
40歳にして年収は約1,200万円、2人の子どもに恵まれ、このたび“こだわりの注文住宅”を購入……そんな「幸せの絶頂」にいるはずの男性の顔は、なぜか憔悴しきっていました。彼の身にいったいなにがあったのでしょうか。とある夫婦の事例を通して、住宅購入時に知っておきたい「住宅ローン控除」の注意点をみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
マイホーム建築中に離婚宣言
「やっぱり無理……離婚する」
森田恵子さん(仮名:38歳)は宣言しました。
「彼女、甘やかされて育ったせいで、すごくわがままなんです。どんな時も自分ファーストで、人間関係はドライ。自分がなにか意見されようものなら、長年の友人でも容赦なく切り捨てるタイプでした。付き合っている頃はわからなかったな……」
と、憔悴しきった顔で微笑むのは、離婚宣告を受けた恵子さんの夫・庄司さん(仮名:40歳)です。
2人は6年前に共通の友人を介して出会い、その1年後に結婚、現在は5歳と2歳の子どもがいます。これまでにも何度か離婚の危機はあったものの、そのたびに庄司さんが折れる形で、なんとかいままでやってきたのです。
しかし、昨年のこと。恵子さんが「いまのマンションは狭いから戸建てに引っ越したい」と言い出しました。それも建売は嫌というので、庄司さんは妻の意見を尊重し、某有名住宅メーカーで注文住宅を建築することに。土地と建物で総額およそ8,000万円かかりました。
当時、庄司さんは「家なんて建てて大丈夫かな」と不安を抱いていました。金銭的なことよりも、これからも夫婦としてやっていけるのかという心配です。それでも、新居に引っ越せば、状況は好転するかもしれないとの期待感から応じることにしたのでした。
大手企業に勤める庄司さんの年収は1,200万円ほど。恵子さんは専業主婦です。住宅ローンの借入金は6,500万円。30年ローンなので完済時には70歳になります。毎月の返済額は10万6,000円、ボーナス払いは年間110万円です。工期は半年の予定です。
ところが……着工して2ヵ月経ったころです。なにかが恵子さんの逆鱗に触れてしまったようで、冒頭のセリフとなったのです。そして1週間後、恵子さんは子ども2人を連れて本当に実家へ戻ってしまいました。
実家に戻った妻から届いたメッセージ
数日後、庄司さんの元へ恵子さんからLINEが届きました。
「養育費と生活費を払ってもらいます。毎月30万円振り込んで」との内容。どこで調べたのか、庄司さんの年収からするとこの金額が妥当なのだそう。
庄司さんはあきれ果てます。
正直、妻のことはどうでもいいですが、子どものことが心配です。今後のことは弁護士に相談するにしても、当面は要求された金額を払わざるを得ません。
そして問題は、建築中の家です。住宅ローンの返済をしながら養育費を払っていく未来を考えると、目の前が真っ暗になります。
「注文住宅なんて買うんじゃなかった……完成したら賃貸に出して、家賃でローンを返済するか」
しかし、この選択には大きな落とし穴がありました。
貸し出すと「住宅ローン控除」の対象外に…庄司さんの決断は
それは、「住宅ローン控除」です。住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の0.7%が所得税や住民税から還付される制度です。
控除限度額は建物区分により異なり、令和7年度については、子育て世帯・若者夫婦世帯の控除額が上乗せされており、控除上限額は5,000万円となります。
庄司さんが建築中の物件は認定住宅に該当するため、住宅ローン控除の適用を受けると、戻ってくる所得税の総額は約400万円となる計算です。
ところが、控除を受けるためには要件をすべて満たさなければなりません。
その要件のひとつに、完成から6ヵ月以内に自身が居住し、かつ、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していなければならないというものがあります。
つまり、住宅の完成後すぐに建物を貸し出すと、この特例は受けられなくなってしまうのです。
また仮に賃貸に出す場合、庄司さん自身は家賃の節約のため社宅に入居する予定です。社宅の家賃は4万円と格安ですが、1LDKの古い建物でした。
庄司さんが下した決断
こだわりの詰まった注文住宅を他人に貸して自分が社宅というのは、やはり悲しい気持ちになります。また、売却するにしても現状ではオーバーローンになりそうです。
こうして庄司さんは、新居に住む決断を下しました。なるべく早く負債を減らすため、住宅ローン控除を活用して所得税の減額分を繰上げ返済にあてるつもりです。
一人暮らしにはやや広すぎる新居ですが、いまはこれが最善の選択だと思っています。
山﨑 裕佳子 FP事務所MIRAI 代表



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