
争いごとが嫌いで、いつもニコニコしている主人公のアヤ。しかし、気に入らないことがあると、ため息や無言、体調不良などで相手の罪悪感を刺激し、加害者に仕立てていく。これを「受動的攻撃」という。『まどか26歳、研修医やってます!』や『こころのナース夜野さん』などを描く作者の水谷緑さん(@mizutanimidori)の新作『被害者姫 ~彼女は受動的攻撃をしている~』を紹介する。被害者ポジションはゆずらない「被害者姫」とは何者なのか。そして、日常的に誰しもがやってしまう「受動的攻撃」についても、詳しく話を聞いた。
■「ニコニコ」の裏側で繰り返される静かなる心理攻撃
常日頃、「自分の意見を主張せず、争いごとが嫌いでニコニコしている」アヤ。しかし、彼女は嫌なときにため息をつき、返事を遅らせる。静かに間を開けることで、相手の罪悪感を刺激する心理攻撃を繰り返すのだ。
例えば、上司にランチミーティングに誘われたアヤが、「イタリアンはどう?」と言われ「何でも大丈夫です!」と答える。自己主張をしない彼女は、食べ始めた上司の「おいしい!!」という感動を無視する。無反応の彼女を見た上司は、「本当はイタリアン嫌だったのかな?」と勝手に罪悪感を抱えてしまう。
その後、アヤは妊活で仕事量を減らしたい上司のサポートをすることになる。自身の仕事に加え上司の分も引き継ぎ、いっぱいいっぱいに。しかし、彼女は仕事を周囲に振らずに自分で抱え込み、残業や早朝出勤を繰り返す。笑顔で頑張り続けたアヤはとうとう体調を崩し、倒れてしまう。周囲は同情し、上司は「ひどい」「パワハラ」と言われる。「一番かわいそうなポジションはゆずらない」という、彼女の静かな攻撃がとても怖い。
■「暴力の取材」が教えた、誰もが持つ支配の感情
水谷さんは「受動的攻撃」というワードを当初は知らなかったという。『こころのナース夜野さん』を描いたときに、専門家から「受動的攻撃という概念がある」と教えられ、取材を進めた。「日本人は受動的攻撃をする人が多いと聞きました」。
水谷さんも、もともと「自分が近しい人に依存しがちなタイプ。カウンセリングを受け、その仕組みや生い立ち、対処法を考えるうちに、自分も他者に支配されたり、他者を支配していると自覚し、暴力や支配を身近に感じるようになった」という。専門家に聞いたところ、「被害者とされる側にも多少は何かあるケースもあるのでは?」という疑問から、この概念を知った。
「ため息や返事を遅らせることで『不本意である』と意思表示をする」受動的攻撃は、日常的に誰でもやっている行動だ。「誰でもやりますし、程度や状況によっては一概に悪いわけでもない。無自覚な場合もありますが、暴力や暴言を使わずに相手をコントロールするのに有効な手段だとどこかでわかっているので、意識的にもやっています。ただ『攻撃』だとは思っていない」と、その境界線を解説した。
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