シベリア北西部の北極圏にある、資源豊富なUst-Polui の地で、このほど、装飾が施された儀式用甲冑のプレートがまとまって発見された。クマを信仰するこの地域の古代人たちによって、神に捧げられたものではないかという。

 これは紀元前1世紀から紀元1世紀の時代までさかのぼるもっとも古い甲冑とみられている。

関連記事:地下世界への門。シベリアの永久凍土にある神秘のクレーターで20万年前の土壌を発見(ロシア)

クマ信仰のある土地で発見されたトナカイの角でつくられた甲冑

 この地域でのこれまでの発見からは、古代の人たちの間にクマ信仰があったことがうかがえる。

関連記事:ロシアで発見された「シギルの偶像」は世界最古の木造彫刻である可能性

 サレハルドにある北極科学研究センターの考古学者、アンドレイ・グーセフは、見つかった甲冑のプレートはトナカイの角で作られていると言う。

「Ust-Poluiからは、30あまりのプレートが出てきたが、保存状態、サイズ、とりつけ穴の位置、装飾の有無など、それぞれ違っている。これは世界的な発見だ」

 大きなものは長さ23~25センチ。甲冑の形をとどめていた昔は革の基部に取りつけられていて、しっかりと体を保護してくれるものだったと思われる。

関連記事:シベリアの永久凍土で発見された3万年前の巨大ウイルスを蘇生させる研究を開始(フランス)

 また、長さ12~14センチの、もっと薄くて手の込んだ装飾がほどこされているものもあった。

「プレートの装飾は、個性を表わしたものだったのだろう。装飾スタイルから分析して判断すると、何人の戦士がここに甲冑を残したのかがわかる」

関連記事:いったい誰が?何の目的で?謎に包まれたシベリアの孤島にある1300年前の遺跡「ポル=バジン」

 古代の戦士がかぶっていた兜のプレートは、円錐型の甲冑にも使われている。

「西シベリアのタイガ地方で鉄の兜が見つかることは極めてまれだ。しかし、紀元500年頃の人をかたどったブロンズ像は、明らかに兜によく似たものをかぶっている。トナカイの角で兜を作るという長い伝統があった可能性はあるかもしれない」グーセフはそう語る。

神への供物としてささげられた甲冑

 グーセフによると、発見された甲冑はヤマル族(このイラスト)の甲冑に似ていて、これはタイガ地域で狩猟民であり漁師だったクアライの人たちが採用したデザインと関連があるという。

関連記事:頭蓋骨が割られ胴の仮面をつけた、ロシア・シベリア地方の珍しい青のミイラ

 彼は、この甲冑は神への供物あるいは生贄として、古代の聖地であるUst-Poluiの地に意図的に捧げられたとみている。

  この地ではすでに2000年前の指輪が見つかっており、文字による記録がない古代北極圏の人々の間にクマ信仰があった証拠と見られている。

クマ用につくられた装飾品

 上質の青銅でできたこの古代北極の装飾品には、クマの頭部と前足の絵が描かれていた。サイズはとても小さく、女性はおろか幼い少女でさえもはめることができそうにないという。

 そのため、これはクマ信仰につながる儀式で使われ、クマの爪にはめられたのでないかと考えられている。指輪はクマのツメにはぴったり合うというのだ。

 クマはシベリアの古代ハンティ族が、神聖な動物として崇めていた。

 クマを殺めた後で、その栄誉を称えるために、”クマ祭り”を行い、頭部や前脚をハンカチのような布や指輪で飾り、数日間家の中に安置した。

 「指輪のイメージとUst-Poluiの聖地から発見されたという事実が合わさって、クマ信仰があったと信じるに至った」グーセフはそう語る

via:2,000 year old warrior armour made of reindeer antlers found on the Arctic Circle[https://web.archive.org/web/20170627101644/http://siberiantimes.com:80/science/casestudy/features/f0294-2000-year-old-warrior-armour-made-of-reindeer-antlers-found-on-the-arctic-circle/]/ translated konohazuku[http://konohazuku99.cocolog-nifty.com/blog/] / edited by parumo

画像・動画、SNSが見られない場合はこちら