日本では今年、例年になく厳しい寒さが続いている。ここ数年、ロシアやアメリカをなど、世界各地で寒冬が報告されており、地球は温暖化しているはずなのに、なぜこんなに冬が寒くなるのかと疑問に感じると思うのだが、実はその原因は、夏の北極海にあることがわかってきた。

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 簡単に言うと、北極海の一部・バレンツ海の海氷減少がユーラシア大陸の気圧配置の変化を招き、日本に寒さをもたらしているということになる。

温 暖化がすすんだことで北極海の海氷が減少した為、夏に海から放出された熱が氷に妨げられず、北極付近の気圧が高くなり、北極と中緯度地方の温度差が小さくなる。そのため極渦やジェット気流が弱まって、北極の寒気が中緯度地方に流れ込みやすくなる。その為に北極の冷たい寒気がそのまま直接人の住む大陸へとたどり着いているということなのだ。

1979年に開始された人工衛星観測史上最高のレベルで溶けていた2012年の北極の海氷。その溶けた面積はアメリカ合衆国の大きさよりも大きいという。

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 北極の天候を左右する要因として、北極振動(AO)や北大西洋振動(NAO)と呼ばれる気圧による気候の振動現象がある。

 AOは北極周辺と亜熱帯の気圧が、一方が平均よりも高いとき、もう一方は平均よりも低いという具合に、シーソーが上下するように変化することを指す。AOの強弱を示す指数は正と負の値を取り、北極側の気圧が低いときに正、高いときに負になる。NAOもAOに似た、より狭い範囲の現象だ。

 AO指数が正の時期は、北極付近の上空を流れる渦の流れが強くなり、寒気はそこに封じ込められる形になる。負の時期は逆に極渦の勢いが弱くなり、寒気が中緯度地域に流れ出して、寒冷な天候が訪れる。

 AOやNAOは数十年という比較的長い周期で正と負の状態が移り変わる。ところがこの自然のリズムをかく乱する新たな要因が特定されてきた。それが夏の北極海における海氷の減少である。

 氷が解けた海洋から秋に余分な熱が放出され、北極付近の気圧が高まり、北極と中緯度地方の温度差は小さくなる。このため冬にAOやNAOが負になりやすくなる。この結果、極渦やジェット気流の勢いが弱まり、極寒の北極の大気が欧米や日本などの中緯度地域に流れ出ることになる。

 温暖化による北極海の海氷の消失は今後も続きそうで、負のAOやNAOはますます起こりやすくなる。温暖化時代の厳冬という逆説的な現象はこれからも頻繁に現れるであろうと予想されている。

 2012年1月から9月までの北極の海氷の変化の早回し映像

 こちらは2012年3月30日から2012年7月8日までの別角度でとらえたもの

via:slashdot[https://web.archive.org/web/20130308170943/http://science.slashdot.jp:80/story/12/12/27/0130249]・nikkei[http://www.nikkei.com/article/DGXBZO49854790R21C12A2000000/]

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