
横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第34回「ありがた山とかたじけ茄子」が9月7日に放送された。ひょんなことから出会い、深く交流してきた蔦重(横浜)と意次(渡辺謙)のシーンが胸を打った。(以下、ネタバレを含みます)
【写真】蔦重(横浜流星)の作った黄表紙本を手に取る定信(井上祐貴)
■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙、美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太、蔦重の妻・てい役で橋本愛らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。
■定信が老中首座に就任し、その影響が蔦重たち本の世界にも及ぶ
徳川御三家や一橋治済(生田斗真)を後ろ盾に、役に就いたことさえなかったところから、ごぼう抜きで老中首座になった松平定信(井上祐貴)。定信は、さっそく、因縁がある意次が作った世とは反対ともいえる、質素倹約を打ち出す。
そんな中、ていとけんかになっても倹約しないとする蔦重は、植物や虫を描いた歌麿の絵を使って、豪華な狂歌絵本を作ると狂歌師らに呼び掛ける。
ところが、狂名・四方赤良こと大田南畝(桐谷健太)が定信をやゆする歌を作ったと疑われ、処罰させられるかもしれないと断筆宣言をし、狂歌師たちに動揺が広がる。
打ちこわしを収めたのは意次の策だったが、それを自分の手柄のようにした定信のことを、”人のふんどしで相撲をとる”に例えて「ふんどし野郎」と呼ぶ蔦重。「一生ふんどしがとれねえ呪いにかかっちまえってんだ」と悪態をついていると、今度は定信が田沼派の不正役人を一斉処罰するとの知らせが。その中には意次の家臣・土山宗次郎(柳俊太郎)の名前もあった。
定信を称え、田沼派の処罰を喜ぶ世の風潮。「皆が喜ぶのは、ふんどしを上げ、田沼様を下げるもの」。蔦重は、ある思いを胸に意次の家へ向かった。
■蔦重「書を以って抗う」覚悟を意次に伝える
部屋に入るなり、「何かあったか!まさかそなたにまで累が?」と心配する意次。
蔦重は「私は、先の上様のもと、田沼様が作り出した世が好きでした。皆が欲まみれで、いい加減で。でも、だからこそ、分を越えて親しみ、心のままに生きられる隙間があった。吉原の引手茶屋の拾い子が日本橋の本屋にもなれるような」と話し始める。
「俺も、おまえと同じ成り上がりであるからな」と口を挟む意次。そして「持たざる者には、よかったのかもしれぬ。けれど、持てる側からしたら、憤まんやるかたない世でもあったはず。今度は、そっちの方が正反対の世を目指すのは、まぁ、当然の流れだ」と続けた。
すると蔦重が「私は書をもってその流れに抗いたく存じます」と言う。最後の田沼派として蔦重が考えたのは、田沼の世の風を守ること。そのためには、意次の名をおとしめてしまうことになると、許しを請いに来たのだ。
意次はフッと笑みをこぼし、「『許さぬ』などと申せるはずがなかろう。もし、そんなことをしたら、源内があの世から雷を落としてこよう。好きにするがいい。自らに由(よし)として『わが心のままに』じゃ」と告げた。
「ありがた山の寒がらすにございます」としゃれの効いた言い回しで礼を言って頭を下げる蔦重。意次は蔦重の手を取り、グッと握って「こちらこそ、かたじけ茄子(なすび)だ」と返して、2人は笑いあった。サブタイトルを回収する熱きシーン。第1話での、吉原の窮状を訴えた蔦重が、意次から思いがけない視点の助言を得て同じ言い回しをしたこともよみがえる。
意次の懐の深さと、今は亡き源内(安田顕)も加えた蔦重との絆に心が震える。3人が大切にする「自由」が、江戸の文化を花開かせたのは確かなことなのだ。
映画「国宝」では親子役だった横浜と渡辺の熱いシーン。SNSには「意次かっこいいなぁ」「すごくいいシーンだった」「身分を超えた絆」「涙があふれそうになった」の声が上がった。中には「意次のイメージが変わった」という感想も。
本作でもきれいごとではない動きもあったが、意次の先見の明や蔦重らの意見を受け入れる柔軟さなど、光の一面が視聴者の心をつかんだ。ただ、公式Xでは今回の放送回の収録で意次を演じた渡辺謙がクランクアップしたとの投稿があり、寂しさが募る。
※柳俊太郎の柳は、「木」偏に「夘」が正式表記
◆文=ザテレビジョンドラマ部



コメント