ヒトは感情の動物と言われており、一般的な動物が持つ、喜び、悲しみ、怒り、恐怖などの基本感情だけではなく、愛情、友情、妬み、思いやりなどの多様な派生的感情を抱く。例えそれが自分の利害にまったくかかわりないことであってもだ。

 これまでこうしたヒトの複雑な感情機能の進化の過程は十分に解明されていなかった。これは、ヒトだけが持つ特徴なのだろうか?そこで、京都大学文学研究科の藤田和生教授や英国スターリング大などの研究グループが、豊かな表情を持ち、協力的で、寛大な社会を形成することで知られる新世界ザルの一種フサオマキザルを対象に実験を行った。

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 実験は、7頭のサルにを対象に、演技者2人が、容器から玩具を取り出すのを助けたり(協力的)、助けを拒否したり(非協力)、ボールを交換したり(公平)、自分だけボールの受け渡しを拒否する(不公平)などの演技をした後、2人同時に食べ物を差し出して、どちらからもらうかを調べるというもの。

 その結果、サルは、どちらを選んでも同じなのに、非協力的な人からの食物の受け取りをしばしば回避したという。公平、不公平に対しても同様で、自分だけボールの受け渡しを拒否した人をより回避したという。

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via:kyoto-u[http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/130306_2.htm]・yahoo[https://web.archive.org/web/20130513024405/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130306-00000001-kyt-l26]

 「フサオマキザルは、どちらから食べ物を受け取っても不利益がない。理性的というより感情的評価が働いている。」と藤田教授は話す。この対応は、援助しない、返礼しないなど、身勝手でアンフェアな行動を取る第三者に対して示される”嫌悪”であり、ヒトの子どもの発達段階に見られる行動に類似しており、フサオマキザルはヒト同様の複雑な感情機能を持つことがわかったという。

 藤田教授は、「その一方で、ヒトは公正な人物に対して好感を抱く。こうしたポジティブな行動の変化が、フサオマキザルにも見られるのか否かを調べることが次の課題であり、それを示すことができたならば、このサルの第三者評価とヒトのそれが相同なものであることを、さらに明瞭に示すことができ、ヒトの心と動物の心の連続性をより強く裏付けることができるだろう。」と述べ、更に、「協力的社会を構築するためには第三者の視線を気にして行動を調節することも大切だ。今後は見られているときと見られていないときの行動の違いについても調査していく。」と続けた。この研究成果は英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズなどで6日までに発表される。

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