあることを示している。

 今スヴァールバル諸島では、気温の上昇速度が世界平均の6~7倍に達しており、冬に限って言えば、その倍近いペースで温暖化が進行しているという。

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 この報告記事は『Nature Communications[https://www.nature.com/articles/s41467-025-60926-8]』(2025年7月21日付)に掲載された。

北極圏で目の当たりにした“冬の崩壊”

 2025年2月、北極海に浮かぶスヴァールバル諸島で行われた現地調査の期間中、英国ロンドン大学クイーン・メアリー校のジェームズ・ブラッドリー博士らをはじめとする、フランスのエクス=マルセイユ大学、イタリアのナポリ大学の研究チームは、驚くべき光景を目撃した。

 これまで凍てつく冬が当たり前だったこの地において、異常な暖かさによって広範囲にわたり雪が消え、植物が開花していたのだ。

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 スヴァールバル諸島では、地球全体の平均の6~7倍の速さで気候変動が進んでおり、特に冬の気温上昇は年間平均のほぼ2倍にも達している。

 こうした暖冬は北極ではもはや当たり前のことで、北極の冬は凍っているという従来の常識が覆されつつあるという。

 「氷河の先端にある水たまりや、むき出しの緑に覆われたツンドラの上に立てるのは、衝撃的で、現実とは思えませんでした」(ブラッドリー博士)

 研究チームが寒さから身を守るため持参した厚手の防寒具も、あまりの暖かさにもはや必要なく、作業も素手で行われたほどだ。

 しかも研究チームが当初調べるつもりでいた真新しい雪が、冬だというのにほとんど降らないという予想外の事態も発生した。

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今回の調査の目的は、新たに降り積もった雪のサンプリングでした。にもかかわらず、2週間の滞在中、新雪を採取できたのはたったの1回。

雪の代わりに雨ばかりが降ったからです(ロンドン大学クイーン・メアリー校・ロンドン自然史博物館 ラウラ・モラレス・モンカヨ氏)

 このような現地での体験は、北極の温暖化についての従来の予測をただ裏づけるだけでなく、それによる変化が驚くべき速さで進んでいる現実を浮き彫りにしている。

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気候変動がもたらす“雪のない冬”の脅威

 この異常な状況は、北極圏の環境や生態系・社会に甚大な影響を及ぼすのはもちろん、今後の研究調査の継続すら危うくさせる。

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 たとえば冬における気温の上昇は、北極の野生動物たちの生存から生態系や微生物による炭素循環まで、あらゆることを崩壊させる。

 しかもそれは永久凍土の融解・微生物による炭素分解・温室効果ガスの放出といった連鎖的な反応を引き起こす恐れがある。

 氷が溶けてできた水によって一時的に巨大な湖が形成されれば、より多くの地面が露出し、微生物や植物が急速に活動を開始するようになる。

 さらに北極の先住民コミュニティが直面するインフラ・交通・緊急対応の面でのリスクも一層深刻になると考えられる。

 また今回の予期せぬ暖冬によって、雪が薄くシャーベット状になったため、スノーモービルが使えないなど、今後これまで通りに調査を行えるのかどうかすら懸念される事態となっている。

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 万が一、ホッキョクグマと遭遇したら、どうやって安全な場所まで避難すればいいというのか?

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気候政策が現実に追いついていない

 こうした実体験をもとに、研究チームは、従来の気候政策はこの現実に追いついていないと警鐘を鳴らし、即時の行動が必要であると主張する。

気候政策は、北極が予想以上のスピードで変化しているという現実に追いつかねばなりません。そして、その変化の中心にあるのが“冬”なのです(ブラッドリー博士)

 科学者たちは、特に冬季の観測体制を強化し、一体何が起きているのか解明することが大切だと述べる。

 基準を作り、将来の影響がどのようになるのか予測するには、急激に変化する状況を理解していなくてはならないからだ。

 何より研究チームは、これまで後手に回り続けてきた気候政策を、予測に基づいて先手を取るやり方にシフトさせねばならないと強く訴える。

 予測が現実になってからでは、遅すぎるのだ。

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41467-025-60926-8] / Arctic winter reaches melting point: Scientists witness dramatic thaw in Svalbard[https://phys.org/news/2025-07-arctic-winter-scientists-witness-svalbard.html#google_vignette]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。

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