

麻薬組織の抗争が今だ収まらず、毎日のように痛ましい殺人事件が起きているメキシコ。チワワ州シウダフアレスという街では、過去6年間に1万500人もが殺害された。米テキサス州と国境を接するこの街は90年代以降、「ホミサイド」(殺人)ならぬ「フェミサイド」(女性殺し)と言われるほど女性の殺害も横行していることで悪名高い。
殺された女性の遺体は所構わず遺棄され、シウダフアレスの乾燥した砂漠気候によりすぐにしミイラ化してしまうという。このため、被害者の身元割り出しや死因究明が非常に困難となっていた。そこで立ち上がったのが、チワワ州検察局検視官であり歯科医であるアレハンドロ・エルナンデス氏だ。
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エルナンデス氏はミイラ化して黄ばんだ遺体を透明の浴槽の中に浸し、身体に水分を補給し、全身をミイラ化する前の状態にもどす技術を開発した。エルナンデス氏のチームは、これまでにこの技術を用い、150人の死因を解明してきた。
女性のミイラ化した遺体の復元作業にあたるアレハンドロ・エルナンデス氏
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ミイラ化した遺体が研究室に運ばれる
「シウダフアレスの気候では通常、死体は乾燥したり硬化して、皮膚は太鼓の皮のように張ってしまう」と説明するエルナンデス氏。死体の指紋を採取するために指の水分を復活させる技術は10年以上も前からあるが、エルナンデス氏が2008年から用い始めた手法は、全身をよみがえらせるものだ。その技術は秘密で、同氏は近く特許を申請する考えだ。
ミイラを「戻す」部屋には、死体と化学薬品の臭いが漂っている。ベルトで吊された死体は、密閉され特殊な溶液が入った浴槽の中にゆっくりと下ろされていく。死体は、この液体に4~7日間浸けたままにされる。時には体の一部だけを浸ける時もある。
遺体や体の一部が、より自然に見えてくるまで液の中で遺体を常に回転させる。そのうちにあざや傷痕といった病理学的な特徴や外傷が認められるようになり、死因の特定につながるのだという。
また、この特殊な浴槽を用いた検視技術はコストもかからないそうだ。
メキシコの「殺人の都」と呼ばれたシウダフアレスだが、近年は二つの麻薬組織、シナロアとフアレスの抗争も鎮静化し、市内の殺人発生率も劇的に減った。しかし、依然として行方不明となったままの女性たちは多く、遺体の発見も後を絶たない。
今月も、行方不明者の母親たちのグループと警察が連携してフアレス近郊の砂漠地帯で捜索を行い、いくつもの人骨を発見したそうだ。



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