―[経済レポーター×銀座No.1ホステス・山崎みほ]―


「友人の仕事を手伝ったら、お昼を奢ってくれただけで謝礼がなかった」
「知人のパーティーに呼ばれたけれど、会費制だとは聞いていなかった」

別にお金のために動いたわけではないし、最初から知っていたら何てことない金額なのに、無性にモヤモヤしてしまうーーそんな経験はありませんか?

些細なことであっても、悪い面を伝えていないと、関係性にさえヒビが入ってしまうもの。

反対に、悪い面を“先出し”して伝えることで得られる効果は、想像以上に絶大です。

今回は、私が昼は経済レポーター・営業職、夜は銀座ホステスとしての現場で学んだ「“先出し”人心掌握術」についてお話しします。少しでも気づきにつなげていただければ幸いです。

◆ホステスの“先出し”には特別感がある

夜の世界では、お店の周年などのイベント時は、通常よりも料金が少し高く設定されることがあります。

夜のお客様は、数千円、数万円程度の違いは気にされない方も多く、ホステスがそこまで事前にお客様に伝える必要もありません。

「一緒にお祝いできたら嬉しいです」「特別なドレスを着るので見に来てください」とだけ言えば、一定数のお客様は来てくださいます。

でも、料金が高いことを来店後に初めて知ったらーー小さな違和感が生まれてしまうお客様もいらっしゃいます。

私の場合は「このイベント中はいつもより高いから、来ちゃだめですよ」とまで伝えていました。

イベントの日の売上は重要なので、心の中では頭を下げてでも来店をお願いしたいほど必死なのですが…。

それでもあえて、この先出しをすることでお客様は「この子は自分のことを本当に考えてくれている」と特別に感じてくださいます。

イベントの一時的な売上よりも、長い信頼関係を大切にしたいからそうしていたのですが、結局、そのように伝えたお客様はイベント当日にも自分から来店してくださっていました。

◆ “選択の自由”で抵抗感がなくなる

この効果を心理学では「両面提示の法則」といいます。

デメリットも先に伝えることで、信頼や納得感が高まるというものです。

さらに、人は「自分の意志で決定したい」という思いが強いもの。

“良い面・悪い面をすべて知った上で選べること”によって「選択の自由」も感じられ、心理的な抵抗感もなくなります。

◆デメリットを伝えると一歩踏み込んだ関係に

昼のビジネスでも同じです。

実際に私も、営業職でお客様に商材のプレゼンをした後に「良い面しか見えないので逆に不安です」「デメリットは何ですか?」と言われてしまったことが何度もありました。

それがお客様の本音なのだと気づいた今では「この商品にはこんな制約やリスクもあります」と、デメリットも先に伝えることを心がけています。

すると、お客様と「では、そのデメリットをどうやってカバーしていくか?」という一歩踏み込んだ会話をすることができ、より深い関係性も築けます。

◆“顧客満足度1位”スーパーの成功のカギも両面提示

大手スーパーマーケットの成功戦略にも、両面提示の法則が使われています。

15年連続で国内スーパーマーケット“顧客満足度1位”の「オーケーストア」には、「オネスト(正直)カード」という施策があることをご存じでしょうか?

買い物客に、商品のマイナス面を正直に伝えるポップを提示しているのです。

「長雨の影響で、レタスの品質が悪く、値段も高騰しています。ほかの野菜での代用がおすすめです」

「〇月△日から発泡酒が値下げされます。お急ぎでなければ、その日までお待ちください」

一見、そんなことを書いたら商品が売れなくなってしまうだけに思えますが、こうした正直すぎる姿勢が信頼を生み、1位の座をキープしつづけているのです。

◆恋愛も両面提示なしは別れの原因に

恋愛でも、自分が苦手なこと、自信がないことは付き合う前に言ってしまった方が上手くいきます。

「連絡がマメではないけど大丈夫?」「あまり褒めるのが得意じゃなくて」

もし伝えていなかったら彼女が不安になり、別れにさえつながってしまうようなマイナス要素でも、先に伝えることで、むしろ「私の気持ちを先回りして考えてくれて、誠実な人だな」とプラス要素にすらなります。

◆“デメリットを隠されていたこと”の不信感は消えない

悪いことは、伝えたら「売れなくなってしまうのではないか」「嫌われてしまうのではないか」と不安でなかなか言い出せないもの。

でも人は、“デメリットそのもの”よりも“デメリットを隠されていたこと”の方に大きな不信感を抱きます。そしてその不信感は簡単には消えず、後からフォローするのがとても難しいものです。

「損して得取れ」という言葉がありますが、デメリットを思い切って先出しすることで、一時的な利益ではなく、長期的な信頼を勝ち取ることができるのです。<文/山崎みほ>

【山崎みほ】
経済レポーター。証券外務員一種/行動心理士。
株式投資情報のレポーターとして、上場企業の取材記事や経済ニュースを執筆。Yahoo!ファイナンス、YouTube等メディアでは上場企業社長のインタビューも行う。また、銀座の高級クラブでホステスとしても勤務、心理学行動経済学の知識を基にNo.1を獲得。経済レポーターの深い洞察力と人気ホステスとして培った対人関係術を融合し、夜の世界では1日40組、昼間の営業職では成約率90%の成績を上げるなど、昼夜問わず結果を出すスタイルを築いている。Xアカウント:@mihoy001

―[経済レポーター×銀座No.1ホステス・山崎みほ]―


山崎みほ