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 インコは本来、昼に活動する鳥だが、“夜行性”のインコが2種存在する。一種はニュージーランドの固有種「カカポ」、そしてもう一種が、オーストラリアに生息する「ナイト・パロット(夜のインコ)」こと、「ヒメフクロウインコ」だ。

 2025年9月5日オーストラリア政府はこのヒメフクロウインコ(学名:Geopsittacus occidentalis)を、レッドリストの「絶滅寸前(CR)」に指定した。

 かつて“絶滅した”と考えられていたが、2013年に奇跡的に再発見され、一時は復活への希望が高まっていたが、カカポ同様、種の終わりが近づいている。

 人間が生息地を奪ったことも彼らを絶滅に追いやった要因の1つである。今後の積極的な保全活動で、何とか持ちこたえてもらいたいものだ。

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絶滅したと思われていた幻のインコを再発見

 ヒメフクロウインコは、緑色に暗褐色や黒、黄色の斑点が入った羽をまとう、比較的小型のインコである。

 平らで開けた場所を好み、密集した草の茂みの中にトンネルを作ってねぐらにしており、日が落ちると姿を現して餌を探す。

 19世紀半ばに初めて人間によって発見されたが、20世紀に入ると目撃の記録が途絶え、「すでに絶滅したのではないか」と長らく思われてきた。

 最後の確実な目撃は1912年とされるが、その後もその姿を見た、死骸を見たという「噂」は絶えなかった。

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 転機は2013年に訪れた。鳥類学者ジョン・ヤング氏が、クイーンズランド州でこの鳥の写真を撮影したと発表し、大きな話題を呼んだのだ。

 ただしヤング氏の発見は捏造ではないかとの噂も流れたが、それでも2016年以降、この鳥の生存の証拠が次々と見つかっていく。

 ヒメフクロウインコの生きた姿が写真に納められ、鳴き声が録音され、繁殖地も発見されたのだ。

 そして2024年、アボリジニレンジャーと西オーストラリア大学の調査チームが、17地点でこの鳥の鳴き声の記録に成功。

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 最終的に、西オーストラリア州のグレートサンディ砂漠にある先住民保護区で、「最大で50羽規模」の個体群を確認したと発表した。

How the Night Parrot is being reintroduced across Australia

 これは世界最大の生息群と見られており、絶滅したと思われていた鳥が、まだオーストラリアの荒野でひっそりと息づいていることを示す劇的な発見だった。

 この時の調査では、「ソングメーター」と呼ばれる自動録音装置を使って鳴き声を検出し、個体数を推定したとされる。

 さらに2025年2月には、ナイト・パロットの卵(受精していないもの)が見つかったというニュースも報じられた。

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彼らの生存を脅かす要因

 オーストラリア大陸は広く、未調査地もまだまだ多い。ヒメフクロウインコの生息地は、今後もさらに確認される可能性は大いにある。

 だが、彼らの生息地は、鉱山開発計画が進むエリアとも重なっている。

 2025年3月には、鉱山大手リオ・ティント社が進める銅・金鉱山「Winu」プロジェクトの近辺でヒメフクロウインコの鳴き声が記録された結果、同社は計画を見直すと発表[https://www.riotinto.com/en/news/stories/embracing-a-major-conservation-challenge]した。

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 開発による危機はひとまず去ったとは言え、彼らの生存を脅かす要素は少なくない。人間による生息地の破壊に加え、山火事や気候変動が追い打ちをかける。

 さらに、オーストラリアにとっては外来種である「猫」の存在も、ヒメフクロウインコにとっては脅威である。

 野生化した猫たちは、この大陸の多くの在来種にとって、天敵となってしまっている。オーストラリアでは、国が猫の駆除に乗り出す事態になっているのだ。

 現在、ヒメフクロウインコの生息数は、50~100羽、最大限多めに見積もっても550羽程度と推定されている。

 2024年の大規模個体群を発見した先住民レンジャーグループは、今もこの鳥の生息地を探す活動を続けているそうだ。

Elizabeth Gould (1804–1841)[https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pezoporus_occidentalis_Bird_illustration_by_Elizabeth_Gould_for_Birds_of_Australia,_digitally_enhanced_from_rawpixel%27s_own_facsimile_book666.jpg], Public domain, via Wikimedia Commons

カカポとの違いは?

 ヒメフクロウインコとよく境遇が似ているのが、ニュージーランドに生息する「カカポ(kākāpō)」だ。

 どちらも夜行性で希少なオウム目の鳥だが、以下の違いがある。

ヒメフクロウインコ
オーストラリア固有種。乾燥地帯に住み、短距離なら飛行も可能。体長22〜25cm程度。

カカポフクロウオウム
ニュージーランド固有種。体長60cmを超える大型で、飛ぶ能力をほぼ失っている。森林で生活し、現在は保護プログラム下で繁殖が進められている

日本にもいた「幻の鳥」たち

 かつて日本でも「ニッポニア・ニッポン」という学名を持つトキが姿を消し、「野生絶滅」の状態にあった。

 その後中国から提供を受けたトキのつがいを繁殖させ、再導入の努力を重ねた結果、再び野生の空を舞うようになった。

 現在では「野生絶滅」から「絶滅危惧IA」にランクが1段階引き下げられ、2026年には初めて本州への放鳥も予定されているという。

 しかしその道のりは決して平坦ではなく、絶滅寸前まで追い込まれた種を守り抜くには、長期的な努力が欠かせない。

 沖縄の「ヤンバルクイナ」もまた同じだ。やんばるの森という限られた生息地で、外来のマングースやノネコに命を脅かされながらも、人の保護活動によって生き延びてきた。

 このヤンバルクイナの姿は、遠く離れたオーストラリアの砂漠に住む、ヒメフクロウインコの境遇と重なっては見えないだろうか。

ヤンバルクイナ (c) Wich’yanan L, some rights reserved (CC BY)[https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Okinawa_Rail_imported_from_iNaturalist_photo_388492786_on_12_June_2024.jpg], CC BY 4.0[https://creativecommons.org/licenses/by/4.0], via Wikimedia Commons

 再発見された「幻の鳥」。だがそれはゴールではなく、むしろ新たなスタートだ。野生動物は人間の営みと密接に結びつき、わずかな環境変化で再び絶滅へと傾く危うさを抱えている。

 ヒメフクロウインコの場合も、単に発見することだけを目標とするのではなく、地に足のついた保全戦略を進めることが成功の鍵となるだろう。

 開発、気候変動、捕食者、そして餌資源や繁殖環境の限界。どれかひとつでもバランスが崩れれば、再び彼らが「幻の鳥」となる危険は大きい。

 彼らが未来に羽ばたき続けるためには、私たちが自然との関わり方を問い直し、保全の努力を絶やさないことが何よりも重要なのだ。

References: Beautiful rare bird thought to be extinct is spotted again after 100 years[https://www.mirror.co.uk/news/uk-news/beautiful-rare-bird-thought-extinct-35978571]

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