
(スポーツライター:酒井 政人)
中大は30年ぶりのトップ中継
駒大が独走で17回目の優勝を飾った全日本大学駅伝。2~4位は混戦になり、中大、青学大、國學院大の順でフィニッシュした。中大が出雲駅伝10位から2位、青学大も同7位から3位に浮上したことになる。両校は何が変わったのか。
中大は出雲駅伝で“惨敗”といえる結果に終わっている。1区の岡田開成(2年)がトップで飛び出すも、2区の濵口大和(1年)で10位に転落。その後は思うように順位を押し上げることができなかった。しかし、藤原正和駅伝監督は、「夏に例年以上の練習をしてきた逆の意味での成果だと思っていたので、さほどネガティブにとらえていませんでした」と全日本での“反撃”を確信していた。
1区は出雲6区で区間10位に終わった本間颯(3年)が好走。トップと5秒差の8位につける。そして2区の吉居駿恭(4年)が5校による首位争いを制して、勢いよく中継所に駆け込んできた。中大は伊勢路で30年ぶりとなるトップ中継に成功した。
3区の藤田大智(3年)は順位を落とすも、首位に立った駒大と1秒差の3位でつなぐ。そしてレース当日に誕生日を迎えた4区の柴田大地(3年)が区間賞。再び、トップに立った。
5区の三宅悠斗(1年)は区間3位と健闘したが、駒大・伊藤蒼唯(4年)の区間新に対応できず、3位に転落。6区の佐藤大介(2年)が國學院大の前に出るも、7区の岡田は青学大・黒田朝日(4年)にかわされた。
最後はアンカー・溜池一太(4年)が57分03秒の区間2位と快走。青学大を抜き去り、2位でゴールを迎えた。伊勢路では2007年以来のトップスリーとなる過去最高順位を占めて、出雲から“急上昇”を果たした。
「出雲で周りからいろいろ言われましたので、『全日本、見とけよ!』という思いでやってきました。2位というのは非常に悔しいですけど、選手たちが自信を取り戻してくれたのは大きかったと思います」と藤原監督。夏に例年以上の距離を走り込んだことで、「僕の想定よりも(疲労の)抜けが悪かった」(藤原監督)と10月はピリッとしなかったが、選手たちは調子を上げてきた。
昨年の全日本はうまく調子を合わせられず12位。しかし、箱根駅伝は往路で2位に食い込み、総合5位に入っている。トラックのスピードはナンバー1といえる中大。今後は11月22日のMARCH対抗戦で10000mのタイムを狙って、正月決戦にピークを合わせていくことになる。
往路候補は前回1区で飛び出した吉居、同3区区間賞の本間がいて、前回2区の溜池は、「全日本8区でいい走りができたので、65分台ではなく、もう少し上を狙っていきたい」と日本人最高記録(1時間5分43秒)を視野に入れている。そして4区は出雲1区区間賞の岡田と全日本4区区間賞の柴田が希望しており、「山は自信があります」と藤原監督。超強力オーダーで前回届かなかった往路V、それから30年ぶりとなる総合優勝を目指していく。
青学大・原晋監督「箱根は勝ちますよ」
中大と終盤まで競り合ったのが青学大だ。出雲駅伝はトップファイブを14年ぶりに逃したが、全日本はトップスリーまで押し戻してきた。
「黒田朝日に渡る前は駅伝をしていないので、そこは箱根駅伝に向けて課題が残ったかなと思います。でも出雲の大惨敗からかたちは作れた。箱根駅伝に向けてレベルアップができると踏んでいます」(原晋監督)
1区の椙山一颯(1年)は積極的なレースを見せて、トップと8秒差につける。「ラストは経験のなさが出ましたが、1年生ながら立派でした。合格点をあげたいなと思います」と原監督は評価したが、その後の4年生には厳しかった。
2区の荒巻朋熙は区間10位、3区の宇田川瞬矢は同7位、4区の塩出翔太は同7位、5区佐藤有一は同4位。最上級生が懸命にタスキをつなぐも5区終了時で7位、トップの駒大に2分54秒の大差をつけられた。
「4年生はもっと粘り強く頑張ってもらいたいという気持ちでしたが、これが彼らの力だとわかりました。でも箱根は距離が長くなる。スタミナトレーニングを4年間しっかりやってくれているので、最後は箱根で意地の走りをしてほしい」
5区で優勝争いから脱落したが、箱根王者が終盤に底力を発揮する。6区の飯田翔大(2年)が区間賞。7区のエース黒田朝日(4年)が爆走した。
「他の選手は気にすることなく、後半しっかり上げていくことを意識して、自分の走りにフォーカスしました。(選手を)抜かす度にギアを上げる感覚になったのが良かったと思います」
黒田は駒大・田澤廉(現・トヨタ自動車)が保持していた区間記録を7秒更新する49分31秒で走破。駒大・佐藤圭汰(4年)に55秒、早大・山口智規(4年)に1分26秒という大差をつけて、5位から2位に順位を押し上げた。
最終8区の小河原陽琉(2年)は中大・溜池に続いて、國學院大・上原琉翔(4年)にかわされるも、上原を再逆転。トップスリーを確保した。
「小河原は最後、3番に上がりましたし、タイム的にも悪くない。2年生ながら全日本8区をきちんと走れて、箱根の往路でも十分対応できる力があるなと思います。ピーキング能力がないと、11年で8度の優勝は達成できませんよ。我がチームは箱根に向けてのノウハウがあります。そして山上り、山下りもある程度、メドが立ちました。箱根駅伝は、昨年(10時間41分19秒=大会新)並みの記録を狙ってチャレンジしたいと思います」(原監督)
エースが終盤区間に入った出雲と全日本は“流れ”をつくることができなかったが、箱根は黒田の3年連続となる2区が濃厚。得意とする正月決戦は“先制攻撃”を仕掛けて、そのまま突っ走るつもりだ。
「箱根は駒澤、國學院、青山、中央。この4強でしょう。でも私たちが勝ちますよ!」と名将の言葉には力がみなぎっていた。
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