世はキャッシュレス時代です。日本でも政府によってキャッシュレス化が推進されており、経済産業省は2025年までに4割程度に、将来的には世界最高水準の8割程度にキャッシュレス決済比率を引き上げたいと目標を掲げています。これから社会に出ていく子どもたちは、必然的にこのキャッシュレス化の流れに巻き込まれることになります。そこで本稿では、見原思郎氏による著書『親子で学ぶデジタル×マネー教育 ネコマルのデジタルおこづかいレッスン』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋・再編集し、世界のキャッシュレス決済の普及状況と、現金とデジタルマネーの違いについて詳しく解説します。

世界におけるキャッシュレス決済の普及状況と、日本の実態

近年、私たちの身の回りのさまざまな場所でキャッシュレス化が進んでいます。経済産業省が2025年に公表した、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%でした。デジタルマネー、コード決済アプリ、クレジットカード、プリペイドカード、デビットカードと、決済サービスは多様化し、その場の目的や導入状況に適した決済サービスを利用するのが自然になっています。

しかし世界的に見ると、日本はキャッシュレス化について後れをとっている印象です。韓国や中国、欧米諸国では日本以上にキャッシュレス決済の比率が高くなっています。

私は2019年に起業し、子どもの自立を助ける、親子向けプリペイドカードのサービスを立ち上げました。長女が生まれ、「好きなことにワクワク取り組める人になってほしい」と思うとともに、子どもたちがお金の使い方を通して自分の好きなものに気づくような体験をつくりたいと思ったからです。

起業の前後では海外のキャッシュレス事情をリサーチすることもありましたが、2018年頃に中国を訪れたときには、自販機やカプセルトイ、移動も含めて街のあらゆるサービスを、すべてキャッシュレスで支払うことができて驚いたのを覚えています。また以前に、アメリカ在住の人にインタビューしたときは「子どもたちが現金を使う機会がないので、現金での支払い方が分からない子どもも多い」という回答もありました。

日本でキャッシュレス決済がなかなか普及しなかった背景には、他に類を見ない偽造防止技術が施されている貨幣への信頼があるとも考えられます。盗難も少なく、現金を落としても返ってくるような治安の良い国だからこそ、現金を持ち歩くことに抵抗を感じる人が少ないのです。ATMなどの金融インフラが整っているのも、現金決済に不便を感じることがない理由の一つです。

しかし、海外からの観光客も増え、グローバル化の進む今、日本でも全国的にキャッシュレス比率を高めていくことが必要不可欠といわれています。

デジタルマネーと現金、何が違う?

キャッシュレス決済にはさまざまな種類があります。  

〈デジタルマネー/プリペイドカード(前払い型)〉

さまざまな会社が独自に発行している電子的なお金で、主にスーパーやコンビニ、改札機でタッチしてお金を支払う。交通系ICカードなど。

〈スマートフォンのコード決済(前払い型・後払い型など)〉

二次元コードやバーコードを通じて決済を行う。「PayPay」など。

〈デビットカード(即時払い型)〉

カードを読み取り端末に差し込んだり、かざしたりすると、代金が銀行の口座から即時に引き落とされる。発行会社にもよるが、一般的には15歳以上(中学生を除く)、もしくは16歳から作成可能。

〈クレジットカード(後払い型)〉

その場で支払うことなく商品やサービスを受け取ることができ、あとでお金の請求がくる。2022年の成年年齢引き下げによって、満18歳(高校生は除く)から申し込みが可能になった。

このようなキャッシュレス決済について「お金を使っている感覚がなくなり、ついつい使いすぎてしまいそう」「個人情報流出などのセキュリティ面が心配」といった不安の声を聞くことがあります。ただし小中学生が主に利用する、交通系ICカードなどのプリペイドカードや、「PayPay」などのコード決済においては、オートチャージ機能さえつけなければ、限度額を超えて使用してしまう危険はありません。

一方で「交通費のために交通系ICカードを渡したのに、子どもが勝手にお菓子やジュースを買ってしまい、交通費が足りなくなってしまった」というような親子での約束がうまくいかない理由でのトラブルは、よく聞く話です。

デジタルマネーと現金は、それぞれにメリットとデメリットがあります。デジタルマネーでまず分かりやすいメリットは、支払いの簡単さです。小銭を出し入れする手間が要らず、おつりの計算不要でスムーズに支払いができます。ネットショッピングなどのオンライン決済においても便利です。また、送金のしやすさもメリットの一つです。物理的に離れている状態でも、デジタルマネーなら簡単にお金を送ることができます。

また、現金の場合は紛失したらなかなか戻ってこないのに対して、デジタルマネーなら紛失や盗難などの理由で利用を停止したり、場合によっては払い戻しを受けたりすることができます。利用履歴が残るので、お金の管理がしやすいのも良いところです。

逆にデメリットは、支払いの便利さや送金のしやすさを不正に利用されやすい点です。

支払い画面やパスワードをうっかり共有してしまうと不正に使用されたり、デジタルマネーによる送金のしやすさを利用した詐欺などが起きたりしています。ただし利用履歴が残るので、まめに確認することで不正防止ができます。カツアゲのように、親に内緒で子ども同士がお金をやりとりすることを防ぐ面もあります。

一方、現金のメリットとして大きいのは、現状、日本では現金での支払いしか対応していない店舗がまだ多いことです。また電気やインターネット回線に頼らず決済ができるので、災害時には強く、防災バッグにはいくらか現金を入れておくとよいとよくいわれます。一部のモバイル決済はオフラインでの支払いに対応する仕組みを導入しており、災害時の決済手段としての研究・開発も進んでいますが、広く実用化されるにはまだ時間がかかると思われます。

さらに、現金の場合、使えば物理的になくなるので「お金が減る痛み」を感じやすいことです。子どもの年齢が小さい場合も、お金の価値を認識しやすく、大切なもの・必要なものから買う訓練には適しています。

半面デメリットとしては、落としたらそれっきりである場合が多いこと、火災や洪水などで使えなくなることもあること、支払いに手間取ることもあること、盗難などのリスクが挙げられます。

見原 思郎 シャトル株式会社 代表取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)