
俳優の広瀬すずが、9月6日に都内で開催された映画「遠い山なみの光」の公開記念舞台あいさつに登場。共演の二階堂ふみ、吉田羊と共に映画にちなんで“忘れられない記憶”を語る場面があった。
【写真】10歳の鈴木碧桜の目線の高さまでしゃがんで花束を受け取る広瀬すず
■カンヌをはじめ海外の映画祭でも注目
同作は、カズオ・イシグロの長編デビュー作を「ある男」(2022年)で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む最多8部門受賞を果たした石川監督が映画化。終戦間もない長崎という、まだ過去にしきれない「傷跡」と、未来を夢見る圧倒的な「生」のパワーが渦巻いていた時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮明に描き出すヒューマンミステリーだ。
5月に「第78回カンヌ国際映画祭」『ある視点』部門に正式出品されたほか、6月には上海国際映画祭、9月にはトロント国際映画祭、そして10月にはロンドン国際映画祭への出品も決定している。
そんなふうに海外からも注目されていることについて、主演の広瀬は「カンヌから始まり、海外の方に見ていただく機会が多かったので、やっと日本で公開して、日本の物語をたくさんの方に知ってもらうということができて『やっとだ!』という気持ちもありつつ、世界に日本のことを知ってもらうきっかけになるような作品になったらうれしいなと思います。すごく光栄に思います」と喜びを語った。
また、今作は1950年代の長崎と1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密をひもといていく物語ということで、それにかけて「忘れられない記憶は?」という質問が。
それに対し、広瀬は「面白くないんですけど…」と前置きしつつ、「子どもの頃に家族でおすし屋さんにお昼ご飯を買いに行ったんです。私は先に車に戻って乗ってたんですけど、みんなが来ないからお店に戻ったんです。そしたら反対側から家族全員戻って来ていて、そのままお店に置いて行かれ、発車してしまって。それを泣きながら追い掛けて、まだ4歳とか5歳のときだったんですけど、『おしん』みたいな気持ちになって…」と、当時日本中にブームを巻き起こした昭和を代表する連続テレビ小説になぞらえ、苦笑い。
続けて「いまだに思い出すし、泣きながら走って車が全然止まってくれない景色が夢にもたまに出てくるくらい記憶に残っています。死ぬかと思いました(笑)」と、幼少期の忘れられないエピソードを告白した。
■二階堂&吉田の“忘れられない記憶”
一方、二階堂は「高校生のときの修学旅行が長崎だったんです。自由時間に好きな所に行けるので、長崎の街を歩いたんですけど、グラバー園から出て坂が多い天主堂のほうを回りました。そこに住んでいる生活と歴史をすごく感じる街で、忘れられない思い出ですね」と述懐し、本作も長崎が舞台であることから「あのとき、グループ行動もあったんですけど、一人でお散歩しようかなと思ってお散歩していたので、この作品のご縁がそこで始まってたのかもっていうふうに思います」と、不思議な縁を感じる思い出を明かした。
そして吉田は「イギリスにホームステイしていたとき、お休みの日にアンティークショップに行ったんです。そこですてきな蓋付きのデキャンタを見つけて、割れないようにプチプチでぐるぐる巻きにして、後生大事に持っていたんです」と切り出し、「1カ月たって、(今作の)撮影隊がご用意してくださったアパートに移ったとき、せっかくだから花を挿して、毎日眺めながら過ごそうと。まず中を洗って、乾かして置いておいたんです。別室で用事を済ませていたら、後ろでゴロゴロ…ガシャン!って音が聞こえて。行ったら、落ちて粉々に割れていたんです」と、切ない表情で回顧。
それでも、吉田は「そのときイギリスでの撮影に対する不安が多かったんです。自分にできるだろうかと。でも、それを見た瞬間にパッと楽になったんです。だからあの子(デキャンタ)が私の不安を全部持って行ってくれたんだなって思いました」と前向きに捉えつつ、「とってもすてきだったので悲しいです…」と、印象深い出来事を振り返っていた。
ほか、舞台あいさつには石川慶監督、鈴木碧桜(みお)も登壇した。
映画「遠い山なみの光」は全国公開中。
◆取材・文=森井夏月(STABLENT)



コメント